2016年8月29日、教育現場のためのフェアトレードセミナー『教育現場で役立つフェアトレードWS-生徒とともに考える-』をJICA地球ひろばにて開催しました。
同年1月に、同じく地球ひろばでのフェアトレード講座に井上禮子が登壇した際、教職員の方が数名参加されました。そしてそこで「フェアトレードを教育現場で教える機会が増えてきたが、まず先生が学ぶ場所を探している」という声をお聞きしました。第2回の今回は、そういった声にお応えすべく、教育現場で役立つ先生と生徒のためのセミナー&ワークショップを開催しました。
開催当日。
台風の影響が心配される中、想定をはるかに超える37名にお集まりいただきました。中学校の先生と生徒、高校の先生と生徒、大学生・・・と、みなさん残り少ない夏休みにも関わらず、熱心にご参加くださいました。
今回は “フェアトレードWS” ということで、みなさんに「貿易ゲーム」を体験してもらうことにしました。井上の話はそこそこに、早速、参加者全員に5つのグループに分かれてもらいます。
“5つのグループ” は、“5つの国” を表しています。ゲームの進め方は、まず、進行役が各グループに、それぞれ量の異なる「資源」「お金」「資材」を意味する小物を渡します。次に、各グループは見本の製品を参考に、配布された小物を使ってそれらを実際に作ります。そして、それらをマーケットコーナーに売りに行き、最終的にいくら稼げるかをグループごとに競います。
実は、5つのグループのうち小物のどれも(つまり資源・お金・資材)がほとんど無いという条件でスタートしたEグループは、パルシックが2002年から支援を続けている東ティモールを想定していました。
スタートしてほどなく、資源もお金も資材も豊富なAグループ(アメリカを想定)は、効率よく商品を作りつづけ、大量生産をしてマーケットに売りに行きます。
お金と資材が豊富だけれど資源に乏しいBグループ(日本を想定)は、質が良いものを高く売ろうと、とても几帳面に製品を作り、なかなか売りに行きません。しかし、売った製品のクオリティは、バツグンです。
資源が多いが資材が少ないDグループ(インドネシアを想定)は、資源と資材を交換すべく他グループ(他国)と交渉しながら、その間にほかの人が生産し続けるという、見事なチームワークでとても良いペースで販売します。
一方で、東ティモール役のEグループは、ゲームスタート時点から、何もない状態を、さてどうしたもんかとチーム内で知恵を絞り続けました。商品を作ることができないうちに、しばらくして登場した援助団体から説明を受け、5分だけ機材を借りることができました。それでも製品づくりは追い付かず、すでに拡がった他国との格差を縮めることはできません。そして、さらに最後の15分で登場したフェアトレード団体から技術指導を受けると、付加価値のついた手作り商品を作り、フェアトレードマーケットコーナーで正当な価格で販売することができました。
今回のゲームを通じて、貿易とはどういうものか、そして先進国と貧困国間で広がる格差や、援助団体やフェアトレード団体の意義などを体感していただくことができました。とある高校の先生は「このゲームを教育現場でぜひ取り入れたいです」と言って、帰って行かれました。
『フェアトレード』 が 『授業や入試で聞く言葉』 というだけでなく、これからの日本を担う子どもたちが、より自分事として理解して、これからの未来に取り入れていってもらえることを願っています。
(東京事務所 中村由紀)