2017年という新たな年を迎えた今、トルコではシリア難民への市民権の認可、全国規模でのさまざまな用途に使用可能な電子バウチャーの配布、トルコの公立小学校へのシリア人学生の編入といった大きな改革を段階的に進めており、トルコでの難民受け入れ状況が徐々に進展しています。そのような中で、当団体のシャンルウルファ市郊外での支援は、開始より9か月が過ぎようとしています。これまでに行ってきた支援は、毎月の電子バウチャーによる食糧・衛生用品支援、ブルーシートの配布、越冬支援、マイクロガーデニング用の種の配布です。これらの支援によって人びとの暮らしにどのような変化があったのか、支援対象者の皆さんのお声と共にお伝えします。
4人の子どもを持つメヘディさん一家は2年前トルコへ逃れてきてから、綿花の栽培や作物の収穫といった季節ごとに暮らす町を家族と共に移動しながら行う仕事を収入源としてきました。彼の一番末の息子(ムハンマド君)は現在生後8カ月で、支援を受ける前の生後6か月の頃は粉ミルクを買ってあげることができず、乳幼児期にありながら紅茶とパンを食べている状態でした。その頃の彼の体重は生後6か月の乳幼児の体重としてはやや少ない6.7㎏だったそうです。当団体の支援が受けられるようになった現在、毎月の支援金額を粉ミルクの購入に充てることができるようになり、彼の息子の体重は平均的な体重よりもやや多い、10㎏まで増えたとのことです。当団体のトルコ事務所で働く同じような年齢の子どもをもつシリア人スタッフにとっても、メヘディさんが子どもにミルクを与えてあげられることは自分の事のように嬉しいことです。
トルコでの暮らしが8カ月目を迎えるファトマさん一家は、工事現場などでの日雇い労働に従事するご主人と4人の子どもたちの6人家族です。シリア国外へ避難する多くのシリア人がそうであるように、彼らはシリアにそれぞれの親兄弟を残し、トルコで生きていく決断をしました。しかしたとえトルコへ逃れたとしても、当然ながらシリア国内に残った家族がいつ戦闘に巻き込まれるかもしれないという恐怖や、多くの自由を奪われて生活する家族を思う不安から逃れられません。ファトマさんは、当団体の支援を受けられたことにより、僅かながら食費に余裕が生まれ、ご主人の収入をシリア国内の家族へ仕送りをするために蓄えることができたと教えてくれました。そしてその仕送りは、家族の手術費を補うことに使われたそうです。
メヘディさん、ファトマさんの語ってくれた言葉は、パルシックの支援が一人ひとりの人生に大きな影響を与えうるものであることを改めて強く感じさせます。現在の支援が支援対象者の未来へと繋がっていくものとなるよう、絶えず、自分たちの支援のあり方を見つめ直していかねばなりません。
(シャンルウルファ事務所 宮越)
※この事業はジャパン・プラットフォームの助成と、皆さまからのご寄付で実施しています。