レバノンでのシリア難民への食糧・越冬支援 – 特定非営利活動法人パルシック(PARCIC) https://www.parcic.org 東ティモール、スリランカ、マレーシア、パレスチナ、トルコ・レバノン(シリア難民支援)でフェアトレードを含めた「民際協力」活動を展開するNGO。プロジェクト紹介、フェアトレード商品販売など。 Fri, 14 Apr 2023 06:40:29 +0000 ja hourly 1 https://wordpress.org/?v=6.4.1 越冬支援ご報告 : アルサール市の学校に灯油を届けることができました! https://www.parcic.org/report/syria_turkey_lebanon/syrian_refugees_lebanon/22391/ Wed, 12 Apr 2023 06:56:03 +0000 https://www.parcic.org/?p=22391 パルシックでは、2022年10月から2023年2月にかけて、レバノン北部アルサール市の子どもたちが通う学校に灯油を配布するための越冬支援キャンペーンを実施しました。

募集が終了したキャンペーンのお知らせページはこちら↓
「極寒の地で勉強に励むシリア難民とレバノン人の子どもたちに、暖房用灯油を届けたい!」

こちらのキャンペーンにご協力いただきました皆さま、誠にありがとうございました。1,836,000円のご寄付が集まり、レバノン人とシリア難民の子どもたちが学ぶ全29教室に、無事に3か月分相当の灯油を届けることが出来ました。

灯油ストーブ(写真手前)を囲み授業を受ける生徒たち

レバノンは例年に比べると比較的暖冬ではあったものの、標高約1,500メートルの山間部に位置するアルサール市では、2月には最低気温がマイナス4度にまで下がりました。また、積雪のため道路が塞がれ、10日間も休校となるなど、学校にとって厳しい状況が続いていました。

雪に覆われたアルサール市の難民キャンプ

積雪で道が塞がれています

灯油が配付される前は、教室のあまりの寒さに耐えきれず席を立ってしまう子もいるなど、授業の継続が困難だったと語る先生もいます。しかし、暖房用ストーブが稼働すると、子どもたちは暖かい教室にほっとした様子で、集中して授業を受けることが出来たようです。

冬でも暖かい環境で過ごせました

また、大変ありがたいことに、目標金額を超えるご寄付を皆さまよりいただくことができたため、同市にある他の5つの学校にも、寒さの厳しい時期に約2週間分の灯油を購入することが叶いました。

アルヌール学校以外の学校も、同様に暖房対策を必要としていました。しかし、経済危機下の物価の高騰により、灯油の購入が容易ではない状況に頭を悩ませていたのです。 パルシックは現地の提携団体と話し合い、これらの学校にも支援を実施することを決めました。 合計6,500リットルの灯油は各学校の規模に合わせて配付され、生徒たちは寒さを凌ぐことが出来ました。

5校の1つであるアルマラズ学校の校長は、「私たちの学校にも越冬支援を実施していただき、本当にありがとうございます。皆さまの助けにより、安心して教育を提供し続けることができました。生徒たちも、暖かい教室に喜んで集まってきました」と感謝の言葉を伝えてくれました。

感謝の気持ちを伝えるアルマラズ学校の校長先生

灯油を配付した他の学校の様子

冬の寒い時期でも、元気いっぱいに学んでいます

現在は人びとを悩ませていた雪もすっかり解け、桜に似たアーモンドの花が咲き、街には暖かな春が訪れています。こうして厳しい冬を乗り越え、子どもたちが今この瞬間も学業に励むことが出来るのは、皆さまのお力添えがあってこそ叶うものです。 パルシックは、引き続き教育事業を通して子どもたちを見守り、そして皆さまにもその様子をお伝えしていきます。今後とも引き続き、どうぞよろしくお願いいたします。

アルヌール学校の前で記念写真

(レバノン事務所 佐藤)

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【越冬支援ご報告】アルサールの小学生に手編みマフラーを配付しました! https://www.parcic.org/report/syria_turkey_lebanon/syrian_refugees_lebanon/20438/ Wed, 13 Apr 2022 06:57:54 +0000 https://www.parcic.org/?p=20438 2021年11月から実施していた【ご寄付のお願い】レバノン北部アルサール シリア難民越冬支援にご支援をいただいた皆様、誠にありがとうございました。いただいたご寄付でバールベック・ヘルメル県アルサール市の小学校に通うシリア人やレバノン人の生徒たちに手編みのマフラーを配付しました。厳しい冬の寒さとコロナ禍の中で、子どもたちは体を暖かくして健康に学校に通うことができました。

今シーズンの冬は例年以上に厳しいものでした。ここ数年は12月末から1月初旬に降雪が始まり、3月初旬には雪は収まっていくというのがパターンになっていましたが、今シーズンは雪の降り始め時期こそ、ここ数年の傾向とさほど変わりはなかったものの、積雪を伴う冬の嵐が何度も何度もレバノンを襲い、それが3月末まで続いたのです。

特に1月は連日の氷点下の気温や積雪のため、アルサールの学校では休校が続き、冬休みが明けた1月11日以降、7日間しか学校を開くことができないような状況でした。

アルサールに降り積もった雪。写真の下半分は難民キャンプのテント

テントのシートが飛ばないようにタイヤを上に載せている

ベカー県の難民キャンプのテントに住む女性も同様に厳しい状況に置かれていました。標高約1,500mのアルサール市に比べて、ベカー県は標高約1,000mとアルサールほどではないものの、降雪もあるような地域です。11年前に始まったシリア危機以来、長年難民としてテントに暮らし、難民に対する就業制限や、2019年に深刻化した経済危機のために働くことが難しく、94%が生存するのに最低限必要な金額以下で暮らしています。

今回の越冬支援の物資として、ただ単に外国から輸入してきた安い製品を買うということもできましたが、こうした経済的に厳しい状況に陥っている人びと、特に女性の生計支援にもなるよう、毛糸玉や編み棒を買って女性に工賃を支払ってマフラーを作ってもらうという方式をとりました。こうすることで、いただいたご寄付を毛糸製品を受け取る子どもたちへの防寒具支援だけでなく、それを作るシリア人女性の生計支援にもすることができました。

もともと編み物が得意な女性が多く、こちらがお願いしたわけでもないのに、装飾をつけてくれたり、単色ではなく複数の色の毛糸を使ってボーダー柄にしてくれたりしました。このように人びとの持つ能力・回復力(レジリエンス)をいかに引き出すような支援ができるかは、非常に重要なことであると考えています。

サンプルで作ってくれたマフラー。お花の飾りが素敵です

今回、手編みのマフラーを1,224枚作り、アルサール市の私立小学校の1~6年生1,224人に配付することができました。

配付報告

ご寄付総額:730,239円

配布内訳:手編みのマフラー 1,224枚(小学生1,224人)

配付したシリア人女性の手編みマフラー

さっそくマフラーをつける子どもたち

マフラーを巻いてポーズ

温かなご支援をいただき、ありがとうございました!

(レバノン事務所 風間)

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皆さまのご寄付で灯油を届けました!~アルサール越冬キャンペーン2020 終了報告~ https://www.parcic.org/report/syria_turkey_lebanon/syrian_refugees_lebanon/18947/ Tue, 13 Apr 2021 05:57:00 +0000 https://www.parcic.org/?p=18947 2020年10月から実施していたアルサール越冬支援キャンペーンが終了しました。

パルシックは、現地提携団体URDA(Union of Relief & Development Associations)と共に、皆さまからいただいた大切なご寄付を活用し、2021年2月と3月にアルサールに暮らす避難生活を強いられているシリア人の方々へ、灯油の配布を行いました。

冬の寒さに負けず外で遊ぶ子どもたち。

手前と奥の丘の上にある白い建物は全てシリア難民キャンプです。

今年の冬は、幸いにも例年より大雪や大雨の回数が少なく厳しい寒さになりませんでしたが、朝と夜の気温は常に0度前後まで下がったため暖房用の灯油は必需品でした。皆さまからいただいたご寄付で、今年は160世帯(ザハラキャンプ26世帯、サイードキャンプ24世帯、アブラールキャンプ110世帯)への灯油を2か月間配布いたしました。

今年は、新型コロナウィルスの感染拡大の影響で、冬の間外出禁止令や移動制限が課されたため、配布のための特別な許可の取得や、灯油業者やスタッフとの配布日程調整に時間がかかり、配布が2月までずれ込んでしまいました。3月の最後の灯油の配布では、配布が遅くなり申し訳ない気持ちでしたが、配布を受けたお母さんたちから、「朝と夜はまだ寒く、夜はストーブの灯油がないと寒くて寝られない。朝起きて温かい紅茶やコーヒーを淹れるにも灯油がないとストーブでお湯が暖められないので、灯油の配布に感謝している。」という声をいただきました。

もともと野原や畑だった場所にキャンプが立てられたため、水はけが悪く、雨が降るとすぐ水溜まりとなり、今年は一度テントにも雨水が入ってきた日もありました。

配布された灯油をテントに持ち帰る様子

寒さは徐々に和らいできていますが、新型コロナウィルスの影響は当分続くことが予想され、加えて経済悪化による物価上昇の影響で、多くのシリア人が食糧不足の状態となっています。活動自体が難しい状況ですが、パルシックとしては、現地のニーズ調査をこれからも続け、皆さまからいただくご寄付および助成金等を活用し、一人でも多くのシリア難民世帯に支援を届けたいと思っています。

配布の様子

配布場所にいすを並べ、接触を避ける配慮をしての配布する様子。配布スタッフは防具服も着用しています。

現在アルサール市では、教育事業も行っているため、これからも定期的に現地の様子を報告し、パルシックの活動を知っていただければと思っております。

アルサール越冬キャンペーン(2020-2021) 配布報告

募金総額: 142万9,808円(117件)
灯油:160リットル × 160世帯(総量 25,600リットル)

(レバノン事務所 大野木 雄樹)

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「シリア難民の身体と心の健康増進に」アルサールのシリア難民キャンプ 食糧支援事業の報告 https://www.parcic.org/report/syria_turkey_lebanon/syrian_refugees_lebanon/18357/ Tue, 22 Dec 2020 09:04:03 +0000 https://www.parcic.org/?p=18357 アハラン!キフコン?(アラビア語のレバノン・シリア方言で「こんにちは!元気ですか?」の意味です。)2020年も残すところあと1週間余りとなりました。レバノンは11月から雨が降り始め、大雨になることもしばしばです。この地域の方言で、「雨(シター、シティ)」という言葉と「冬(シター)」という単語が似ていることからも、冬は雨期であることがうかがえます。

それでは本題に入りましょう。今回はレバノン北東部アルサール市で実施した食糧支援事業のその後をお伝えしようと思います。

事業概要を手短に説明すると、

– 長引く避難生活等により経済的に厳しい状況に置かれ、食糧不足の状態にある
– 安価で腹の膨れる炭水化物等ばかりを摂取し、必要な栄養が摂取できていない(子どもが体調を崩しやすい)

という状況を、食糧バスケットの配布、家庭菜園、栄養研修の実施によって改善するというものです。

食糧バスケット配布

まず、収入源がない、女性世帯主など脆弱性の高いシリア難民の350世帯に、5月、6月、7月、10月の各月に1回25ドル分の食糧バスケットを配布しました。物価の急激な上昇と新型コロナウィルス対策で外出制限もかかり、収入機会が特に限られる中で支援を受け取った人びとからは「食糧バスケットがあって助かった」、「定期的に食糧配布があったため心の安定につながった」という声を聞くことができました。

新型コロナウィルス感染対策をとって配布を行いました。

食糧バスケットを受け取る女性

家庭菜園

また、新鮮な野菜やハーブを自給して購入せず食べられるようにすることで少しでもバランスの取れた食事ができるよう、食糧バスケット支援対象者の内、妊婦や乳幼児を抱える女性に対し、野菜の種・苗やその他必要な器具を配布するとともに、作物の育て方や収穫方法を指導しました。レバノンでは、新型コロナウィルスの感染拡大により外出制限が課され、多くのシリア難民が、狭く仕切りもないテント家屋で仕事も収入もないまま一日を過ごすしかない状況でした。しかし、パルシックが支援した女性達は、時に子どもが嫉妬するほど家庭菜園に熱心に取り組みました。研修講師が生育状況を確認するためキャンプを訪問した際には、次から次に「自分の菜園にも来て下さい!」と講師に声をかけ、「うまくいっていますね」と褒められるととてもうれしそうな表情を見せ、改善点のアドバイスにも熱心に耳を傾けていました。

家庭菜園講師のアドバイスを熱心に聞く女性と子

その結果、調査対象者の100%が、ナス、豆、トマト、レタス、コリアンダー、ミント、ピーマン等、何らかの野菜やハーブを収穫し食べることができました。またピーマンを3キロ、トマトを1キロも収穫できたという方、家庭菜園から収穫した野菜やハーブは「おいしかった」と言う子どもにも出会うこともできました。

幼い子どもを抱えながら自分の家庭菜園を説明してくれた女性。テント脇に植えられたトマトが育ち、実がなっている。

研修の終盤では、コンポストを利用した肥料の作り方も指導しました。レバノンでは肥料を外国から輸入しており、シリア難民にとって肥料を購入して家庭菜園を続けることは現実的ではないため、継続できる方法を学ぶ必要があるからです。研修終了後、実際にコンポスト肥料づくりにトライしている方も確認でき、パルシックの支援が終了した後も家庭菜園を継続する世帯が出てくることが期待できそうです。

栄養研修

家庭菜園研修を受けた妊婦・乳幼児を抱える女性に対し、栄養に関する研修も行いました。 妊婦や母乳育児をする女性は、どのような栄養を取る必要があるのか、どのような食材に必要な栄養素が含まれていて、比較的安価に手に入る食材は何かを学びました。併せて、食材に含まれる栄養素をいかに無駄にせず、配布する食糧や家庭菜園で採れる野菜やハーブも活用しながら、どのような料理を作ることができるのかについても学びました。

例えば、経済的に肉を買う余裕が無い中でもタンパク質がとれ、若い女性が不足しがちな鉄分を補給できるスープレシピを紹介しました。タンパク質を多く含むが肉よりは安いレンズマメを使ったスープに、鉄分の多いセレク(スイスチャード)などの葉物野菜入れます。ただし、葉物野菜は栄養が流れ出ないように切る前に洗い、大きめに切ってスープに入れ、更に鉄分の吸収をよくするビタミンCを含むレモン汁を加えるというものです。

参加者からは、栄養を考えて「家庭菜園で作ったトマトで離乳食を作り幼児に与えた」、「サンドウィッチにピーマンやトマトを入れるようになった」という声を聞きました。アンケートの結果「研修が家族の健康を促進するのに役立ったと思う」と答えた女性の割合が100%に達し、非常に高い評価を得ることができました。

栄養研修の様子。講師は対象者に配慮し女性が務め、研修は半屋内の風通しの良い場所を借り、マスクをつけるなどして新型コロナウィルス対策を行った。子どもを連れてでも参加する方が多く、関心の高さがうかがえた。

影響

食糧支援事業では大抵食糧を配布して終了というものが多い中、今回は家庭菜園を取り入れたことにより支援対象者世帯への良い影響がありました。

研修参加者へのアンケートでは「研修を受けた本人や子どもが精神的に安定した」と回答した女性が9%、「近所の一緒に研修を受けた女性とよりコミュニケーションをとるようになった」と回答した女性が26%、また「家族内の不和が減った」と回答した女性が50%も存在しました。

家庭菜園は、家族で一緒に植物を育てるという楽しみとなり、家族内やご近所との共通の話題になります。うまく育てば貴重な食糧にもなり、緑の少ない荒涼とした難民キャンプを緑化することにもつながります。これらにより特に脆弱性の高い妊婦や乳幼児を抱える女性達の精神的な健康を増進することができました。また、レバノンでは、新型コロナウィルス拡大以降、将来が見えない状況下でストレスを抱えた夫等による家庭内暴力に関する相談の電話が51%増加していることが治安警察によって報告されています。家庭内の不和を減らすことで、女性や子どもが家庭内暴力を受けるリスクを減らすことにも貢献できたと言えます。

荒涼とした大地に広がるアルサールの難民キャンプ

家庭菜園の緑を眺める子ども。家庭菜園の緑は、癒しにもなる。

さて、当事業は2020年11月30日をもって終了しましたが、10月からはアルサールのシリア難民の子どもたちを対象にした教育事業、またベイルート大規模爆発で被害を受けた人びとに対する支援事業が開始しています。さらに、冬の寒さが厳しいアルサール市において難民キャンプのテントで暮らすシリア難民に対する越冬支援寄付キャンペーンも行っておりますので、こちらもご注目下さい。 それではまた!

(レバノン事務所 風間)

※この事業はジャパン・プラットフォームからの助成と皆さまからのご寄付で実施しています。

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アルサールのシリア難民キャンプでの新たな食糧支援事業 https://www.parcic.org/report/syria_turkey_lebanon/syrian_refugees_lebanon/17030/ Thu, 18 Jun 2020 07:05:38 +0000 https://www.parcic.org/?p=17030 こんにちは!2020年4月より、レバノンのバールベック・ヘルメール県アルサール市で新たに食糧支援事業をスタートしました。先日の記事では、1回目の食糧バスケット配布についてお知らせしましたが、今回の食糧支援事業は、食糧バスケットを配るだけではありません。今回は事業内容につていてもう少し詳しくお話します。

パルシックの新しい食糧支援事業って何をするの?

さて、2020年5月現在、レバノンはこれまで以上に経済的に厳しい状況に追いやられています。経済危機で物価が昨年10月比で2~3倍上昇し、新型コロナウィルス対策による厳しい外出制限で[1] 多くの人びとが、2カ月間労働収入が無い中、何とか生き抜いているという状況です。そのような中で、今回新たに始まった食糧支援事業は、食糧バスケット配布と、家庭菜園研修という2つの大きな柱から成ります。

食糧バスケットには、1世帯当たり25ドル分の小麦粉、スパゲッティ、米、豆、トマト缶、ツナ缶、植物油、砂糖、塩等の基本的な食糧が入っています。レバノンに滞在するシリア難民の9割以上が食糧不足の状況にあり、食糧を買うのですら借金をせざるを得ないような状況で、パルシックの食糧配布は、食糧を入手するための貴重な機会となっています。

5月13日に配布した食糧バスケットの中身

しかし、食糧バスケットで配布する食糧はどうしても長期間の保存ができる食品に限られます。また、経済的に苦しい場合、まずは安く空腹が満たされるものを、ということで、レバノンのシリア難民の人びとは[2] 炭水化物ばかり摂取し、動物性タンパク質やビタミン、鉄分等が含まれる肉や野菜といった生鮮食品をとる頻度が低いこと、摂取する食べ物の多様性が乏しい傾向にあることが分かっており、子どもが体調を崩しやすいこと[3] が報告されています。

ただ、現在のように大幅な物価上昇と収入が限られた中では、いくら栄養バランスを考えて肉や野菜を食べる方が良いと難民の方は理解していても、現実には買うお金が無いのだからどうしようもありません。そこで、パルシックは、プランターやポットで行う家庭菜園の研修を、食糧バスケットの配布対象者のうちの希望者に対して、併せて実施することを計画しています。うまく育てることができれば、新鮮な野菜や中東料理には欠かせないハーブを自分の手で、しかも無料で摂取することができるようになります。これにより、難民生活を強いられている人びとが、必要なビタミンや栄養素の一部を摂取することができるようになります。パルシックは、難民の栄養状況が少しでも改善されて健康に暮らせるお手伝いができればと考えています。

家庭菜園イメージ

もう1つ重要な点は、家庭菜園の研修を受ける人びとに対し、栄養研修も実施することです。シリア難民女性には、リプロダクティブヘルス(性と生殖に関する健康)に関する正しい知識が乏しい傾向にあり、妊娠中に摂取すべきビタミンや鉄分等を適切に摂取しなかった女性も一定数いることが報告されています 。栄養研修では、特に妊婦や母乳育児をしている女性が、どのような栄養・食品を何のために摂る必要があるか、食糧バスケットで配布する食糧と家庭菜園から採れる野菜やハーブをどのように調理すれば、必要な栄養を効率よく摂取できるかについて学び、日々の生活に取り入れてもらうようにします。これにより、すぐには効果が出ないかもしれませんが、特に妊婦や母乳育児をする女性や幼い子どもの健康の増進に徐々につながっていくことが期待されています。

どんな野菜やハーブが育っていくのか、その収穫模様や研修の様子など、今後お伝えしていきます。

[1] Hussain Dakroub, Daily Star Lebanon “Cabinet to approve two-week lockdown extension” 2020年5月19日 (外出制限は、5月24日までの予定でしたが、感染者が増えたため、5月21日に6月7日までの外出制限延長が実際に承認されました。)(2020年5月21日アクセス)
[2] レバノンやシリア、難民に限ったことではありません。私もお金のない学生時代は同じような傾向にありましたし、レバノンに住む今も、タンパク源の肉や魚は高いため、比較的安価な卵や豆類の摂取を増やす対処をとっています。
[3] UNHCR, UNCEF & WFP, “VASYR 2019 – Vulnerability Assessment of Syrian Refugees in Lebanon” (2019) P78

(レバノン事務所 風間)

※この事業はジャパン・プラットフォームからの助成と皆さまからのご寄付で実施しています。

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アルサールのシリア難民キャンプで、新たな食糧支援事業を開始! 第1回食糧配布の映像も公開! https://www.parcic.org/report/syria_turkey_lebanon/syrian_refugees_lebanon/17027/ Wed, 03 Jun 2020 06:39:45 +0000 https://www.parcic.org/?p=17027 こんにちは!パルシックは2020年4月より、レバノンのアルサール市で新たに食糧支援事業をスタートしました。

これまで

パルシックは、2018年よりレバノン北東部のシリア国境沿いにあるバールベック・ヘルメール県アルサール市にてシリア難民支援を行ってきました。アルサール市のシリア難民の状況の厳しさは、すでに先日の越冬支援キャンペーンを通してご存じかもしれません。簡単に状況をまとめるならば、

– 真冬は氷点下-9℃にもなる厳しい自然環境
– シリア国境沿いにあるレバノンの中でも開発されず取り残された地域
– 地元のレバノン人よりも多くのシリア難民が居住している特殊な地域

という3点が挙げられます。

2020年1月、-9℃と積雪30cm以上を記録したアルサール。(写真=提携団体URDA提供)

2019年9月のアルサールの様子。草木のほとんど生えない荒野にテントが密集して建てられている。日差しが強い。

新規事業開始!

そして2020年4月、パルシックは、アルサール市にて難民生活を強いられているシリアの方々に対し、新たな食糧支援事業を開始しました。『COVID-19:ロックダウン下のレバノンにおけるシリア難民の苦境』でも述べた通り、新型コロナウィルスとそれ以前からの経済危機が状況を一層悪くし、多くの人びとが食うや食わずの生活をしています。そのような中、5月13日に1回目の食糧バスケットの配布を行いました。事業実施に際しては、医療体制も整っていない地域であるため、難民キャンプで新型コロナウィルスが発生・感染拡大しないよう、防護服やマスクをつけ、ソーシャルディスタンスをとる等、できる限りの予防策をとっています。その様子をご覧ください。

【第1回食糧配布の様子】

さて、新しく始まった食糧支援事業は食糧を配布するだけではありません。難民生活を強いられてきたシリア人の方々が、少しでも生活を向上できるよう別の活動も盛り込みました。この続きは次回の記事で!

(レバノン事務所 風間)

※この事業はジャパン・プラットフォームからの助成と皆さまからのご寄付で実施しています。

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皆さまのご寄付で越冬物資を届けました~アルサール越冬キャンペーン終了報告~ https://www.parcic.org/report/syria_turkey_lebanon/syrian_refugees_lebanon/16754/ Thu, 07 May 2020 02:52:53 +0000 https://www.parcic.org/?p=16754 2019年11月から実施していたアルサール緊急越冬キャンペーンが終了しました。

第1回の配布については既報の通りですが、その後も皆さまからの温かいご寄付をいただき、3月13日に追加でアルサール市のアルマスリーキャンプとサーメルキャンプの143世帯(約715人)に灯油20Lの配布を行うことができました。

今年の3月のアルサールは、徐々に気温が上がってきてはいましたが、それでも朝は0度になる日もあります。周りに風を遮るものも少なく、冷たい風が吹きつけるアルサールにおいて、テントで生活するのは容易ではありません。

さらにこの時期は、2月21日にレバノンで初めての新型コロナウイルス感染者が確認されて以降、徐々にウイルスに対する不安が高まっていた頃でした。2月29日には学校が閉鎖され、徐々に新型コロナウイルス感染が多く発生している地域からのフライトもキャンセルされはじめていました。そのため、3月13日の配布に際しては、難民キャンプに感染が拡大しないよう、配布作業員はマスクや手袋をするなどして安全に配慮した上で配布を行いました。

20Lのポリタンクはかなり重いです。力強い人が多いように感じます。写真は現地提携団体URDA提供

20Lのポリタンクはかなり重いです。力強い人が多いように感じます。写真は現地提携団体URDA提供

持ち帰ることが難しい方には、自宅まで配布ボランティアがサポートします。写真は現地提携団体URDA提供

持ち帰ることが難しい方には、自宅まで配布ボランティアがサポートします。写真は現地提携団体URDA提供

レバノンでは先日の報告でもお伝えした通り、既存の経済危機と新型コロナウイルスによる社会・経済的危機に見舞われています。しかしそれ以前から、レバノンにおいて難民生活を強いられているシリア人は、食べ物を買うのですら借金をしなければならず、十分に栄養摂取できていない状況でした 。そのような脆弱性の高い人びとにとって、灯油を買い、更に衛生用品も購入することは、非常に難しいことです。実際、同じアルサールの別のキャンプにおいて今年3月にとったアンケートでは、100%の回答者が「灯油が役に立った」としており、私たちが行う灯油などの配布を行う越冬支援の重要性を改めて実感しました。

そして、今回の配布は皆様からのご支援があったからこそ実現できたことです。今一度、ご支援くださった皆さまに感謝を申し上げます。

本来であれば、3月に私自身もアルサールの配布に同行し、2月に行った1回目の配布をした世帯へモニタリングを行い皆さんの声を届けたいと思っていましたが、外出禁止令の発令により訪問が叶わなくなってしまいました。また訪問出来る日が来ましたら、現地の様子を直接お届けしたいと思います。

パルシックでは、2020年4月以降もアルサール市において食糧面での支援事業を継続して行います。引き続き、ご関心を寄せていただけたら幸いです。

アルサール越冬キャンペーン(2019-2020) 配布報告

募金総額: 152万7,515円(120件)
灯油:20リットル × 243世帯(総量 4,860リットル)
毛布:3枚 × 135世帯(総数 405枚)

(レバノン事務所 風間)

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いただいたご寄付で越冬物資の配布 – レバノン アールサール https://www.parcic.org/report/syria_turkey_lebanon/syrian_refugees_lebanon/16127/ Tue, 25 Feb 2020 09:43:13 +0000 https://www.parcic.org/?p=16127 昨年11月より実施しておりましたアールサール緊急越冬支援キャンペーンの報告です。

今季の冬は、毎週厳しい寒波が襲った昨シーズンと比べればまだまし、というレバノン人の声も聞こえましたが、それでも1月から2月にかけて何度か寒波が襲来し、最低気温マイナス9度や30センチ前後の積雪も観測されました。アールサールのシリア難民の方々にとっては、これまで住んでいたコンクリートで補強したシェルターが昨夏に取り壊しになってから迎える初めての冬。例年以上に灯油の消費スピードが速く、単なるテントで過ごす冬の厳しさを物語っています。

パルシックは、現地提携団体URDA(Union of Relief & Development Associations)と共に、緊急越冬支援キャンペーンを通じて皆様からいただいた大切なご寄付を活用し、2020年2月18日、アールサールに暮らす難民生活を強いられているシリア人の方々へ、越冬物資の配布を行うことができました。

アールサールのイブンアルワリードキャンプ、アルザハラーキャンプ、アルハージャキャンプへの合計100世帯へ灯油20L を、アルマスリーキャンプ、サーメルキャンプの合計135世帯へ毛布405枚を配布することができました。

大きなキャンプは大きな団体が真っ先に支援を行いますが、今回のような小さなキャンプにはなかなか十分に支援の手が行き届かないのが実情です。私たちの支援が少しでもシリアの人びとの生活の支えになればと願っています。

ハジャーキャンプで灯油を受け取り、手を振る男性

ハジャーキャンプで灯油を受け取り、手を振る男性

ザハラーキャンプで灯油を受け取った女性

ザハラーキャンプで灯油を受け取った女性

配布場所に来られない方には、スタッフが各家庭まで運びました

配布場所に来られない方には、スタッフが各家庭まで運びました

配布は日が暮れるまで続き、無事に届けることが出来ました

配布は日が暮れるまで続き、無事に届けることが出来ました

(レバノン事務所 風間)

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レバノン:アールサールでの越冬支援を開始 https://www.parcic.org/report/syria_turkey_lebanon/syrian_refugees_lebanon/15729/ Tue, 10 Dec 2019 05:49:52 +0000 https://www.parcic.org/?p=15729 2019年11月よりレバノン東部のベカー県ザハレ郡および北東部のバアルベック・ヘルメール県アールサール市において、越冬支援として食糧配布、灯油配布が始まりました。

当日は配布を待ちわびていた難民生活を強いられている人びとに、必要な食糧を届けることができました。食糧を受け取り笑顔になる人びとの様子に私たちも嬉しくなりました。

レバノンのシリア人難民がおかれた状況は依然として厳しく、多くの人は食糧すら借金やお店のツケで購入しています。これから冬にかけ、農業などの仕事が減り、灯油や冬服の購入等で支出が増える中、パルシックの配布事業によって少しでも人びとの生活を支えることができればと思っています。

配布事業はこれから半年間続きますので、随時その様子をお伝えしていきます。

灯油の配布

男の子に食糧を手渡すスタッフ

男の子に食糧を手渡すスタッフ

(レバノン事務所 風間)

※この事業はジャパン・プラットフォームの助成と皆さまのご寄付で実施しています。

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レバノンにて難民の方々と共に2019年を迎えて https://www.parcic.org/report/syria_turkey_lebanon/syrian_refugees_lebanon/14287/ Tue, 08 Jan 2019 10:05:49 +0000 https://www.parcic.org/?p=14287 パルシックのレバノン事務所駐在員として、2017年の春よりレバノンに暮らす難民の人びとに支援を届ける事を自身の使命としてきながら、人びとからいつも励ましをいただき、何とか継続することができました。そんな2018年もいつの間にか過ぎ去り、2019年を迎えました。

新年を迎えるにあたり、いつもご支援くださる皆さまに厚く御礼申し上げますと共に、昨年レバノンにおいて当団体が実施した事業のハイライトと、今後のレバノン事業の展望をお伝えしたいと思います。

一列に並んで行進する児童たち。どうしても後ろや周りの子が気になりきょろきょろ。

一列に並んで行進する児童たち。どうしても後ろや周りの子が気になりきょろきょろ。

2018年のレバノン事業のまとめ

2018年のレバノンにおけるパルシックの活動は、ベカー県ザハレ郡にて前年度とほぼ同じ内容の教育支援と越冬支援を引き続き行っています。

教育支援事業

2018年5月、レバノンにて新たな教育センターを開始してから初めて270名の児童たちが年間プログラムを修了する月となりました。無事に修了することのできた児童たちへは、1年間の成績表と、ささやかな修了祝いの花を手渡しました。成績表を受け取った児童たちはそれぞれ思い思いの表情を見せ、先生に褒められ照れた表情をする児童や、思ったような成績が取れず悔しさに目に涙を浮かべる児童、クラスで1番になり鼻高々な様子の児童など、さまざまでした。中には自分の成績に納得がいかず、教育センター長に直談判する児童も数名見られ、彼らにとっては努力の結果が実を結ぶ喜びとまたその逆を感じる初めての経験となりました。10月からは新しい年間プログラムがスタートしており、本事業の教育センターへの通学が2年目となる児童たちは、昨年度と比べちょっぴり大人びて見え、昨年就学前クラスで泣いていた児童が今年度入ってきた年下の児童の面倒をみてあげている様子に、見守る教員の方々に笑みがこぼれました。

新しく勉強したアルファベットの出来栄えを見せてくれた児童。1つずつ覚えていきます。

新しく勉強したアルファベットの出来栄えを見せてくれた児童。1つずつ覚えていきます。

2018年12月に行われた教員研修。それぞれの先生方の心がけている指導方法、指導面で困難を感じる点やその対応方法について真剣に討議しました。

2018年12月に行われた教員研修。それぞれの先生方の心がけている指導方法、指導面で困難を感じる点やその対応方法について真剣に討議しました。

2017-2018年をまたいで行った食糧・越冬支援

ジャパン・プラットフォームの助成によるザハレ郡でのパン・食糧バスケット・灯油の配布に加え、皆さまのご協力で実現した教育センターに通う児童への軽食の配布と、緊急の越冬支援としての灯油や毛布、マットレスの配布など、支援を必要とする多くの人びとへ支援を届けることが出来ました。2018年10月からは、前年度の支援規模を縮小せざるを得ませんでしたが、それでも前年度の越冬支援のモニタリングで最も必要だという声があった暖房用灯油を、対象世帯へ前年度とほぼ同量、食糧バスケットと共に配布しています。

2018年12月の食糧バスケット配布時の写真。雨の中、キャンプ地内のボランティアの手を借りて配布しました。

2018年12月の食糧バスケット配布時の写真。雨の中、キャンプ地内のボランティアの手を借りて配布しました。

レバノンに暮らすシリア難民への支援の今後

シリア国内の状況は、マクロレベルでの見方では、概ね政府軍により制圧され、今後人びとの帰還が順次進められていく体制が整いつつある、という流れにあります。しかしミクロレベルのより難民の実感に近い見方では、レバノンに暮らすシリア難民は未だ、シリア国内の安全性、不足するインフラ(住居、教育施設、医療施設)、仕事の欠如、望まない兵役の義務[1]、帰還に必要な複雑な個人情報の証明プロセス、レバノン国内で生まれた子どもの法的書類取得の困難さなどなど、個人ではどうすることもできない問題に妨げられ、帰還という選択肢を選ぶことは非常に困難であるのが現実です。

ひとつだけ確かに言えるのは、今後少なくとも数年はシリア国外の難民の状況はより一層深刻なものとなっていくだろうということ、そしてそのような人びとへの支援がこれまで以上に必要とされるであろうということです。パルシックが今後も支援を通じ、現地の人びととの強いつながりを持ち、その中で未来へ繋がるものを生み出す取り組みが出来るよう、どうか応援をお願いいたします。

雪に覆われたキャンプ地。これから数か月、キャンプ内のテントに暮らす難民の人びとの寒さとの闘いが続きます。

雪に覆われたキャンプ地。これから数か月、キャンプ内のテントに暮らす難民の人びとの寒さとの闘いが続きます。

[1] 難民となった人のうち、シリア政府軍の徴兵を逃れる為に国外へ避難したという人は多くいます。特に20~30代の男性は緊急事態宣言の下、シリアへ帰国する場合は強制的に無期限延長の兵役につくことが求められます。

(レバノン事務所 宮越)

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