山間部農村の水利改善事業 – 特定非営利活動法人パルシック(PARCIC) https://www.parcic.org 東ティモール、スリランカ、マレーシア、パレスチナ、トルコ・レバノン(シリア難民支援)でフェアトレードを含めた「民際協力」活動を展開するNGO。プロジェクト紹介、フェアトレード商品販売など。 Thu, 08 Nov 2018 02:40:52 +0000 ja hourly 1 https://wordpress.org/?v=6.4.1 帯水層を豊かにするための造成工事 https://www.parcic.org/report/timor-leste/timor_waterproject/14023/ Wed, 07 Nov 2018 09:20:47 +0000 https://www.parcic.org/?p=14023 マウベシの水事業では、上水事業とあわせてニ年次からため池事業も行っている。ため池は農業(灌漑)用水を確保するために水を貯めておく人口の池である。日本では、雨が少なく渇水の多い近畿地方、山陽地方、四国地方に多く、これらの地域ではため池に貯めておいた水を節約しながら使って、農業を営んできた歴史がある。そのため池をマウベシでも造ってみようという試みだ。

二年次に造った灌漑用のため池

二年次に造った灌漑用のため池

ため池事業ではさらに、灌漑を目的とするため池のほかに、パーマカルチャーの専門家であるエゴ・レモスさんの指導のもと、帯水層を豊かにする目的の造成工事も行っている。

マウベシ近郊に点在する集落はゆるやかな傾斜地に広がっていることが多く、集落の中には4~6か所ほどの水源がある。これらの水源は自然の湧水である。水源は11月~4月までの雨季に水量が豊富で、5月~10月の乾季に少なくなる。水量の少ない水源は、乾季に水が涸れてしまうこともあるという。

集落内にある水源

集落内にある水源

水源の水量を安定させるには、地中の帯水層を豊かにすることが効果的である。エゴさんの説明によると、雨季に降った雨は傾斜地を滑り落ちていってしまう。その雨を地中に浸透させれば帯水層が豊かになる。それには集落の上部に雨水を受ける溝を掘ればよいという。

その溝は、傾斜地に横に長い楕円形に掘る。溝というよりは大きな窪地に近く、下側の辺を1メートルほど土手のように盛り上げる。この造成をすることで、雨は傾斜地を滑り落ちることなく中にとどまり、その水が地中に浸透する。その結果、帯水層が豊かになり、集落の水源も季節を問わず安定するというわけだ。

ワークショップでエゴ・レモスさんが説明のために描いた絵

ワークショップでエゴ・レモスさんが説明のために描いた絵

灌漑用のため池は使いみちが想像しやすい。ため池を造れば野菜の水やりが楽になりますよ、ため池で魚を育てれば現金収入も夢じゃないですよ、と説明すれば村人は俄然やる気を出す。ハヒタリ集落では、パルシックのスタッフが行く前に、村人は自分たちだけで、ため池を8つも掘ってしまった。やる気を出したときのティモール人のパワーはすごいのだ。

ハヒタリ集落の8つのため池

ハヒタリ集落の8つのため池

ワークショップ参加者による溝掘り作業。手前がエゴ・レモスさん

ワークショップ参加者による溝掘り作業。手前がエゴ・レモスさん

一方、帯水層のための溝掘りは「野菜を育てる」「魚を飼育する」というような具体的な(個人的な)目的ではなく、「溝を掘ったら水源の水量が安定する」という集落全体のための作業であるので、村人たちにとって今ひとつ実感がわかないようだ。しかもすぐに結果は出ず、水源の水が豊かになるのは5年か10年先……といった先の長い話である。

エゴさんがワークショップで溝を掘る意義を説明した後は、村人も乗り気になって大勢参加して作業もはかどるのだが、それでは続きは日を改めてやりましょう、となると村人のモチベーションは継続しない。ため池担当のダニエルが張り切って現地に行っても、村人が誰も来ない、ということも多かった。

「本当に1人も来ないの?」

と聞くと

「子どもが1人だけいつも来る」

という。

「子どもって何歳くらいの?」
「うーん、8歳くらいかな」
「8歳か、それは厳しいな。力仕事は無理そうだしな」
「いつも作業を見ていて、そのあと一緒にご飯を食べるだけだよ」

ちょうどコーヒーの収穫時期に重なったこともあるけれど(今年は豊作で村人は忙しかった)、ダニエルはそれでも1人で溝を掘りまくり、夜は隙間風の吹き込む部屋で寝て、シャワーも浴びずに修行のような生活を送っていたら、風邪をひいて寝込んでしまった。

「マウン・ダイ、ひとりでの作業は大変だよ、ごほごほ。」

と連絡がきて、ダニエルは家に帰っていった。

レボテロ集落の溝

レボテロ集落の溝

スタッフのダニエル

スタッフのダニエル

ハヒマウ集落で新しく造った水源

ハヒマウ集落で新しく造った水源

なかなか思うように進まなかった溝掘りの作業だが、ダニエルが病床からよみがえり、エゴ・レモスさんの仲間の若者たちが10人ほどディリから駆けつけて手伝ってくれたこともあり、なんとかハヒタリ、ハヒマウ、レボテロの3集落で溝を完成させることができた。
 
ハヒマウ、レボテロでは溝から10メートルくらい下った場所に、直径1メートル、深さ1.2メートルほどの穴を掘って、石とセメントで保護をした。新しい水源として使えないかどうかを試すのである。まだ水量も少ないし水も濁っているが、水は着実に貯まっている。エゴさんによると、しばらくすれば水量も増えて水も澄んでくるはずだという。
 
この溝が機能して、帯水層が豊かになるには時間がかかる。あるいはまったく機能しない可能性だってある。溝と新しく造った水源は、引き続き村人たち自身で管理を行っていく。溝が機能したかが分かるころには、私は東ティモールにいない。水事業は事業終了とともに解散するから、ダニエルは田舎に帰ってしまうだろう。そのうち溝を掘ったことも忘れてしまうかもしれない。

それでも5年か10年たったころ、集落の水源は乾季も涸れることなく、水が満ちているかもしれない。そうしたら畑仕事も水汲みも、今よりずっと楽になるはずだ。

そのとき「10年前、ダニエルおじさんが1人で溝を掘っていたのはこのためだったのか!」と、作業を眺めていた少年が気づくことはないだろうか。それがその後、その子がエンジニアを志すきっかけになって・・・などとあてもない想像を巡らしていると、東ティモールの未来が、ぽっと明るく灯ったような気がした。

車輪を転がして遊ぶ集落の子ども

車輪を転がして遊ぶ集落の子ども

(マウベシ事務所 大島 大) 

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300ドルのゆくえ https://www.parcic.org/report/timor-leste/timor_waterproject/12987/ Thu, 01 Feb 2018 08:24:13 +0000 https://www.parcic.org/?p=12987 昨年の十一月六日、水事業二年次の完了式典がアイホウ集落で行われた。式典には、日本国大使館の南博大使と専門調査員の樋口さんにもご参加いただいた。好天に恵まれた空の下、村人による歓迎のダンスがあり、南大使によるテープカット、来賓の方々のスピーチと続き、最後はみんなで食事をしてつつがなく式は終了した。

完了式典でタイスを受け取る南大使

完了式典でタイスを受け取る南大使

しかし、これで二年次も終了、さあ三年次も気を引き締めて頑張ろう、と簡単にいかないのが東ティモールである。
上水設備は基本的に、集落より高い場所にある水源から水を引き、それを大小のタンクに貯めながらパイプを使って下へ下へと流し、集落近くの公共水場に水を供給して、住民が水を使うことができる。

現在、マウベシから南に向かう道路の拡張・舗装工事を、チコという中国企業が請け負って行っている。道路を拡張するためにがけを削って木を切り倒し、ぼこぼこの地面をローラー車で平らにして、アスファルトで舗装をしている。素人目にもかなり強引で荒っぽい工事に見えるが(実際に工事途中でがけ崩れなどがひんぱんに起きている)、すごいスピードで工事は進んでいる。チャイニーズ・パワープレーである。

がけ崩れの修復作業を見守る人びと

がけ崩れの修復作業を見守る人びと

車でその道を走ると、赤い字で「CICO」と書いてあるヘルメットをかぶった大勢のティモール人労働者と、指示を出している少数の中国人エンジニアの姿を見ることができる。中国人エンジニアは僕と目が合うと、同郷と思うのかにっこり笑って手を振ってくれる。

アイホウの水源はその道路のすぐ近くにある。距離は10メートルくらいだろうか。水源の場所に立つと、道路を行きかうトラックの巻き起こす砂ぼこりを浴びるほど近い。

上水設備工事を実施していた段階では、道路の拡張工事はまだ水源の場所まで至っていなかった。水源の水は豊かで、水場の蛇口をひねれば、いつも水があふれていた。

しかしである。道路工事のために、重機を使って木をなぎ倒し、地面に埋まっていた岩を掘り起こし、ローラー車が何度も往復して地面をならした後、水源の水はぱったりと枯れてしまったのである。

枯れてしまった水源のインテイク(手前)

枯れてしまった水源の取水口(手前)

水源の水が枯れたとき、アイホウの集落の人々はチコの事務所まで行って抗議をしたらしい。あなたたちの道路工事のせいで水が止まってしまったではないか、と。まあ当然といえば当然である。頑張って上水設備を造って水汲みの苦労が軽減されたと思ったら、あっという間に水が止まってしまったのだから。

道路工事と水源が枯れたことの因果関係は明らかではないけれど、実際水が出なくなって集落の人たちは困っているというので、チコは誠意を見せて300ドルを集落長に渡した。このお金は、他の水源から水を引くための工事費に充ててほしい、というのがチコサイドの考えだったらしい。チコは道路工事をめぐって、ほかでも地元住民とトラブルを起こしていると聞いていたが、今回の迅速で現実的な対応を後で知って、僕はすこし感心した。

実は枯れてしまった水源の20メートルくらい離れた場所に、もうひとつ別の水源がある。そちらは道路工事後も枯れなかったし、それどころかもう片方(パルシックが水を引いた方)が枯れた影響か、以前より水量が豊かになったほどなのだ。だからその水源から水を引けば、上水設備は復活する。近くに別の水源があったことは不幸中の幸いだった。

もう一つの水源から新たに水を引くには、水源を保護する取水口を造り、パイプを通してタンクまでつなげばよい。そのためにはセメントや砂、鉄筋、また鉄パイプなどが必要になる。後でパルシックのエンジニアがその経費を計算してみたら、ちょうど300ドルだった。チコの出した300ドルというのは、まっとうな数字だったわけだ。

集落の人たちがチコから300ドルを受け取ってどうしたかというと「至急もうひとつの水源から水を引く工事をしてほしい」と、パルシックに連絡をよこした、のではなく、枯れた水源に水が戻ってくることをお祈りする儀式を行った。それで300ドルを残らず使って、神様にお供えするための豚や鶏、米などを買ったのだった。

神様を信じないわけではないけれど、当然というかやはりというか、儀式の後も水は出なかった。集落の人たちがパルシックに泣きついてきたときは「水も出ないし、お金もなくなった・・・」という状態だった。

パルシックとしても二年次事業は終了して予算もないので、僕はローカルスタッフを連れてチコの事務所に行き「集落の人たちがお金を使ってしまって水源の工事ができません。少しでいいので出してくれないですかね」とお願いに行った。すると応対したチコの職員は「それは困りましたね。じゃあもう一度300ドル差し上げましょう」とやさしくお金をくれた、なんてことはなく「金はもう渡しただろう」と激怒され、けんもほろろに追いかえされた。

年が明けてから懲りずにもう一度行ったが、チコは「集落長から300ドルを受け取った旨の領収証をもらっている。これ以上の金はぜったいやらん!」と、二度と来るなという態度に硬化した。言っていることは正しいし、僕も二度と来たくないと思った。パルシックのスタッフの中には「ダイさんは日本人なんだからさ、空手でチコをやっつければいいのに」といっているのがいたが、それは無視した。

せっかく上水設備を完成させたのにこのまま水が出ないのも困るので、最終的にパルシックからは使いまわしのできる資材をかき集めて提供し、足らない分のセメントなどは集落の人たちの自費負担で、あらたに水を引く工事を行った。集落の人の中には「チコはけちだ。なんで金をくれないんだ」と、まだぶつぶつ言っている人もいたが、今は工事も無事に終わり、アイホウ集落には再び水がいきわたっているのである。

新しい水源から水を引く工事中

新しい水源から水を引く工事中

新しい水源のインテイク

新しい水源の取水口

(マウベシ事務所 大島大)

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リタ集落にため池を造成 https://www.parcic.org/report/timor-leste/timor_waterproject/12374/ Thu, 19 Oct 2017 08:18:05 +0000 https://www.parcic.org/?p=12374 先日、新しく造成する予定のため池をリタ集落に見に行ってきました。その日は使える車がなかったので、スタッフのダニエルと2人で歩いていくことにしました。リタ集落には何度か車で行ったことがありますが、歩いていくのは初めてです。ダニエルにどのくらいかかる? と聞くと「すごく遠い。2時間かかる(dook liu, oras rua)」という返事でした。

マウベシ市場の手前を左に折れ、アスファルトの路から外れて丘陵地帯に入っていきます。ダニエルは普段から物静かで、こちらから話しかけない限り会話がほとんどありません。このまま黙って山歩きとなると、修行のようになりそうだったので、なんとか話題を見つけようと頑張りました。すると向こうから若い女性が歩いてくるではないですか。ダニエルが「ボンディア(おはよう)」と朗らかにあいさつをしているので知り合いのようです。さっそくダニエルに話しかけます。

「あの人、美人だったね」
「そうか? 彼女は坂の上の病院で働いてんだよ」
「へえ、そうなんだ。美人だったなあ。結婚してんの?」
「してる。子どもが7人いるよ」
「7人。ほう、そうか・・・」

ちなみに子どもが7人というのは、ティモール人にとって特に多いわけでもないそうです。ダニエルにも5人いますし、子どもの数が1桁なら普通、2桁だと多いかな、という感じです。少子高齢化を突き進む日本からすると、うらやましい限りです。

コーヒーの林を抜けて小川を渡り、山道を登ったり下りたり、寝ている牛の横をすり抜けたりしたのち、リタ集落に到着しました。思ったほど時間はかからず1時間と少しでした。気持ちよく晴れた日で、リタ集落から谷を挟んで、遠くにマウベシの街が見えました。マウベシを見つけるには、壁がクリーム色で屋根が緑色の教会を探せばよいのでかんたんです。

リタ集落から眺めるマウベシ遠景

リタ集落から眺めるマウベシ遠景

牛の横をすり抜けるダニエル

牛の横をすり抜けるダニエル

実はリタ集落には少し前に来ています。そのときは専門家と一緒にため池を造成する場所を決めました。その際、未来のため池オーナーとなるマルコスさんに「ここからここまでを掘ってくださいね」と指示しておいたのですが、なんということでしょう、まったく掘っていませんでした。前回、目印に立てた木の棒が、むなしく風に吹かれています。あの時のマルコスさんは、目をキラキラさせて話を聞いていたのに・・・。

ため池を作る予定だった場所

ため池を作る予定だった場所

マルコスさんは分かりやすいほどの苦笑いを浮かべながら「最近は雨が多くて、掘れなくて・・・」と言い訳を始めました。が、掘ってないものはしょうがありません。村人任せにしていた我々にも責任があります。近いうちにスコップなどを持って出直すことを決めました。

前回からだいぶ日にちが経ってしまいましたが、今月になってマルコスさんのため池を見にリタ集落を再訪しました。すると2度目の正直、ではありませんが、立派なため池が出来上がっていました。先週マルコスさんとダニエルの2人で、朝から晩まで1日かけて掘ったそうです。

ため池ができあがっていました

ため池ができあがっていました

このため池は比較的小さなもので、水源より上部に造るのがポイントです。傾斜地に雨が降ったあと、雨水は何もしなければ流れ落ちていきますが、ため池を造ることにより水が貯まり、貯まった水が地中に浸透します。その結果、下部に位置する水源が豊かになり、さらに下部にある畑に水が引きやすくなる、というシステムです。

「父さんは畑に出ているよ」と男の子が教えてくれた通り、その日マルコスさんには会えませんでした。リタ集落では別の場所にため池を造る予定があるので、その際に労いの言葉をかけることができたらいいな、と思います。

(東ティモール マウベシ事務所 大島大)

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マウラウ村マレリア集落 タンク基礎作り https://www.parcic.org/report/timor-leste/timor_waterproject/11999/ Fri, 07 Jul 2017 07:28:49 +0000 https://www.parcic.org/?p=11999 マウラウ村マレリア集落の水供給システムの作業が始まりました。私が現場に行った6月後半のこの日は、タンク設置の基礎作りをしました。

タンクを設置する場所を平らにならしたあと、四隅に杭を打ち、設計図を見ながら水糸を張っていきます。水糸とは建造物のラインを真っ直ぐにしたり、高さを合わせたりするための糸で、水平を測りながら慎重に張っていきます。作業はすべてマニュアルです。何度もやり直し、最後は村人にも協力してもらって糸を張り終えました。

水糸を張っていきます

水糸を張っていきます

この事業では、水源から水を引き、山岳地帯の村に生活用水を供給するプロジェクトと同時に、農業用水用のため池を造成しています。

先日ハトゥブティ集落のため池が完成したというので見に行きました。見晴らしの良い滑らかな傾斜の草地にため池は造成されていました。15m×15mほどの大きさです。

新しく造成したため池

新しく造成したため池

村人によると、地面を1mほど掘って周辺に30cmほど土を盛り、上から叩いて締め固めたそうです。締固めの方法は、古殿氏(JICA専門家)の指導のもとで行われました。水源は近くを流れる川で、パイプを通して水を引き、貯めてありました。

上から叩いて締め固めます

上から叩いて締め固めます

今年度の計画では、ハトゥブティ集落のこのため池の周りに小さなため池を造成するほか、リタ集落でも造る予定です。

(マウベシ事務所 大島 大)

※この事業は、日本NGO連携無償資金協力の助成を受けて実施しています。

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着任3日目 マウベシの水利改善事業の現場を訪問 https://www.parcic.org/report/timor-leste/timor_waterproject/11634/ Mon, 03 Apr 2017 02:34:13 +0000 http://parcic-ph2-test.jpn.org/?p=11634 東ティモールに新しく赴任しました大島です。赴任して3日目、これから通うことになるテトゥン語のクラスが始まる前に、一足早くマウベシ郡の水利改善事業の現場に行ってきました。

東ティモールの山間部農村では、農業用水と生活用水が整備されていません。パルシックはそのため、東ティモールの地元住民と協力して、アイナロ県マウベシ郡の水供給システムの構築を目指しています。私が今回訪れたのは、3か年を予定している事業の2年目、アイトゥトゥ村アイホウ集落の、上水道設置の現場になります。

私が訪れた日は、水源の湧水から引いた水を最初に貯める第1貯水槽を造成中でした。貯水槽は10立方メートルで、完成すると10トンの水を貯めることができます。この貯水槽は最初の分岐点となっていて、ここから3方向にパイプが延びて、低地にある集落、49世帯258人に生活用水を供給する予定です。

10立方メートルの貯水槽

10立方メートルの貯水槽

パルシックからは東ティモール人スタッフが4名、地元住民と合わせると12名ほどで作業をしていました。作業にあたっていたのは皆、たくましい成人男性ですが、その横を2人の小さな女の子がよたよたと、一輪車を使ってセメントに混ぜる砂を運んでいました。一度に運んでいたのはほんのひとすくいですが、それでも立派なお手伝いです。

コンクリート壁内部の鉄筋打ちは終了し、本日はその周りに、コンクリートを流し込むためのパネルを設置します。今回コンクリを打つのは床面と側面の厚さ20cmの壁部分。パネルはベニヤ板で作られていて、表面につるつるとした黒い塗料が塗られています。この塗料のおかげで乾燥後、コンクリートから剥離しやすいようになっているそうです。

パネルは内側と外側の両方から、木を組んでしっかりと固定します。固定する木材は角材ではなく、外皮をはいだ黒ユーカリの丸太、というか太い枝で、長さと太さが一定ではありません。そのため安定するよう組み合わせを考えながら組んでいきます。この固定材は、パネルを固定すると同時に、上からセメントを流し込む際の、足場の役割も果たします。

内側からもしっかりとパネルを固定

内側からもしっかりとパネルを固定

パネルを設置すると、明日行うコンクリ打ちに備えて、コンクリートミキサーを移動させました。ミキサーは見るからに重量があり、また昨   晩降った雨で、車輪が地面になかば埋まっている状態でした。全員で押したり引いたりして、使いやすいポジションまで動かします。ミキサーが動くたびに、群生しているミントが引き抜かれ、あたりにはさわやかな香りが漂いました。

コンクリートミキサーを皆で移動させる

コンクリートミキサーを皆で移動させる

明日の作業のためミキサーとトレイを設置

明日の作業のためミキサーとトレイを設置

コンクリートミキサーの移動が終わり、混ぜ合わせたコンクリートを受けるトレイを設置して、作業は終了。最後は皆で、村の人がふるまってくれたトウモロコシと豆の煮物をいただきました。食べ終わった頃には、陽は西に傾き、涼しい風が吹いています。標高の高いアイホウ集落の夕暮れは寒いくらいです。明日はいよいよコンクリートを打ちます。

(マウベシ事務所 大島 大)

※この事業は、日本NGO連携無償資金協力の助成を受けて実施しています。

 

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協同作業で進める水事業 https://www.parcic.org/report/timor-leste/timor_waterproject/9160/ Mon, 20 Jun 2016 09:50:52 +0000 https://www.parcic.org/?p=9160 2015年10月から3年計画ではじまった水利改善事業では、集落との計画・準備会合、水源から集落までの配管経路の測量調査、貯水槽や配管の図面作製、資機材購入と現場での工事と進めてきました。

初年度の事業地はマウラウ村の3集落とエディ村の1集落。中でもマウラウ村はマウベシ郡内でも、乾燥が激しく、生活に必要な水を手に入れることが大変な場所として知られています。全10集落のうち、コーヒー事業のコカマウ[i] のグループが4集落に存在しています。

水源が集落より下に位置しているので、ポンプで高度約100メートル上の貯水槽まで上げ、そこから重力の力で3集落に配水します。3集落の合計82世帯約500人と小中一貫校の生徒教員約370名に上水を供給するため、20立方メートルの貯水槽を3基設置し、配管は総延長5.4キロメートルの計画です。

高低差の激しい地形は、資材の運搬だけでも大仕事。車で直接乗り付けて資材を降ろすことが出来る場所は限られており、その先はすべて人力となります。貯水槽1つを作るのに、おおよそセメント100袋(4トン)、砂9トン、砂利18トンが必要です。また、コンクリートミキサーは、重量400キロ超。これらの資機材を、高低差100メートル、距離1キロメートル近くの道のりを大人から子どもまで総出で、何往復もして担いで運びます。すべて人数が頼りで、みんなで力を合わせなければ作業が進みません。

コンクリートミキサーを担いで急斜面を上る

みんなで力を合わせて、コンクリートミキサーを担いで急斜面を上る

土木工事が中心の地味な水事業ですが、人びとの生活になくてはならない重要な上水を確保することで、さらなる協同が進むことを願いながら活動しています。
(東ティモール事務所 高橋茂人)

[i] COCAMAU:Cooperativa Agrikultura Moris Foun Unidade Kafe Nain Maubisse=マウベシ・コーヒー生産者協同組合

※この事業は、日本NGO連携無償資金協力の助成を受けて実施しています。

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農村での水整備事業がはじまりました https://www.parcic.org/report/timor-leste/timor_waterproject/9153/ Sun, 15 Nov 2015 09:22:26 +0000 https://www.parcic.org/?p=9153 マウべシの季節は、11月から7月頃まで続く雨期と、残り3ヵ月ほどの乾期に分かれます。乾期には熱帯かつ高原の強烈な太陽が、あっという間に大地を乾燥させます。森林が減り、地肌がむき出しになった地域は、保水力を失い、生活用水の確保が難しくなっています。また、集中豪雨が発生する雨期には、水源が土砂の混じった汚れた水になってしまいます。

2014年まで実施していた循環型農業事業を通じて見えたのは、農業用水の確保以前に、生活用水さえ事欠く現実でした。そのためパルシックは、3年計画でマウベシ郡内の11集落に上水を整備する事業を実施します。

事業では、乾期にも十分な水量がある水源を確定し、集落まで配管します。水源では取水槽を設立して上水を確保するとともに、水源周辺での植林を進め、水資源枯渇を防ぎます。配管経路には、土砂崩れの危険性が高い場所を中心に土壌を安定させる草を植えます。

事業の開始とともに、現在GPSを使った水源調査を進めています。

水源の水量を調査するスタッフ

水源の水量を調査するスタッフ

(東ティモール事務所 高橋茂人)

※この事業は、日本NGO連携無償資金協力の助成を受けて実施しています。

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