11月に入り、十三浜でもようやくわかめの種付け作業が開始されました。本来ならば10月下旬からスタートしますが、早い方でも11月に入ってやっと始め られたような状態で、通常よりも遅いスタートでした。ですが、日に日に港に活気が出始めて、どこの浜でも嬉しい光景が見られました。
わかめの種付けは岸壁で行います。種が枯れてしまわないように、種を専用ロープに挟んでは海へ入れます。 |
2人ずつペアになって、片方がロープをねじって隙間をつくり、片方がその隙間にわかめの種を刺します。 |
家族や親せきだけでなく、同じ集落・隣の集落から手伝いに集まり、お互い助け合って行っていました。 |
作業がひと段落すると「おちゃっこ」の時間。「まさかこんなにも早く、(わかめの養殖作業を)はじめられるなんて、考えもしなかった・・・」と浜のお母さんたち。 |
11月の種付けで早くて2月、必ず3月には収穫ができる大きさに育つそう。 |
同時に、十三浜はまだ漁場の整備が完了していませんでした。わかめの種付けをしても、種を付けたロープをつける場所がなくては養殖できません。海の底には 瓦礫が沈み、また津波前の漁場のロープやアンカーが沈んでおり、それを片づけながら、またこれまであったものをすべて設置しなおさねばなりません。2トン 近いアンカーを合計で約4000個も海に設置しなくてはならず、大変な作業でした。津波が来るとき決死の覚悟で船長とともに沖に出て助かった船たちが、こ の作業に駆り出されました。何度も瓦礫や新しいアンカーを巻き上げて移動させる機械が壊れては、新しい機械を発注するなど、漁場の整備が急がれながらも、 残った船と漁師さんたちは天気と海の様子に左右されながらも、毎日懸命に作業を行っていました。わかめの種付けの準備もありながらの同時並行です、大変な 負担だったと思います。
この左にあるのが約2トンのアンカー。これを海に沈め、タイヤ部分からロープを延ばして浮を海上に浮かせます。 |
壊れた機械を外して、新しい機械を取り付けるところ。 |
ようやく届いた新しい機械。これで最大2トンのものを引っ張ることができるとか。 |
「これもいつまでもつかなぁ」とポツリ。本来はもっと大きなものだそうで、届いた最大2トン用のもので2トンのものを何度も運べば、壊れるのも早い。 |
なんとか無事、漁場の整備をしていた方々もみな、12月末までかかりましたがわかめの種付けが終了しました。種付けは被災前の8割復活という驚くべき数 字。石巻や仙台のお子さんのところなどに身を寄せようと考えていた漁師さんの中には、わかめが再開できる兆しを感じて十三浜にとどまった方もいます。十三 浜の漁業はこうして共に助け合いながら、復興への一歩を進みました。
(パルシック 日方里砂)