コーヒー畑改善事業 – 特定非営利活動法人パルシック(PARCIC) https://www.parcic.org 東ティモール、スリランカ、マレーシア、パレスチナ、トルコ・レバノン(シリア難民支援)でフェアトレードを含めた「民際協力」活動を展開するNGO。プロジェクト紹介、フェアトレード商品販売など。 Fri, 14 Jul 2023 03:22:40 +0000 ja hourly 1 https://wordpress.org/?v=6.4.1 コカマウとの深煎りな日々⑪~収穫期 https://www.parcic.org/report/timor-leste/timor_coffeefield/22960/ Fri, 14 Jul 2023 03:19:13 +0000 https://www.parcic.org/?p=22960 東ティモールでは数年ぶりに6月には乾季が訪れ、コーヒー産地であるマウベシでも各集落で収穫が進んでいます。収穫が早く始まった集落ディリではコーヒーの実をパーチメントの状態までにする一次加工を終え、首都ディリでの二次加工が進み日本への出荷の準備が進んでいます。

ルムルリ集落でのパーチメント集荷の様子

しかしながら、例年であれば収穫が始まってからは雨が降る日が少なくなるところ、今年は7月に入ってからまた雨季に戻ってしまったかのように雨の日が続いています。マウベシ出身のスタッフや農家は、年々乾季が短くなり雨季が長くなってきていると言います。

雨が長く続いてしまうと足場が悪くなって収穫がしづらくなったり、せっかくコーヒーを収穫してもパーチメントの乾燥が思うように進まなかったりしてしまいます。天候に悩まされるのは今年に始まったことではないため、それぞれの集落で工夫をしながら収穫、加工を進めていきますが、気候変動によりマウベシのコーヒー農家の心配事は間違いなく増えてきています。まずはまた雨がやんで強い日差しが戻ってくるのを祈るばかりです。

雨対策をしたアフリカンベッドで乾燥を進めながら晴れの日を待ちます

コーヒー畑の改善事業が始まって3年半が経ちましたが、古くなった木を台きりした畑では新しい枝が育ち、1年目から事業に参加してきた多くの畑で以前より多くの実をつけるようになりました。また、コーヒーの木は種まきから成木になるまで3~5年かかると言われていますが、新しい畑で苗から育てたコーヒーの木も育ってきていて、畑の様子も毎年変化してきています。

モデル農家、エルダウトゥバ集落のジョアンさんの畑にて

今季は新たに22集落50世帯がこの事業に加わり、参加農家は合計287世帯になりました。今年度の新規参加農家への畑の改善トレーニングもほぼ完了し、すでに集落によっては作業責任者が中心となり、トレーニングを自主的に進められているところもあります。まだサポートは必要ですが、積極的に活動を継続してくれている様子を見ると、コカマウ組合の農家の畑の改善に対する意識の変化を感じることができます。

集落で協力しての活動に自信を見せるディムテテ集落の組合員とパルシックスタッフ

収穫したてのマウベシコーヒーを飲みながらこのレポートを書いていると、朝から霧がかかっていてパッとしない天気だったのですが夕方になって晴れ間が出てきました。今年もみなさんにこの美味しいコーヒーをたくさんお届けできるように、まずは天気が回復して収穫が無事進むように願いながらコーヒー畑のモニタリングを続けていきます。

雨上がりのマウベシ事務所から

コーヒー畑の改善事業で制作した動画(全編テトゥン語、英語字幕あり)

前回のスタッフレポートで紹介したコカマウ組合員向けの動画に英語字幕がつきました。YouTubeの字幕機能をオンにしてぜひご覧ください。

1.コーヒーの木の台切り、畑の改善

2. 苗の定植、畑の開墾

3.  2022年の成果

(東ティモール事務所 工藤竜彦)

*この事業はJICA草の根技術協力事業の業務委託を受けて実施しています。

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コカマウとの深煎りな日々⑩~コーヒー畑の改善事業4年目へ https://www.parcic.org/report/timor-leste/timor_coffeefield/22008/ Mon, 13 Feb 2023 09:30:35 +0000 https://www.parcic.org/?p=22008 アイナロ県マウベシ郡でのコーヒー畑の改善事業は2022年11月で4年目に入りました。3年目までに237世帯がこの事業に参加し、古くなったコーヒーの木の台切りや、新苗の植え替えなどをしてコーヒー畑の若返りを進めています。

事業開始から活動を継続しているリタ集落のクレメンティーノさん

2022年はコーヒーの裏作の年に当たり、さらに天候不順により収穫初期にひと月に渡り大雨が続いたため収穫前のコーヒーの実が落ちてしまい大不作の年となりました。 2019年に台きりを始めたコーヒーの木にコーヒーの実がなっているのも確認ができていたのですが、これらも加工まで進めることができず、事業の達成状況の確認は次の収穫期に持ち越しになりました。しかし、私たちの活動は確実に各集落で浸透してきています。

巡回モニタリングの様子

2022年9月には、新型コロナウイルス感染症拡大の影響で中断していた専門家の招聘を再開、約1か月半の滞在で3年間の進捗を実地で確認してアドバイスをもらいました。また、カッピングと呼ばれる品質チェックのテイスティングを実施し、どのサンプルも問題がないことを確認してもらいました。

パルシックスタッフのネルソンが専門家のアドバイスを農家さんに伝える

首都ディリのカッピングラボでのカッピング(品質チェック)の様子

4年目に当たる2023年は、各集落から2名ずつの56世帯を加えてコーヒー畑の改善活動を進めていく予定です。 2023年1月からは例年通り事業に参加する新規メンバーの登録とGPSを使った各圃場の調査を進めています。

各集落でヒアリングをしながら調査を進めます

東ティモール政府は2022年度補正予算で、東ティモールコーヒー協会をパートナーとし、8,000ヘクタールのコーヒー畑を改善することを決めました。コカマウ(マウベシコーヒー生産者協同組合)の中でも当事業と政府事業を並行して実施していくことになります。それぞれの活動を通してコーヒー農家間で混乱が生じることのないよう、新苗の植え替えと台きりを組み合わせながらマウベシ全体のコーヒー畑の若返りを図っていきます。

古くなった木を切りコーヒー畑を整えていきます

1月18日には2023年に入って初のコカマウ代表者会議が行われ、そこで本事業で作成した3本のビデオのお披露目会がありました。 初年度から積極的に活動を継続しているモデル農家3人が出演して、組合員向けに畑の改善方法やここまでの活動成果がまとめられています。

農家さん向けに3本とも公開するのはこれが初めてでした。 映像を通してですが、各集落の代表者たちはモデル農家の畑の様子に興味津々で、自分たちの集落でもこのような活動をしていくのだというポジティブな声も聞くことができました。

前のめりになってビデオを見る集落の代表者たち

5か年計画のコーヒー畑の改善事業も残り2年を切りました。 1年目から継続してきた内容がコカマウ組合の中でもかなり浸透してきて、今年でコカマウ組合に所属しているコーヒー農家全体のほぼ半分の農家がこの事業に参加することになります。

集落ごと、コカマウ全体で助け合いながらコカマウの農家たちが自立的に畑の改善を継続してコーヒー生産に取り組んでいけるような環境づくりを進めていきます。

2022年からコカマウに加入したマウンレテ集落の皆さん

コーヒー畑の改善事業で制作した動画(全編テトゥン語)

1. コーヒーの木の台切り、畑の改善

2. 苗の定植、畑の開墾

3,2022年の成果

(東ティモール事務所 工藤竜彦)

※この事業はJICA草の根技術協力事業の業務委託を受けて実施しています。

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インターン黒沢 東ティモール日誌Vol.7 マウベシのコーヒーをカッピング! https://www.parcic.org/report/timor-leste/timor_coffeefield/21933/ Fri, 03 Feb 2023 07:31:25 +0000 https://www.parcic.org/?p=21933 Botardi!こんにちは、インターンの黒沢舞衣です。

9月初頭に、マウベシコーヒー生産者協同組合(コカマウ)が生産するコーヒーのカッピングに参加しました!パルシックでは現在コーヒー畑改善事業を行っていて、毎年全生産グループのコーヒーを飲み、味を確認しているそうです。

事業3年目となる今年は、コロナ禍の影響で、3年ぶりにようやく来訪されたスペイン人のコーヒー専門家、フランチェスコさんが焙煎を行いました。フランチェスコさんは到着後おもにマウベシで栽培状況の確認や指導を行っていたそうで、私はやっとお会いできました。

初日はカッピングの準備のための焙煎で終わりました。特に時間がかかったのは、焙煎方法を決める作業です。全22グループの豆の味を比べるために、ガスと空気の量や加熱時間の調整を重ね、統一した焙煎方法を決めます。私は豆を運んだり、重さを量ったり、データ入力や掃除を手伝いました。カッピングに使う豆を焙煎できたのは、二日目の午後です。焙煎した豆は一種類ずつお皿に入れ、当日はどれがどの農園の豆か分からないようにしました。 

火力の細かい調整を重ねるフランチェスコさんとコーヒー事業担当の工藤さん

カッピングは事務所代表の伊藤さん、コーヒー事業担当の工藤さんとネルソンさん、カフェマネージャーのトジーさんも一緒に行いました。私は初めてだったので、体験前に説明を受けました。同じ種類のコーヒーのコップは5つあり、左手前からジグザグに匂いや味を確認するそうです。FragranceやFlavorなどの9項目に点数をつけ、最後に平均を出します。

カッピングに使う用紙。こんなに集中してコーヒーを飲むのは初めてでした、、、

まずは12gずつ豆を挽いて匂いを嗅ぎ、200gのお湯を注いでまた匂いを嗅ぎます。4分経ったらスプーンで表面の粉の膜を割って、匂いを嗅ぎます。皆さんは違いをメモしていました。表面の粉を取り除いたら、カッピングの準備は完了です。スプーンで掬ったコーヒーを、口の中に広げるようにすすります。口に含んだコーヒーは飲まずにコップに吐き出すそうで驚きました。味が混ざらないようにスプーンは毎回すすぎます。

これを何十回も行うので、集中力と経験がないととても疲れてしまうなと感じました。それぞれの豆に点数をつけ、最後に全員で講評をします。今回の目的は点数の比較ではないため、感じた味や香りの違いを伝え合うことがメインでした。私はどのコーヒーも美味しく感じ、それぞれに特徴があることは分かったのですが、表現するとなると言葉や例えが見つからず、難しかったです。畑の改善が味に反映されるまではなかなか時間がかかるとは思いますが、今後さらに収量が増え、美味しいコーヒーが飲めることがとても楽しみです。

テイスティングをするネルソンさん(左手前)、トジーさん(左奥)、工藤さん(右)

(インターン 黒沢舞衣)

インターン黒沢 東ティモール日誌Vol.6 首都ディリでの休日~with東ティモール人編~へ

インターン黒沢 東ティモール日誌Vol.8 Loja & Café Aroma Timorへようこそ!へ

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コカマウとの深煎りな日々⑨〜初めての収穫期レポート〜 https://www.parcic.org/report/timor-leste/timor_coffeefield/21060/ Fri, 12 Aug 2022 02:02:19 +0000 https://www.parcic.org/?p=21060 今年のマウベシでは例年より雨季が長く続き、6月後半になってやっと晴れの日が続くようになり本格的にコーヒーの収穫が始まりました。私もようやくコーヒーの収穫期をマウベシで過ごすことができているので、コーヒーの収穫とその後の農家での加工の様子をレポートします。

待ちに待った収穫期です

まずはコーヒーの実の収穫です。赤く熟したものだけを選んで摘んでいきます。 農家さんたちは歌ったりしながら慣れた手つきで素早く摘んでいきます。私も試してみましたが、簡単そうに見えてなかなかスムーズにはいかず少し苦戦しました。

スナップを効かせてポンポンと収穫して肩にかけた籠にいれていきます

次は加工です。

コーヒーを摘んだ後、農家さんのお宅でコーヒーチェリーの果肉を除去する1次加工が行われます。 コーヒーの加工法に関して、マウベシではウォッシュド(水洗式)、ナチュラル(乾燥式)、ハニープロセスの3種類の方法を用いています。 今回は以前から一番多くの農家さんが行っているウォッシュド(水洗式)の加工工程をご紹介します。

①  摘んだコーヒーチェリーを大きなバケツなどで水に漬けて比重選別をします。ここで浮いてしまうチェリーは中身が未熟な状態だったり、熟しすぎて乾いていたりしている状態なのでこの段階で取り除きます。

見た目は同じようでも浮くものと浮かないものがあります

②  比重選別したコーヒーチェリーはハンドパルパーという機械を使って果肉を取っていきます。輸入された既製品を使っている農家さんもいますが、手作りのものを使っている農家さんも多いです。これはマウベシ製のハンドパルパーだぜ、とみんな自慢げに教えてくれます。果肉が剥けないチェリーもありますが、それは未熟でまだ果肉が固い状態ということです。ここでも完熟しているチェリーの中身だけが選別されていきます。この果肉を剥いた状態の固い殻のついた状態をパーチメントと呼びます。

みんな楽しそうに作業していましたがかなりハードな作業です

③  果肉を剥いたパーチメントの状態のコーヒーの実を大きなバケツに入れて24時間以上発酵させます。その後パーチメントに付着したぬめりが取れるまで繰り返し水洗いします。

④  天日干しして乾燥させます。十分に乾燥させたら農家さんのお宅で行う1次加工が完了です。

重ならないようにレーキで広げて乾燥させます

加工したパーチメントはパルシックのスタッフがトラックで集落を訪問して水分量など品質を確認後、パーチメントを袋に詰めてマウベシの街にある倉庫に運び、最終的には首都ディリの2次加工場に運び込まれ、焙煎する手前の生豆の状態まで加工されます。

コーヒーチェリーを一つずつ丁寧に収穫しいくつもの工程を経ている様子を実際に見ることで、知識としてはわかっていましたが改めて一つ一つのコーヒー豆が手間暇かけて作られていることを実感できました。

住居の前で乾燥中のパーチメント。皆さんにコーヒーとしてお届けできるのはもう少し先です

(東ティモール事務所 工藤竜彦)

※この事業はJICA草の根技術協力事業の業務委託を受けて実施しています。

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コカマウとの深煎りな日々8~コーヒー畑改善事業の3年目が始まりました~ https://www.parcic.org/report/timor-leste/timor_coffeefield/20871/ Tue, 05 Jul 2022 07:47:50 +0000 https://www.parcic.org/?p=20871 2019年11月から5か年計画で始まったアイナロ県マウベシ郡のコーヒー畑の改善事業は2022年4月末で2年半が経過し、折り返し地点を過ぎました。

1年目は31世帯、2年目は89世帯の合計120世帯のコーヒー農家と活動を進め、3年目の今年はさらに120世帯が参加を希望、合計240世帯と共に古くなった畑の改善を進めていきます。

今年もたくさんの農家さんが参加を希望してくれました

2022年に入り、2年間共に活動を続けてきた農家へのモニタリングを継続する一方で、3年目に新たに共に活動を進める予定の120世帯の畑でGPSを使った測量を進めてきました。この4月からはパルシックスタッフが2チームに分かれて集落を訪問し、コーヒー畑の若返りの基本となる苗床と有機たい肥の管理についてのトレーニングを実施しています。

トレーニングを実施した後は集落のグループ内で協力しあい、毎週予定を組んで各農家の畑で活動を実践していきます。パルシックスタッフは今後定期的に各グループを巡回モニタリングしながら進捗を確認してフォローアップを行い、時期が来たらまた次のトレーニングを実施していきます。

レブルリ集落でトレーニングを行うパルシックスタッフのジュリオ/左から3人目

マニュアルを使い熱心に説明をするパルシックスタッフのヘンリケ/右から1人目

トレーニングの一環として、すでに1年目から参加しているモデル農家の畑の見学にも行きました。
高さや隣の木との間隔が整えられ、たくさん実がついたコーヒーの木を見て参加した農家は興味津々のようでした。

また、すでにコーヒー畑の改善に取り組んでいるモデル農家の人たちの顔もとても自信に満ち溢れているように見え、お互いに畑改善へのモチベーションにつながったのではないかと思います。

モデル農家として、自分の畑について紹介をするリティマ集落のアルビノさん

5月後半からはついにコーヒーの収穫準備が始まります。

この事業の駐在員としても折り返し地点に来ましたが、いまだに収穫期を現地で経験できずにいるので、とても忙しくなりそうですが今から楽しみです。後半戦もパルシックスタッフやコカマウの皆さんと楽しみながら活動を進めていきます。

収穫まであと少し!

(東ティモール事務所 工藤竜彦)

※この事業はJICA草の根技術協力事業の業務委託を受けて実施しています。

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5か年計画ももうすぐ折り返し!コーヒー畑改善事業のご報告 [後編] https://www.parcic.org/report/timor-leste/timor_coffeefield/20394/ Mon, 14 Mar 2022 08:29:11 +0000 https://www.parcic.org/?p=20394 「5か年計画ももうすぐ折り返し!コーヒー畑改善事業のご報告 [前編]」より続く・・。

それでは、コーヒーの木の若返り以外に行っている畑の改善活動をご紹介します!

畑の改善その① ~等高線テラス~

東ティモールのコーヒー畑は、よく言えば自然体…、悪く言えば手入れがされていない…、一見すると畑かどうか分からないこともあります。さらに、多くの場合コーヒー畑は急な斜面にあり、雨が降ると土砂とともに土壌に含まれる養分が下の方に流れ出ていってしまいます。

畑というよりも、まるでジャングルのよう…。

そこで、コーヒーの畑を等高線状に段々畑に整え、土壌に含まれる養分を木の周りに留め、コーヒーの木が養分をたくさん吸収してたくさんのチェリーをつけるようにします。

段々畑にきちんと整地した等高線テラス

畑の改善その② ~施肥(せひ)~

東ティモールのコーヒー畑には積極的に肥料が施されてこなかったため、土壌が痩せています。そこで、苗床の近くで生ごみや落ち葉、牛糞などを混ぜた有機堆肥(ゆうきたいひ)を作り、苗の育成や苗の植え替え時に土に混ぜ、土壌の改良に努めています。

生ごみや落ち葉にEM菌*(有用微生物活性化物質)を混ぜて有機堆肥を作っている様子

*EM菌:Effective(有用) Microorganisms(微生物)。乳酸菌や酵母、光合成細菌など、昔から自然界に存在し食品加工にも使われてきた微生物群。土着菌を活性化させて、土壌を豊かにする効果があります。

畑の改善その③ ~草むしり・剪定~

コーヒーの木はそのまま放っておいてもチェリーがなりますが、きちんと手入れをするのとしないのでは、全然違います。きちんと木の周りに生えた雑草を取ることで、コーヒーの木に養分が吸収され、たくさんの実がなります。また、コーヒーの木が伸びすぎて、不要な枝に養分がとられないようにきちんと剪定することも重要です。

畑の改善は家族、フィールドオフィサー総出で作業に取り掛かります

このように、木だけではなく畑全体を改善することが、コーヒーの収穫量を上げるために重要なことです。 これまで、2019年(1年目)に31世帯、2020年(2年目)に89世帯、合わせて120世帯の農家がコーヒー畑の改善に取り組みました。そして、3年目は新たに120世帯がコーヒー畑の改善に取り組む予定です。

1年目は予定していたよりも参加する農家が少なかったのですが、畑の改善に取り組む農家の様子や成果を目にしたり、パルシックのフィールドオフィサーが熱心に農家を訪問し、モニタリングや作業を手伝う様子を見て、参加を希望する農家が増えたことは非常に嬉しいことです。

これからの課題

参加農家が増えることは嬉しくありますが、課題もあります。 計画では、2年目に各集落で技術普及員を選出して、彼らが新たに改善に取り組む農家への指導を行う予定でしたが、技術普及員の育成は思うように進んでいません。

それにはいくつか理由があります。一つには自分の畑の改善に熱心に取り組む農家と、技術を他の人に伝えたいと思う農家は必ずしも一致しないことです。事業を担う現場のスタッフにも「まずは畑の改善を進めて成果を出すことを優先すべき」という考えがあり、作業優先で人材育成が後回しになりました。加えて、技術普及員の育成を担うコーヒー畑の専門家が新型コロナウイルスの影響により派遣できませんでした。

2020年のオンライン・コーヒーツアーにも登場したエルダウトゥバ集落のジョアオンさんも、畑の改善に取り組み、格段と収量が増えています

そのため、3年目は技術普及員を育成しながら、新たに参加する120世帯の畑の改善を同時に進める必要があります。

参加農家が一気に2倍に増えて心配な点はありますが、パルシックのコーヒー事業を16年に亘り支え、コカマウの農家からの信頼も厚い現地スタッフのネルソンが、「大丈夫!」と言えば、何とかなるような気がしてしまいます。

そして、みっしりと木の節々に実のなったコーヒーの木と農家さんの誇らしい顔を見たら、3年後が楽しみで仕方ありません。 これからも定期的に報告していきますので、どうぞ今後の活動を見守ってください!

(東京事務所 小栗清香)

※この事業はJICA草の根技術協力事業の業務委託を受けて実施しています。

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5か年計画ももうすぐ折り返し!コーヒー畑改善事業のご報告 [前編] https://www.parcic.org/report/timor-leste/timor_coffeefield/20391/ Mon, 14 Mar 2022 08:28:11 +0000 https://www.parcic.org/?p=20391 みなさん、Botardi(こんにちは)!
昨年の春から東ティモール事業を担当している東京事務所の小栗です。
先日、出張で初めて東ティモールに渡航し、アイナロ県マウベシ郡のコーヒー産地を訪問しました。
今回は、出張報告として現在実施中のコーヒー畑改善事業のこれまでの活動についてお届けします!

パルシックは、2002年から活動を共にしてきたマウベシコーヒー生産者協同組合(COCAMAU=コカマウ)のコーヒー農家と、2019年11月にコーヒー畑改善事業を5カ年計画でスタートしました。早いものでこの事業ももうすぐ折り返し地点を迎えようとしています。

新型コロナウイルスの感染拡大の影響により、県をまたぐ移動に制限がかかり人や資材の行き来ができなくなったり、専門家を派遣できなかったりと、計画通りに進まないことも多々ありましたが、今回の出張では現地での取り組みをつぶさに確認し、これまでの活動をふり返るいい機会となりました。

何でコーヒー畑を改善するの?

コーヒーの木の収穫のピークは15年〜20年と言われていますが、東ティモールのコーヒーの木のほとんどは樹齢30年を超えて老朽化が進んでいます。そのため、近隣のコーヒー生産地と比べても収穫量が5分の1と少なく、気候変動の影響により収穫量が年々不安定になっています。

節に2~3個の実しかならない老朽化した木

収穫量が減ることは、つまりコーヒー農家の収入が減ることを意味します。そうなると、若い世代はより良い収入を求めて首都や国外に出ていき、コーヒー生産の担い手がいなくなってしまいます。

若者たちが誇りを持ってコーヒー作りを続けられるように、古くなったコーヒーの木を若返らせ収量を増やすコーヒー畑改善事業がスタートしました!

畑の改善って何をするの?

古くなったコーヒーの木を若返らせるには、大まかに①台切り、②新しい木に植え替える、の2つの方法があります。

①台切り

古くなったコーヒーの木の幹を切ると、切り口の近くから新しい芽がたくさん生えてきます。

台切りをした木の切り口付近から新しい芽が育っています!

新しく生えてくる芽を選別して2本だけ残し、育てていくと、3年ほどでコーヒーの赤い実(チェリー)を収穫出来るようになります。コーヒーの根はそのままですが木は若返り、収量が上がるという仕組みです。

②新しい木に植え替える

台切りをしても若返りが見込めない木(例えば、根が古すぎて新しい芽が出ない場合)、あるいは使っていない土地がある場合は、新しいコーヒーの苗を植えて育てます。 良好なチェリーから種子を取り、苗床に撒いて発芽したらポリバッグに移し、一年かけてコーヒー苗を育てます。植え替えた後は2年ほどでチェリーを収穫できるようになります。

畑の近くに、木の枠組みとネットを組み合わせて苗床を作ります

コーヒーの種子から芽が出てきました!

小さなポリバッグにコーヒーの苗をひとつずつ移している様子。これから1年後に成長した苗を畑に植え替えます

そして、台切りあるいは新しい苗を植え替えて3年後のコーヒーの木にはこのように、たくさんの実がなるように!

節ごとにモリモリと10個以上の実がなっています!こんなに違うものかと感動しました

リティマ集落のアルビノ・ソアレス・トマスさんも誇らしげ!コーヒー畑の改善事業では、「フィールドオフィサーが定期的にモニタリングに来てくれて、積極的に関わってくれるので嬉しい」と言っていました

それぞれのコーヒー畑は、畑の状態も広さも違うため、各農家と相談しながら、台切りをするか、新しく植え替えるか、それぞれの希望する方法で老朽化した木の若返りを行っています。

これだけだと、畑の改善じゃないと思われるかもしれませんが、木の若返り以外にも収量を上げるための活動をしています!それらについては、[後編]でご紹介します!

「5か年計画ももうすぐ折り返し!コーヒー畑改善事業のご報告 [後編]」へ

(東京事務所 小栗清香)
※この事業はJICA草の根技術協力事業の業務委託を受けて実施しています。

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コカマウとの深煎りな日々7~625日ぶりのマウベシ~ https://www.parcic.org/report/timor-leste/timor_coffeefield/20087/ Thu, 13 Jan 2022 01:42:58 +0000 https://www.parcic.org/?p=20087 2020年の3月末から、新型コロナウィルスの感染拡大のためコーヒー生産地であるマウベシに行くことができず、日本や首都ディリから遠隔での業務を行っていました。しかし、ここ最近東ティモールの感染状況がかなり落ち着いたことからようやく、2021年12月13日からの1週間、出張として1年8か月ぶりにマウベシを訪問することができました。

今回は2020年のオンラインコーヒーツアーでもお馴染みのErdautuba(エルダウトゥバ)とRita(リタ)という比較的マウベシの中心地から近いグループを訪問しました。中心地から近いとは言っても畑によっては相変わらずビーチサンダルに短パンで歩くには若干怖いような道なき道を通って向かいます。

ビーチサンダルでこの傾斜は滑り落ちそうで久しぶりだと怖い…

コーヒーチームのスタッフとは彼らが首都に来られるときに会えていたのですが、コカマウ(コーヒー生産者協同組合)の農家さんたちとは久しぶりの再会です。以前は実質3か月しか一緒に活動していなかったので忘れられていないか心配でしたが、事業開始時から関わってきた農家さんたちはちゃんと覚えてくれていて、温かく受け入れてくれました。

今回の訪問で新しく作った苗床で育った苗を、初めて直接見ることができました。畝に並んでいるツヤツヤとした葉っぱを実際に見て、これが植え替えられて数年かけて畑が新しくなっていくのだと思うと何とも言えない高揚感がありました。

種まきから7か月程度の苗、もうすぐ畑に植え替えです

双葉になったばかりの子たちもかわいい…

畑や他の集落の様子なども、また今後少しずつ紹介していきたいと思います。

活動以外の部分でも嬉しかったことがありました。毎日のように通っていた事務所近くの商店に行くと、私がいつもコーラとキャッサバチップスの袋菓子を買っていたことを店主が覚えていてくれて、「今日はあのキャッサバチップスがないのよー」と自分のおやつに揚げたというクルプック(揚げえびせん)をたくさんサービスでくれました。

マウベシに行ったら今後も絶対通い続けます。

日本人の口にも合う、見た目通りの味の美味しいえびせんです

たった5日の滞在でしたが久しぶりのマウベシで早くもたくさんの人の優しさに触れることができました。

まだ少しの間は首都を拠点にしての出張という形になりますが、今後はマウベシのパルシックスタッフ、コカマウの農家さんたち、そして地域の人たちと共に活動していけることがとても楽しみです。

(東ティモール マウベシ事務所 工藤竜彦)

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コカマウとの深煎りな日々6~2次加工場~ https://www.parcic.org/report/timor-leste/timor_coffeefield/19690/ Tue, 14 Sep 2021 05:53:17 +0000 https://www.parcic.org/?p=19690 東ティモールにも新型コロナウィルス感染拡大の第2波が広がり、8月27日から首都のロックダウンが始まりました。

コーヒー生産地のマウベシ郡では大きな影響なくコーヒーの収穫が進み、1次加工を終えたパーチメントと言われる殻付きのコーヒーがとディリの2次加工場へと運ばれてきました。

機械に入っていくパーチメントコーヒー

ディリに運ばれてきたパーチメントコーヒーはこの2次加工場で脱穀、選別されて生豆の状態で日本に輸出されたり、焙煎して東ティモール国内で消費されたりします。近々オープン予定の国産品消費キャンペーン事業のカフェでもドリップコーヒーやコーヒーゼリーとして提供される予定です。

生豆をサイズごとに選別する機械

日本への出荷を待つコーヒーたち

平時は静かな2次加工場ですが、コーヒーの収穫期になると屈強な皆さんも手伝って、まず機械で脱穀、選別が行われます。

写真を撮りたいというとちゃんと横に並んでポーズをとってくれました

また、機械で選別されたコーヒーは作業員の皆さんの手によってひとつひとつ質の良いものが厳選されていきます。

始業直前、和気あいあいと準備をする作業員の皆さん

ひとつひとつ丁寧に、それでいて素早く選別されていきます

私が加工場に寄った日はちょうど作業員の賃金の支払いをしていました。いつもパルシック事務所にサッカージャージ姿でぶらっと来ている姿しか見ていなかったスタッフのアカイがしっかりと働いているところも見ることができました。

作業員に賃金を支払うパルシックスタッフのアカイ

商品となるコーヒーとは別に、マウベシ事務所のスタッフがディリ事務所のために手廻しで焙煎してくれたコーヒーも届いたのでさっそく自宅からお気に入りのコーヒー器具を持ってきて抽出してみました。昨年の収穫期はマウベシどころか東ティモールにすらいられなかったので、東ティモールに来て初めての採れたてコーヒーです。

採れたて焼きたてドリップコーヒーは格別!

早く感染が落ち着いて、生産地で農家さんたちと一緒にコーヒーが飲める日が来るといいのですが…。

(東ティモール事務所 工藤竜彦)

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コカマウとの深煎りな日々5 ~コーヒー収穫期~ https://www.parcic.org/report/timor-leste/timor_coffeefield/19451/ Wed, 14 Jul 2021 09:16:38 +0000 https://www.parcic.org/?p=19451 相変わらず首都ディリに滞在中の工藤です。

6月後半は多くの東ティモール人がサッカーのヨーロッパ国際トーナメントに熱狂していました。時差の関係で深夜の1時かもしくは4時開始の試合ばかりでしたが、特に縁の深いポルトガルの試合がある日は夕方から若者たちがトラックの荷台に乗って国旗を振り回しながら街中を暴走(?)している様子がよく見られました。パルシックのディリ事務所のスタッフはほとんど女性ですが、彼女たちも夜遅くまで起きて応援していたようで、試合の翌日はまずサッカーの話から始まりました。

サッカー観戦が始まったタイミングで首都の外出制限が解除になり、街のフットサル場で汗を流す人たちの様子も見られるようになりました。日本にいるときは多い時で週5回プレーするくらいフットサル好きな私ですが、念のため不特定多数との運動は避けているため、いつも一緒にボールを蹴りたい気持ちを抑えながらフットサル場を後にします。

自宅から徒歩圏内のフットサル場。今はまだ見ているだけ

さて、マウベシはコーヒーの収穫期に入っています。赤く色づいたコーヒーの実や収穫後の加工、乾燥の様子などの画像が送られてきます。私がこの事業に携わるようになってから1年半が経過したのですが、新型コロナウィルスの影響によって2期連続で現地での収穫に立ち会うことができていません。

いまだ実物を見たことがない収穫期のコーヒーの赤い実

今日はディリの海岸近くにあるパルシックのコーヒーの二次加工場に行き、たまたま日本に輸出するハーブティーをマウベシのスタッフが運んできているところに遭遇しました。

ハーブティーを下ろして空いた荷台のこのスペースに隠れて乗って行けば意外とバレずにマウベシに行くことができるのではないかという考えが頭をよぎりましたが、もちろんそんなことはできるはずもなく、積み込みを手伝って二次加工場を後にしました。

ビニールシートでもかぶって荷台に乗れば多分バレない

マウベシのスタッフはもうすでに今年のコーヒーを試飲しているそうです。 今年のコーヒーはどんな味がするのでしょうか。

ディリに届くのが今から楽しみです。

今年からコーヒー畑改善事業に参加したグループのメンバーとパルシックスタッフ

(東ティモール事務所 工藤竜彦)

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