政治・歴史 – 特定非営利活動法人パルシック(PARCIC) https://www.parcic.org 東ティモール、スリランカ、マレーシア、パレスチナ、トルコ・レバノン(シリア難民支援)でフェアトレードを含めた「民際協力」活動を展開するNGO。プロジェクト紹介、フェアトレード商品販売など。 Fri, 28 Apr 2017 13:50:13 +0000 ja hourly 1 https://wordpress.org/?v=6.4.1 東ティモール 選挙の年、いよいよスタート https://www.parcic.org/report/timor-leste/timor_learn/11632/ Mon, 27 Feb 2017 08:58:36 +0000 http://parcic-ph2-test.jpn.org/?p=11632 2017年。東ティモールの選挙年がいよいよ始まりました。大統領選挙が3月に、国政選挙が7月ごろに予定されています。

これまで水面下で動いていた政治活動も、先日開始された大統領候補者の登録で徐々に表に出てきました。最も注目すべき点は、蜜月状態で現政権を担っているシャナナ・グスマン氏と野党フレテリンの関係、そして新政党PLP(民衆解放党:Partidu Libertasaun Popular)が、今年の選挙で現政権にどこまで切り込めるかです。

シャナナ氏率いる政党 CNRT(東ティモール再建国民会議:Conselho Nacional de Reconstrucao do Timor)からは大統領候補を出さず、シャナナ氏はフレテリンの大統領候補 Francisco Guterres Lu Olo 氏の支持を表明しました。シャナナ氏は、取巻きとして以上の能力を発揮しないCNRT党員に幻滅してフレテリンと手を組んだと思われ、有権者の3割を支持基盤として堅持しているフレテリンとシャナナ支持者とで、過半数を取るのはほぼ確実と思われます。

フレテリンの選挙ポスター。スローガンは「みんなの大統領 (Presidente ba povo tomak)」。(電線が映り込んでしまって残念!)

一方、民主党のポスター。スローガンは「ティモールよ、汝がために我仕える所存なり(Ba O Timor Hau Maubere Oan Pronto Servi)」

タウル・マタン・ルアク大統領が2016年2月に国会でシャナナ氏とフレテリン書記長マリ・アルカティリ氏を名指しで批判して以降、タウル大統領への支持に傾いてシャナナ氏から連立を解かれたPD(民主党:、大統領候補はAntonio ‘Kalohan’ da Conceicao 氏)は、大統領選はともかく国政選挙ではPLPと組むだろうと予測されます。PDもPLPも、40代が中心の次世代政党です。そしてタウル大統領が、これら若い世代とともに国政選挙に打って出るのではないか、という公然の噂もあります。

3月3日から17日までの大統領選挙キャンペーンがいよいよ始まりました。早速、民主党とフレテリンの支持者は小競り合いをしたりと熱くなっています。それを諌めるルイ首相が「選挙は民主主義の祭典だ。- Festa de Democrasia 」と発言。どうりで熱くなるわけです。

3月20日の大統領選挙では、フレテリンのFrancisco Guterres Lu Olo 氏が4回目の挑戦で初当選する、というのが大方の予測です。その後予定されている国政選挙で、旧世代のリーダーたちに次世代がどう挑戦するか、注目していきたいと思います。

(東ティモール事務所 伊藤 淳子)

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シャナナ首相辞任の背景には・・・ https://www.parcic.org/report/timor-leste/timor_learn/7641/ Sat, 13 Jun 2015 09:05:33 +0000 https://www.parcic.org/?p=7641 2015年2月16日、シャナナ首相は野党フレテリンのルイ・マリア・デ・アラウジョ氏を後任に据え、自身は首相を辞任して開発計画投資大臣に就任、内閣を与野党混在で55閣僚から35閣僚に縮小するという大改造を実施しました。ルイ新首相は医師でマネージメント能力に長けているとの評判で、就任後さっそく予算の無駄遣いや公務員の評価制度見直しなど、巧みなメスさばきで省庁改革を進めています。

野党であるルイ首相の強気な改革は、反感や社会不安を招きかねません。しかし、それを防いでいるのは新首相への人びとの期待と信頼もさることながら、シャナナ氏が後ろ盾となっているからだという見方が強くあります。未だ民衆から強い信頼を集めるシャナナ氏は、なぜ突然首相の座から降りたのでしょうか。表向きは「次世代政治リーダーの育成」となっていますが、背景には2013年から抱える国内の治安問題があります。

2013年10月、元東ティモール民族解放軍(ファリンティル)幹部のマウク・モルック氏が亡命先のオランダから帰り「マウベレ革命評議会(Konselho Revolusaun Maubere:KRM)」を立ち上げ、出身地バウカウ県の元ゲリラ兵士たちを動員し、シャナナ政権を汚職の巣窟と批判し始めました。11月28日の独立宣言記念日にシャナナ氏は公共対話の機会を設置しましたが、マウク・モルック氏は対話の場に姿を現さず、政府および議会の解散、再選挙を要求する示威運動を組織すると発表しました。2014年3月、一般市民に軍服を着用させるなど違法行為により社会不安を煽っているとして警察に逮捕されますが、12月に証拠不十分で釈放。2015年1月にはKRMメンバーがバウカウ県で警察官を襲撃したことで、国防軍と警察がマウク・モルック氏検挙のための合同作戦を展開しています。

背景には独立前の抵抗闘争中、シャナナ氏がファリンティル司令官となった後、マウク・モルック氏を幹部から外したことへの個人的な怨恨があるといわれています。しかし過去の個人的な問題が独立後のいま脅威となり得るのは、マウク・モルック氏が批判している内容が、多くの人びと、とりわけ元ファリンティル兵として苦難を共にし、独立後、貧しさにあえいでいる人びとの共感を得るからです。

マウク・モルック氏はシャナナ氏が元インドネシア併合派だった人びとをも要職につけ、国会議員や閣僚たちへの生涯年金、人員交代のたびにあてがわれる高級車、目的や生産性の疑わしい外遊など、一部の特権階級を優遇していると批判しています。武装していることが明らかとなっているKRMに対しては、警戒して平静を保とうとしている市井の人びとも、この批判は妥当である、と感じています。ルイ首相の省庁改革とともに、KRMにどう対処するのか、人びとは静かに見守っています。

Dili International Airport

(東ティモール事務所 伊藤淳子)

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