スリランカ – 特定非営利活動法人パルシック(PARCIC) https://www.parcic.org 東ティモール、スリランカ、マレーシア、パレスチナ、トルコ・レバノン(シリア難民支援)でフェアトレードを含めた「民際協力」活動を展開するNGO。プロジェクト紹介、フェアトレード商品販売など。 Wed, 12 Oct 2022 07:57:00 +0000 ja hourly 1 https://wordpress.org/?v=6.4.1 スリランカ経済危機 北部の漁村に緊急食料・生活用品を配付しました https://www.parcic.org/report/srilanka/srilanka_humanitarianaid/21323/ Wed, 12 Oct 2022 07:56:08 +0000 https://www.parcic.org/?p=21323 2022年8月末までに皆さまからいただいたご寄付を、現地に暮らす元スタッフのアジットさんに託し、2022年9月24日にムライティブ県タンニムリップ村の全世帯(120世帯)と、スリランカ北部の他の村で暮らすサリー事業に参加する女性たち(15世帯)の合計135世帯に、米や米粉、小麦粉、ココナッツオイルなどの約1週間分の食料と石鹸や生理用品などの生活用品を届けました。

配付した食料と生活用品(1週間分の食料と石鹸などの生活用品)

支援物資の決定から配布まで

皆さまからいただいたご寄付を最大限生かし、できるだけ多くの物資を届けられるよう、経済危機で物価が変動する中での商品選びには幾分の時間を要しました。タンニムリップ村のサリー・グループのリーダーのランシラさんから、村の人たちが希望する商品のリストを受け取り、アジットさんがそれらの商品の価格を複数の店舗で調べ、注意深く価格と予算とにらめっこしながら支援物資とその数量を決めていきました。 価格調査は慎重に時間をかけて行いましたが、いったん購入先の店舗と商品を決めてしまえば、そこからは発注、配付へと一気に進みました。

配付日の様子

支援物資の配付は、タンニムリップ村のコモンホールで行われ、ランシラさんとアジットさんが、受け取りにきた各世帯の代表者の名前を確認し、一世帯ずつ物資を渡していきました。

支援物資を受け取りに来たタンニムリップ村の人びと

一人一人確認をするランシラさん(右)と受け取りの署名をする村の女性(左)

緊急救援物資を受け取りに来た人たちは皆さん大喜びで、「このような支援はこれまでなかった。とてもうれしく大変ありがたい。支援をしてくださった日本の皆さんに心から感謝している」と口々に話していた、とのことです。

母親に連れられて支援物資を受け取りに来た子どもたち

経済危機による物価の高騰は今も続き、今回の配付で村の皆さんの暮らしが解決するわけではありませんが、「当面の食料を心配しなくてもいい」、「子どもたちに食べさせられるものがある」ということは、一時のことであっても、人びとにとって大きな助けとなったようです。

支援物資を家へと運ぶ家族

配付を担当したアジットさんからは、窮乏の中に暮らす村の人たちのこの日の喜びを直に感じ、「日本の皆さんの支援に心から感謝申し上げたい、経済危機に苦しむスリランカの人たちにこのような温かい支援をありがとうございました」とのメッセージを受け取りました。

物資の手配、調達を担当した元スタッフのアジットさん(右)と、当日の配付を取り仕切ったランシラさん(中央)、物資を受け取りに来た村の女性(左)

今回は急な呼びかけにもかかわらず、スリランカ北部の漁村に暮らす人びとにご支援をいただきありがとうございました。

(スリランカ事業担当 西森光子)

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スリランカ経済危機 支援物資の配付準備と7月以降の動き https://www.parcic.org/report/srilanka/srilanka_humanitarianaid/21196/ Wed, 14 Sep 2022 06:09:12 +0000 https://www.parcic.org/?p=21196 202277日、オンラインイベント「スリランカ経済危機:そこに暮らす人びとの今」を開催しました。そこで皆さんにスリランカの現状を知っていただくとともに、緊急支援のためのご寄付を募りました。その後の緊急支援の進捗とスリランカ国内の状況について、ご報告します。

緊急支援の進捗について

スリランカの現状を心配されている多くの方からご支援をいただき、スリランカへの寄付は目標額の60万円を超えることができました。ご支援くださった皆様、本当にありがとうございました。

現在、ジャフナ事務所の元スタッフのアジットさんが、経済危機の影響を受けて困窮するスリランカ北部ムライティブ県タンニムリップ村の家族に食料や生活用品など必要な物資を届ける準備を進めています。配付する物資のリストを作成し、数軒のお店から見積りをとっていますが、小麦粉などは在庫が減り価格がさらに上がっています。予算内で、困窮する人びとが本当に必要とする物資を配付できるよう、タンニムリップ村の人とも協議しながら進めています。

物資や燃油の調達などで問題が起きなければ、9月中には配付を終える予定です。配付完了後にまたご報告します。

スリランカの政治状況

7月7日の時点では、今後何が起こるのか予測するのは大変難しい状況で「ゴタバヤ・ラージャパクサ大統領(7月7日時点)が退任し大きく政治体制が変わらない限り状況は好転しないし、残念ながらゴタバヤ大統領がすぐに退任することはないのではないか」と、アジットさんはオンラインイベントで話していました。しかし、翌々日の7月9日からコロンボだけではなく地方からの市民がコロンボに集まって大規模なデモとなり、その結果7月15日にゴタバヤ大統領が退任となりました。その後、国会議員による大統領選出投票が行われ、同月21日にUNPのリーダーで首相兼大統領代行を務めていたラニル・ウィクラマシンハ氏が大統領に就任しました。

ラニル大統領は経済政策についての経験が豊富であり、また欧米諸国ともうまく関係を築いてきた政治家です。ラニル氏が大統領就任前から進めていたIMF(国際通貨基金)との交渉では、9月1日に最終合意ではないものの、4年間のプログラムで29億ドルの金融支援を受けることに決まりました[1]。今後、スリランカはIMFからの融資を受け経済の立て直し目指して、二国間の債務の交渉、国内税制の改革、歳入の拡大など、難しい課題に取り組むことになります。また、米国は主に稲作に必要な化学肥料や農業資材のための大規模な農業支援を行うと発表しています[2]。ただし、今後の政治的な安定が続くかは見通せない状況です。

さらに、大統領は変わりましたが、大統領含め新しい内閣のメンバーなどはこれまでと同じ顔ぶれで、政治体制が刷新されたとは言い難い状況です。

人びとの生活については、前述のとおり、物価高は相変わらずで生活が苦しい状況が続いています。国連は、8月5日時点でスリランカでは570万人が人道支援を必要としており、人口の22%にあたる490万人は食料を安定的に得られない状況に陥っていると発表しています[3]。停電もひきつづき度々起きています。一方、ガソリンなどの燃料に関しては販売管理が改善され、真夜中までガソリンスタンドに並んで結局購入できなかったということはなくなってきたようです。

今後ともスリランカの動きを追っていきます。

[1]  https://www.jetro.go.jp/biznews/2022/09/14a05216a8b592c7.html
[2]  https://www.dailymirror.lk/latest_news/USAID-to-provide-US-20-Mn-as-humanitarian-aid/342-244671
[3]  https://reliefweb.int/report/sri-lanka/sri-lanka-multi-dimensional-crisis-situation-report-no-2-5-august-2022

関連動画

(スリランカ事業担当 西森光子 高橋知里)

 

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【開催報告】スリランカ経済危機:そこに暮らす人びとの今(後編) https://www.parcic.org/report/srilanka/20939/ Thu, 14 Jul 2022 09:54:35 +0000 https://www.parcic.org/?p=20939 2022年7月7日夜に、「スリランカ経済危機:そこに暮らす人びとの今」と題したオンラインイベントを開催し、経済危機下で暮らす人々の様子を知り、日本から私たちにできることは何かを参加者の皆さんと一緒に考えました。

イベントは1時間と短い時間でしたが、大変凝縮された内容でしたので、このイベントの様子を2回に分けて報告します。前編のコロンボに暮らすコンサルタントの田村智子さんのお話についてはこちらをご覧ください。後編は、スリランカ北部の町ジャフナ・タウンに暮らすパルシックの元スタッフのアジットさんから、パルシックの事業地の漁村、とくに内陸部の漁村で起きていることについてお話いただいた部分を報告します。

アジットさんには、次の4点についてお話していただきました。

1.現在の状況の概況
2.パルシックが長らく活動をしてきた、スリランカ北部の漁村の状況
3.漁村の中でも特に大変な状況にある、ムライティブ県タンニムリップ村の状況
4. 今後の見通し

アジットさんの報告については、こちらの動画でもご覧いただけます。

1.現在の状況の概況について

食料の価格は急上昇し、水や電気、医療、新聞などの日々の生活に欠かせない必需品が日増しに不足していっています。日雇い労働者やシングルマザー世帯、農家や漁師を含む低~中所得者のような社会の脆弱層が最も影響を受けており、食費や医療費を支払うことができなくなっています。

この状況はすべての世帯に悪影響を与えており、必需品以外の支出ができなくなったことで親は悩み困惑しています。というのも、子どもたちにとっては、国の経済状況が悪化しているということを理解することは難しくても、親たちの行動の変化を感じ取って不安を感じています。

また、燃料不足のために、多くの子どもたちは学校に行けなくなっています。停電の結果、電気やインターネットが使えず、家でも勉強ができません。村の学校の校長先生たちは、子どもたちの栄養状況を懸念しています。食事をとらずに学校に来ることで、子どもたちは集中できず、めまいで倒れてしまう子もいます。

2.スリランカ北部の漁村の状況

漁村では、1ヶ月以上の燃料供給を受けられておらず、漁業に出られておらず、他の生計手段を持たない漁民世帯は不安に陥っています。この経済危機の前は沿岸部の漁民は平均して月額4万-5万ルピーの収入を得ていました。

しかし、今彼らは全く収入がなく、貯金も底をつき、大変な苦難に直面しています。 漁業はスリランカの重要な産業の一つで、多くの人がこの産業に従事してます。漁船は一日に20-50リットルの燃料を必要としますが、この経済危機によって、漁民は燃料のケロシンを得るために毎日何時間も並んで待たなければいけません。

そして今、燃料不足により仲買人が魚を買い付けに来ることができなくなっており、魚の価格も高騰しています。1キロ400-600ルピーだったのが、今は2,000-2,500ルピーです。この価格では消費者は買えませんし、漁民自身も売ることができません。そして、長時間にわたる停電により製氷機が使えず、魚の鮮度を保つための氷も得ることができなくなりました。燃料と氷不足のため、市場に運ぶこともできません。

その結果、多くの漁民世帯は食事の回数を1-2回減らし、それもごはんと簡単なスープや玉ねぎとチリだけなど、質素な食事をとっているという悲しい状況です。ただ、これは漁村だけではなくスリランカ中で起きていることです。

3.内陸部の漁村タンニムリップ村の状況

タンニムリップ村は、スリランカ北部のムライティブ県に位置し、県内の中心の町ムライティブタウンから35km内陸に入ったところにあります。町から離れた辺境の村で、不便なところです。現在この村には120世帯が暮らし、村人の主な収入源は日雇い仕事です。

この村はパルシックのリサイクルサリープロジェクトの事業地の一つでした。2020年にはゆうちょ財団の助成金をいただいて、追加の縫製研修を実施しました。20名の女性たちに研修を行い、女性たちの希望に応じて女性用の服や子供たちの制服などを作る研修を実施しました。

その結果、女性たちは希望していた縫製技術を身に着けることができました。 研修後に村の人たちから縫製仕事のオーダーを受けて、月額1.5万-2万ルピーの収入を得られた女性もいます。しかし、この経済危機後は、縫製するための材料を買えなくなりました。研修に参加した女性たちによると、この村では現時点で、「だれも収入を得られておらず、日々の生活必需品を得るためのお金がないのだ」と言います。こんな状況で一体誰が衣類にお金をかけられるでしょう。

この村では、季節労働として6か月間は淡水漁業をし、残りの6か月間はピーナッツや田んぼでの農業労働者として働く人が多くいます。淡水漁業をしている池では、この村の人たちだけのものではなく、近隣の村の漁民も漁をします。定期的に稚魚の放流が行なわれ、それを分け合って漁業をしてきましたが、経済危機になって以降は燃料不足により政府機関による稚魚の放流が行われなくなり、池に十分な量の魚がいなくなってしまいました。そのため、男性も女性も子どもたちを食べさせるための収入を得るために必死です。

村の人によると、これまではムライティブタウンから村へのバスが一日に4便あったそうですが、燃料不足で今年の4月からバスの運行が止まってしまいました。そのため、村の人たちは町に職探しや日々の買い物に行くことも難しくなりました。

たとえ車やバイクを持っていたとしても、今は燃料不足でそれらも使えません。村の人によると、町に行くのに2リットルのガソリンが必要ですが、今は2リットルのガソリンを得るのに1,000ルピーかかります。2リットルの燃料を得るためにはガソリンスタンドで9時間なら離れければなりません。しかも、9時間並んだとしても、品切れで必ず買える保証はありません。もしこの村の人が何か緊急事態になったとしても、病院に行く手段がありませんし、救急車を呼んだとしても燃料不足により来ることができません。

以前は5軒の日用品店がありましたが、物価高騰のため今は1軒だけ営業しています。この1軒のお店で売られている物の価格は町の価格よりも3-4倍高くなっています。以前複数のお店があったときには価格競争があり、今よりも安価でした。また、以前はつけで買うことができましたが、今は現金がないと買えなくなりました。

このように、この村は大変深刻な状況に置かれています。収入がないために、人びとは食事の回数を減らし、貴金属を質に入れて、どうにか生活している状況です。一日に一食しか食べられなくなった人びともいます。このことは、子どもたちの成長に影響を及ぼす大変差し迫った問題です。私たちは既に26年間に及ぶ内戦で多大な影響を受けましたが、今再び、この深刻な経済危機により教育、栄養、社会生活において次の世代にも悪影響を与えようとしています。

繰り返しますが、この村は私たちが事業を実施し、よく知っている村なのでご紹介しました。しかし、この村はスリランカ中で大変な状況にある村の1つに過ぎません。

 4.この先の見通しについて

ニュースでは、子どもを抱えたシングルマザー世帯の心中事件について伝えられています。この物価上昇で子どもたちを食べさせ、教育や医療を受けさせられない状況への絶望によるものだと思います。また、別のニュースでは失業者が増えていることや十分な収入を得られない人が増えていることを伝えています。

その結果、強盗など治安の悪化が起きています。そして、今は特別な技術のある医師だけではなく、あらゆる人たちがスリランカを出て、ヨーロッパやカナダ、オーストラリアに移住しようとしています。このことが将来に深刻な影響をもたらすでしょう。

正直なところ、これから何がおきるのか、どうなっていくのか、誰にも分かりませんが、この先数年間は良くならないように思えます。そして、この経済危機がもたらすあらゆることはスリランカの人びとの日々の生活に悪影響を与え続けるでしょう。

(スリランカ事業担当 西森光子)

ご寄付のお願い

パルシックでは、長く事業を実施してきたスリランカ北部の漁村のうち、サリーリサイクル事業に参加した女性たちが暮らすムライティブ県タンニムリップ村などで、困窮する120世帯を対象に必要な物資(食料、生活用品)の配付を行います。

120世帯に必要物資を届けるのに、60万円が必要です。ぜひ皆様のご寄付をお願いします。

寄付キャンペーンページへ

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【開催報告】スリランカ経済危機:そこに暮らす人びとの今(前編) https://www.parcic.org/report/srilanka/20932/ Thu, 14 Jul 2022 09:54:06 +0000 https://www.parcic.org/?p=20932 2022年7月7日夜に、「スリランカ経済危機:そこに暮らす人びとの今」と題したオンラインイベントを開催し、経済危機下で暮らす人びとの様子を知り、日本から私たちにできることは何かを参加者の皆さんと一緒に考えました。

パルシックのスリランカでの活動を支えてきてくださっている現地に暮らすお二人、コンサルタントの田村智子さんと元パルシック北部事務所代表のアジットさんに登壇していただきました。イベントは1時間と短い時間でしたが、大変凝縮された内容でしたので、このイベントの様子を2回に分けて報告します。

1回目は、スリランカ在住歴30年で、コロンボに暮らすコンサルタントの田村智子さんのお話について報告します。生活者の視点で、スリランカで起きていることについて、次の流れでお話していただきました。

1. 2020年初の新型コロナ感染拡大から、2022年前半にかけてスリランカで起きたこと
2. 直近の2022年6月、7月に起きていること
3. なぜこのようなことになったのか?
4. なぜ市民が怒っているのか?

1.2020年初の新型コロナウイルスの感染拡大から、2022年前半にかけてスリランカで起きたこと

2020年は3月から2か月間コロナによる厳しいロックダウンが行われ、感染者数が減って経済活動を再開したものの経済回復の動きは鈍く、感染状況によって断続的な外出禁止令が出ていました。

2021年に入ると、4月に突然の大統領令によって化学肥料と農薬の輸入が禁止されました。化学肥料や農薬が突然使えなくなったため、耕作を放棄する稲作農家も出てコメ不足が心配されました。また同年12月には、外貨準備高不足が明らかになり始め、外貨の強制的なスリランカ・ルピーへの換金も行われるようになりました。

2022年1月からは観光による外貨獲得のため、外国からの観光客に対して隔離を求めることをやめました。観光客を見かけるようになったものの、この頃から計画停電が始まりました。3月には計画停電が13時間に及び、さらにプロパンガス、灯油、軽油・ガソリンを購入するために行列に並ばなくてはいけなくなりました。

4月にはゴールフェイス(コロンボ中心部にある海沿いの広場)で市民や学生による改革を求めるデモが始まりました。この頃にスリランカ中央銀行総裁が交代し、新総裁は経済政策を大きく変更するとともに、国民に対して財政がどんなに危ない状況かを明らかにするようになりました。停電は続き、医薬品の不足も問題になってきました。

5月には、社会混乱の責任を取りマヒンダ首相(ゴタバヤ大統領の兄)が退任し、ラニル氏(UNP党首)が首相に就任しました。大臣も辞職が相次ぎましたが、ついに債務不履行に陥りました。軽油やガソリンの不足がさらに深刻化し、工業や農業の生産活動ができない状況になり、物価高騰が起こりました。

2. 直近の2022年6月、7月に起きていること

2022年6月、生活のあらゆる面に支障が出てきました。ガスの供給が完全に止まり、薪で調理を始める人もでてきました(地方では薪で料理をしていますが、コロンボではガスや電気を使っているのが普通です)。バスの運行が止まり、学校も休校に、郵便局も閉まり、オンライン販売やUberEatsも使えなくなりました。

7月に入っても、燃料不足がさらに深刻化し、社会生活や教育への影響が続いています。出勤、登校、外出ができない状況で、市民のイライラが高まり、ガソリンスタンドの行列で喧嘩も起きています。コロナ禍から続く休校のため、保護者は子どもの教育に不安を高めています。

3.なぜこのようなことになったのか?

新型コロナによる観光業への打撃が今回の経済危機の要因と言われることがありますが、長く続いた政策の誤りが主因と考えられます。具体的には税制、債務超過、農業政策、利益を生んでいない中国からの借款で造ったインフラ(空港、港、ロータスタワーなど)、遅きに失したIMFとの交渉、長年の国営企業の赤字の垂れ流しです。

2010年くらいから対外債務残高が急激に増えている

どこから借りていたのか;分析方法によって違いはあるものの、二国間の債務のように相手国との交渉によって返済繰り延べが難しい国債の割合が大きい

4.なぜ市民が怒っているのか?

国の財政逼迫が深刻化しているにも関わらず、経済危機を招いた政治家たちが非を認めることなく、責任をとろうとしないためです。さらに、この経済危機を活かしてすら利益を得ている政治家がいるという噂もあります。この状況で大変な辛抱を強いられている市民が政府への不満を爆発させる可能性があります。

ただし、今回の経済危機は紛争や災害、テロなどによるものではなく、選挙で選ばれた政治家によるミスマネジメントによるものです。つまり、選挙で選んだ国民にも責任があるとも言われ、市民にとっても辛いところとなっています。

しかし、国としての財政立て直しが問題であり、国民一人ひとりで解決できるものではありません。このままでは、一番のしわよせは低所得層や脆弱層にいきます。食事、保健、教育といった基本的なニーズが満たせ、働くことができ、安心して暮らせるようになる政策、支援が必要です。

開催報告後編では、元パルシック北部事務所代表のアジットさんからの報告で、経済危機の影響を大きく受けている北部の人びとの状況をお伝えします。

(スリランカ事業担当 西森光子)

ご寄付のお願い

パルシックでは、長く事業を実施してきたスリランカ北部の漁村のうち、サリーリサイクル事業に参加した女性たちが暮らすムライティブ県タンニムリップ村などで、困窮する120世帯を対象に必要な物資(食料、生活用品)の配付を行います。

120世帯に必要物資を届けるのに、60万円が必要です。ぜひ皆様のご寄付をお願いします。

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スリランカ独立以来の経済危機と人びとの暮らし https://www.parcic.org/report/srilanka/20730/ Tue, 14 Jun 2022 05:12:47 +0000 https://www.parcic.org/?p=20730 2009年5月の内戦終結後、農業や工業の成長を後回しにし、観光産業に依存してきたスリランカは、現在1948年の独立以来最大の経済危機に直面しています。外貨不足により2021年から米や粉ミルク、砂糖、セメントなどの価格が高騰、さらに2022年に入ってからは燃料が輸入できず計画停電が人びとの生活に影響を与えています。また、輸入に頼っている医薬品の不足も同様に深刻です。2019年4月のイースター連続爆破事件、その後に続く新型コロナウイルスの世界的大流行、化学肥料・農薬の輸入禁止、そしてロシアによるウクライナ侵攻によって経済悪化は深刻化していきました。

この状況のなか、適切な手を打てない政府に対して、今年の3月から市民による抗議運動が始まりました。コロンボの中産階級の若者を中心に、ゴタバヤ・ラジャパクサ大統領、マヒンダ・ラジャパクサ首相の退任、また政治家による数々の汚職に対する検証と責任追及を求めて平和的な抗議をコロンボの中心地にあるゴールフェース公園で続けています。5月9日に、マヒンダ首相の辞任発表を受けて政権支持者が、抗議運動を行っている市民を攻撃したことに端を発し、各地で混乱が生じ死傷者が出ましたが、11日には市民による平和的な抗議運動が再開しています。ただし、現政権のトップを退任させるだけでは事態を打開することはできません。過去4回の首相経験のあるラニル・ウィクラマシンハ氏が新首相に就任しましたが、今後も困難な状況が続くことが予想されます。

即座の解決の筋道が見えない中、深刻化する経済危機はスリランカの人びとの暮らしを直撃しています。パルシックが長年事業を実施してきたスリランカ北部の漁村でも、人びとは物価高騰、燃料不足の影響を受け、苦しい生活を強いられています。ジャフナ事務所の元事務所代表のアジット氏に、事業地の様子を聞きました。

アジット氏による現地の状況の報告

  • 小麦、米、パン、粉ミルク(ミルクティ用* )、調理用のガス、ガスの代わりの薪など、あらゆるものの価格が高騰し、これまでのように家で調理するのが難しい。*スリランカでは朝夕に砂糖のたっぷり入ったミルクティーを飲む
  • 燃料不足が続き、ガソリンスタンドには長蛇の列ができている。先日、夜にバイクの給油にガソリンスタンドに行ったら、既に50人の人が並んでいて2時間以上待ったが、深夜12時にガソリンは無くなり、給油できないまま帰宅することになった。自分の後ろには更に60人の人が待っており、ガソリンを得られないまま帰途についた。
  • 政府が一部手当しているものの、漁に出るのに必要な船外機用の燃料が全く足りておらず、漁民は十分に漁ができず、漁獲が減っている。その結果、漁民の収入が減ると同時に、市場での魚の価格も高騰している。
  •  淡水漁業をしているムライティブ県の内陸の村では、燃料がないために漁に出られず収入が得られないだけでなく、燃料不足でバスの運行も止まってしまって町に買い出しにも行けず困っている。その村では野菜も穀物もあらゆる食料が不足していて、多くの世帯が一日に1回しか食事を口にできていない。

昼間のガソリンスタンド前には三輪車や商業車による長蛇の列

夜にガソリンスタンドに並ぶ人びと

こうした状況を受け、アジット氏と連携し、必要な食料・生活用品を小規模ながら提供する準備を始めています。

ぜひ皆様からご寄付・ご支援をお寄せください。

(スリランカ事業担当 高橋知里、西森光子)

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小規模有機栽培茶農家グループ・エクサのメンバー紹介 #4 https://www.parcic.org/report/srilanka/srilanka_deniyaya/18668/ Mon, 08 Feb 2021 06:59:33 +0000 https://www.parcic.org/?p=18668 「エクサ(エクサ・カーボニッカ・テー・ワガーカラワンゲ・サンガマヤ(シンハラ語で「有機茶栽培農家協働グループ」の意)」は、2011年にデニヤヤ周辺の2つの村の25世帯の農家で紅茶の有機転換に挑戦し始めました。2020年現在は5つの村に広がり、約80世帯のメンバーがいます。4回目は、キリウェラガマ村のウパセーナさんをご紹介します。

ウパセーナさんはエクサの活動開始当初からのメンバーの一人です。4人家族で、奥さん、娘さん、息子さんと一緒に住んでいます。茶畑での仕事は奥さんと2人で行っています。紅茶が一家の主な収入源ではありますが、ウパセーナさんはキトゥル・パニ(クジャク椰子から採れる糖蜜)の採取、蜜作りの名手としてデニヤヤで有名です。

また、手先が器用で、森からとってきたラタンやココナッツの葉を使って籠を編んだり、ココナッツの殻からスプーンを作ったり、などを趣味としています。売り物ではなく、作ること自体を楽しんでいて、作ったものは自宅で使ったり、人にプレゼントしたりしているそうです。

子どもは2人とも学校に通っていますが、昨年から新型コロナウィルスの感染拡大のため、学校がほとんど休校になって大変だそうです。ウパセーナさんの子ども時代のことを聞いたところ、毎朝学校に1時間半ほど遅刻していたそうです。なぜかというと、家から学校への道のりの間に、川でひと泳ぎしたり、道端の商店でお菓子を食べたり、その辺りになっている果物をもいで食べたり、寄り道三昧をしていました。普通に歩けば1時間で学校に着くところを、たっぷり2時間半かけていたそうです。もちろん学校の先生には怒られていましたが、今の子どもたちのように学校が終わったら毎日塾に通う忙しい日々ではなく、とても楽しい子供時代だったと教えてくれました。ただし、子供時代が一番幸せな時でしたか?と聞くと、毎日が一番幸せな日だ、と答えてくれました。

ウパセーナさん(左)と奥さん(中央)と高校生の娘さん(右)

有機茶葉の出荷をする際に、茶葉の重さを回収担当者と一緒に確認しているウパセーナさん

番外編:キトゥル・パニ作り

ウパセーナさんのキトゥル・パニ作りがマータラ県(デニヤヤのある県)内の情報発信をしているフェースブックチャンネルに取り上げられました。リンク先のビデオでは、30mの高さのキトゥルの木に登って花の蜜を集める様子や、蜜を煮詰めてパニ(糖蜜)にする様子が紹介されています。インタビューでは、ウパセーナさんがキトゥル・パニ作りに20年の経験があることや、煮詰める工程は奥さんが手伝ってくれて家族で作業をできるのが本当に楽しい、というような話をしています。

動画はこちら

(スリランカ事業担当 高橋知里)

エクサが生産した紅茶は、オンラインショップParMarcheにてお買い求めいただけます。
オンラインショップParMarche

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小規模有機栽培茶農家グループ・エクサのメンバー紹介 #3 https://www.parcic.org/report/srilanka/srilanka_deniyaya/18277/ Tue, 08 Dec 2020 03:32:32 +0000 https://www.parcic.org/?p=18277 「エクサ(エクサ・カーボニッカ・テー・ワガーカラワンゲ・サンガマヤ(シンハラ語で「有機茶栽培農家協働グループ」の意)」は、2011年にデニヤヤ周辺の2つの村の25世帯の農家で紅茶の有機転換に挑戦し始めました。2020年現在は5つの村に広がり、約80世帯のメンバーがいます。3回目は、バタヤヤ村のスマワティさんをご紹介します。

スマワティさんは2013年からエクサに参加して有機転換を始めました。40年ほど前に彼女自身が茶栽培を開始した0.2ヘクタールの有機茶畑は、家のすぐ隣にあります。結構な傾斜地にありますが、スマワティさんはいつも身軽に茶畑を案内してくれます。茶畑での作業は彼女と一緒に住んでいる娘さんが主に行っています。2人のお孫さんも一緒に住んでいて、私が現地駐在していた頃はまだ赤ちゃんでしたが、ここ数年短期出張で訪問する時には、いつもおばあちゃん(スマワティさん)と一緒に畑の案内をしてくれます。

「一芯二葉(若い芽とその下の柔らかい2枚の葉だけ摘む)」で摘んだ茶葉

スマワティさんが持っているのは、美味しい紅茶を作るために必要な茶摘みの基本「一芯二葉(若い芽とその下の柔らかい2枚の葉)」で摘んだ茶葉。

彼女の茶畑には、エクサの他のメンバーの畑にはあまりないカルダモンがあります。カルダモンというのはショウガ科の多年草で、種がスパイスとして使われます。スリランカでは毎日の食事(カレー)に欠かせないスパイスです。エクサの活動地シンハラージャ熱帯雨林周辺は、カルダモンの生産に適していて、以前はカルダモンのプランテーション(大規模単一圃場)を作るために森林が伐採されることもありました。もちろんスマワティさんのカルダモンはプランテーションではなく、茶と他の果樹やスパイスと一緒に有機茶畑に生えています。先日開催した紅茶のオンラインイベント「季節の紅茶を楽しもう!(秋冬編)」では参加してくださった方にルフナ紅茶とスパイスサンプルを送りましたが、そのスパイスサンプルで送ったカルダモンはスマワティさんの茶畑から採れたものです。とても品質が良いので、皆さんにも味わっていただきたいと思っています。

スマワティさんの茶畑のカルダモンの花

スマワティさんの茶畑のカルダモンの花

(スリランカ事業担当 高橋知里)

エクサが生産した紅茶は、オンラインショップParMarcheにてお買い求めいただけます。
オンラインショップParMarche

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小規模有機栽培茶農家グループ・エクサのメンバー紹介#2 https://www.parcic.org/report/srilanka/srilanka_deniyaya/18000/ Wed, 04 Nov 2020 05:47:01 +0000 https://www.parcic.org/?p=18000 「エクサ(エクサ・カーボニッカ・テー・ワガーカラワンゲ・サンガマヤ(シンハラ語で「有機茶栽培農家協働グループ」の意)」は、2011年にデニヤヤ周辺の2つの村の25世帯の農家で紅茶の有機転換に挑戦し始めました。2020年現在は5つの村に広がり、約80世帯のメンバーがいます。今回はメンバー紹介第2回目、スマナパーラさんをご紹介します。

スマナパーラさん

スマナパーラさんの家は北パッレガマ村にあり、2017年にスリランカ南部を襲った豪雨による洪水で大きな被害を受けました。パルシックは当時、緊急支援事業として支援物資の配布や家屋修復を同地域で行い、スマナパーラさんの家の修復も支援しました。その緊急支援事業を通して、「エクサ」の活動に興味を持ち、2019年1月に「エクサ」に参加し同年7月から有機転換中の茶葉の出荷を開始しました。

茶畑は家から3kmほど離れたところにあり、広さは0.1ヘクタールほどです。20年くらい前に奥さんのお母さんが開墾して茶栽培を始めた畑です。スマナパーラさん自身はデニヤヤから車で30分ほどの地域で、「エクサ」の生茶葉を有機紅茶に加工しているニルミニ有機紅茶工場があるモロワカという地域の出身です。15年前に結婚して、結婚後に奥さんの家のある北パッレガマ村に移住し、茶栽培を継いでいます。結婚前はコロンボのベーカリーでパンを作っていたそうです。

以前から「エクサ」の活動の噂は耳にしていたのですが、洪水支援の時により詳しく話を聞いて有機転換しようと決めました。もともと除草剤は使っていませんでしたが、化学肥料の使用による自分たちの健康被害と環境保護への関心が決め手だったそうです。有機転換することによって、短期的には収穫量そして収入も減ることは理解したうえで、続けていきたいと思っていて、周辺の親戚にも有機転換するように誘っているそうです。

スマナパーラさん、並んでいるバケツに入っているのは「エクサ」のコンポストセンターから買ったコンポストで、この後圃場に施肥します

北パッレガマ村は「エクサ」のメンバーの大半がいるキリウェラガマ村、キリウェラドラ村、バタヤヤ村に比べると標高が低く、田んぼが広がっています。

デニヤヤ小規模紅茶農家支援事業のページ

「エクサ」のコンポストセンターとは

デニヤヤで栽培しているフェアトレードの紅茶を見る(オンラインショップParMarcheへ)

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小規模有機栽培茶農家グループ・エクサのメンバー紹介#1 https://www.parcic.org/report/srilanka/srilanka_deniyaya/17839/ Tue, 06 Oct 2020 09:51:51 +0000 https://www.parcic.org/?p=17839 「エクサ(エクサ・カーボニッカ・テー・ワガーカラワンゲ・サンガマヤ(シンハラ語で「有機茶栽培農家協働グループ」の意味)」は、2011年にデニヤヤ周辺の2つの村の25世帯の農家で紅茶の有機転換に挑戦し始めました。2020年現在は5つの村に広がり、約80世帯のメンバーがいます。これから、メンバーを少しずつ紹介していきます!

マドゥワンティさんは、北パッレガマ村に住んでいて、2019年3月からエクサに参加して有機転換を開始しました。夫のプリヤンタさんと一緒に10年ほど前から茶栽培(化学肥料を用いて)を始めていました(マドゥワンティさんの両親も夫のプリヤンタさんの両親も、茶農家だったため茶畑での仕事を手伝ってきており、茶栽培の経験はもっと長いです)。化学肥料を使わないことで、農作業中の健康被害を抑えられること、マドゥワンティさんたちには15才、7才、4才の3人の子どもがいて、子どもたちの健康のためにもよい、と考えて有機転換に踏み切りました。また、栽培したお茶が日本に届けられるということにも興味を持ったそうです(*)。所有する茶畑の30%ほどの面積から有機栽培に転換し始めました。将来的には全面積を有機茶畑にしたいと考えています。

(*)茶の場合JAS有機認証を得るためには、有機に転換を始めてから3年間かかります。したがって、マドゥワンティさんのお茶がパルシックの有機紅茶としては日本に輸出されるには、もう少しかかります。

マドゥワンティさんの有機転換中の圃場。茶摘みの時の目線から。

栽培記録のチェックを受けているマドゥワンティさん(左)とチェックしている現地スタッフのリーラ(真ん中)。農家にとって、栽培記録をきちんとつけ続けることが、有機栽培で一番大変な作業かもしれません。

デニヤヤ小規模紅茶農家支援事業のページ

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新型コロナウィルス スリランカの状況#2 外出禁止期間を振り返って https://www.parcic.org/report/srilanka/17381/ Tue, 04 Aug 2020 08:41:32 +0000 https://www.parcic.org/?p=17381 新型コロナウィルス スリランカの状況(6月24日)はこちら

スリランカでは7月末までに感染者数が2800名まで増えていますが、治療を受け回復済みの人も多く、死亡者数は6月末の11名から増えていません。6月中旬以降は海外へ出稼ぎに行っていた人たちが感染していることが多いなど、ほとんどの場合感染経路がわかっており、だんだんと人びとの生活が元通りに戻ってきています。パルシックが紅茶農家支援事業を実施しているスリランカ南部州のデニヤヤ現地オフィスでは、手洗いやハンドサニタイザー、マスクの使用をしっかりしていますが、デニヤヤタウンではマスクをしていない人もちらほらいるそうで、スタッフは「みんなリラックスしすぎなのでは?」と心配しています。

スリランカでは3月中旬から厳しい外出禁止令が敷かれ、デニヤヤでも1か月ほど不便な生活が続きました(コロンボなどの都市では2か月以上続いた地域もありました)。軍隊と警察が総動員され、厳しく禁止令を破る人を取り締まり、全国で6万人を超える人たちが逮捕されました。しかし、外出禁止だった時のことをデニヤヤの現地スタッフに振り返ってもらうと、もちろん不便ではあったけれどそんなに辛くはなかったと言います。50歳代の現地スタッフのサラットは1970年代から起こった人民解放戦線(JVP;共産主義・シンハラ民族主義政党)の武装蜂起による社会的混乱と外出禁止令のことをはっきりと覚えており、その時に比べると気は楽だったと教えてくれました。当時は長く続くと3か月も続けて外出禁止となることもあり、農業や漁業を含めたあらゆる経済活動が制限されました。さらにJVPとスリランカ政府の対立で混乱していた中、村人同士が疑心暗鬼になり「あの人はJVP(もしくはスリランカ政府)に敵対の意思があるようだ」と密告しあう魔女狩りのような状況で、その結果突然JVP(もしくは政府)に連れ去られたり、殺されたりという恐れが常にあったそうです。

一方、今回の新型コロナウィルスによる外出禁止期間中は、感染の不安はありつつも、自分たちが適切な対処をして感染拡大を防ぐというみんなで共通の目的を持っていたことから、精神的にはそんなに辛くなかったと言います。ちなみに食料はJVPの武装蜂起当時も今回の場合も、デニヤヤでは多くの人が自宅で野菜などを栽培していてそんなに困ることはなかったそうです。医薬品に関してはJVPの武装蜂起の当時は多くの家庭で伝統医療アーユルベーダの薬草などを自分たちで作って使っていたので、そんなに困らなかったそうです。しかし、現在は高血圧や糖尿病、ガンなどの治療には市販薬を使っており、入手が難しく困った人がいたそうです。2020年7月末現在は病院での診察が通常通りになり、薬の入手が普通にできるようになっています。

フィールドスタッフは、エクサ(有機紅茶栽培共同グループ)のメンバーの茶畑を視察に行く際もマスクをしています。

視察を受けるエクサのメンバーもマスクをして迎えます。

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