西岸地区での地域循環型農業事業 – 特定非営利活動法人パルシック(PARCIC) https://www.parcic.org 東ティモール、スリランカ、マレーシア、パレスチナ、トルコ・レバノン(シリア難民支援)でフェアトレードを含めた「民際協力」活動を展開するNGO。プロジェクト紹介、フェアトレード商品販売など。 Wed, 15 Nov 2023 09:29:57 +0000 ja hourly 1 https://wordpress.org/?v=6.4.1 10月7日以降のヨルダン川西岸地区の様子 https://www.parcic.org/report/palestine/palestine_west_bank/23525/ Tue, 14 Nov 2023 06:31:13 +0000 https://www.parcic.org/?p=23525 10月7日以降、ガザ地区だけではなく、パルシックが循環型社会作り事業を行っているヨルダン川西岸地区での状況も悪化しています。イスラエル軍による難民キャンプへの侵攻、C地区(地区については、こちらの記事を参照ください)では違法入植者のパレスチナ人への暴力による被害の拡大など、10月7日からの約1か月で2,500名以上の死傷者が報告されています(パレスチナ保健省による)。

循環型社会作り事業で農業専門家として活躍するサーデクは、パルシックや現地のNGOで技術指導をする傍ら、ヨルダン川西岸地区のセルフィート県マスハ村にある自身のオリーブ畑や果樹園で有機農業を実践しています。サーデクからヨルダン川西岸地区の人びとの生活、特に農業への影響について聞きました。

サーデクからの報告

セルフィート県を含む北部では10月中旬から11月にかけてグアバが収穫期を迎えます。しかし10月7日以降、イスラエル軍により西岸地区の至る所で道路が閉鎖されており、収穫した農産物を市場まで運ぶことができなくなっています。ナブルス県にある、一番近くの大きな市場にも輸送することができません。もちろん、より大きなラマッラ、ベツレヘムなどの西岸地区南部の市場にも出荷できなくなっています。その結果、通常であればグアバ1箱(約14kgくらい)を80シェケルで出荷できるところを、出荷先が限られている今、1箱5シェケルで販売せざるを得えません。1箱5シェケルでは出荷にかかる輸送費に相当するだけで、利益はもちろん生産にかかった費用も賄うことができません。

オリーブも収穫期を迎えています。しかし、分離壁(※)の近くにオリーブ畑を持つ農家は、オリーブを収穫することも難しくなっています。私の友人は分離壁の接したところにオリーブ畑を所有しています。彼はオリーブの収穫期が始まってから数日は収穫することができましたが、10月7日以降にオリーブ畑へ行ったところ、イスラエル軍に拘束されました。その時にはすぐに解放されましたが、イスラエル軍からオリーブ畑に近づかないように警告されたそうです。その後、自分の土地であるにも関わらずオリーブを収穫しに行くことができていません。西岸地区では収穫期を迎えているにも関わらず、オリーブ農家が自分の畑に近寄ることができないため合計約1500平方メートル(テニスコート約6面分)のオリーブ畑が放置されています。

道路や検問所の封鎖は、農業だけではなく日常生活にも大きな影響を与えています。先日、地域の公共交通機関の運転手などから最新情報を確認しながら、自宅から事業地ナブルス県の北アシーラに行きました。行きは問題なく事業地に着くことができましたが、帰路はイスラエル軍によって突然、至る所で道路が封鎖されたため、迂回する必要がありました。通常であれば1時間かからないほどの道のりですが、帰りは2時間以上かかりました。また、大学は基本的にはオンライン授業に切り替わっていますが、私の娘は医学生で、今はセルフィート県内にある病院で研修を受けています。家から病院までの間の道路をイスラエル軍が封鎖しており、通常よりかなり遠回りをしないと病院に通えません。都市間を結ぶ主要な道路が封鎖されており、日常的に通院が必要な腎臓透析患者が通院を控えざるを得なくなっていたり、急病やけが人が出たなどの緊急時に救急車を使って病院への搬送ができなくなったりと、命に係わる問題も出ています。

※2002年以降、イスラエルによってイスラエル市民とパレスチナ市民を分断する分離壁が建設されました。ヨルダン川西岸地区の領域に大きく食い込む形で、西岸地区とイスラエルおよびエルサレムの間に8メートルから12メートルにもなる壁が建設され、西岸に住むパレスチナ人は許可証がないと東エルサレムやイスラエル側に行くことができなくなりました。また、分離壁によってイスラエル側と西岸側に分断されてしまった村もあります。現在でも建設は続いています。

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イスラエルによる検問所や道路の封鎖、違法入植者による攻撃は、107日以降にはじまったわけではありません。ガザのように全域を大規模な空爆で破壊されることはありませんが、占領によって日々、人権が侵害され続けています。

ヨルダン川西岸地区は統治権によってA地区、B地区、C地区に分けられています。A地区、B地区はC地区に囲まれた小島のようになっています。普段からC地区を通り抜けるには検問所を通過する必要がありますが、10月7日以降はA地区にある村の入り口をイスラエル軍が封鎖するということが各地で起きています

堆肥試験用温室にて、右がサーデク、左はオリーブ農家。生ごみを利用して作った有機堆肥を、実際に作物を育てるのに使って品質の確認をしています

(パレスチナ事務所)

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生ごみからオリーブの実り https://www.parcic.org/report/palestine/palestine_west_bank/22941/ Wed, 12 Jul 2023 09:14:25 +0000 https://www.parcic.org/?p=22941 2019年から西岸地区ナブルス県北アシーラで実施している循環型社会形成事業では、ごみの分別・再利用を通したごみの減量、生ごみを利用した有機堆肥づくり、そしてその有機堆肥を使用した農産物の生産拡大などに取り組んでいます。生ごみを利用した有機堆肥は、2021年に入ってから本格的に生産を始め、この年、初めてオリーブ農家に生ごみ有機堆肥を使ってもらいました。

パレスチナのオリーブ栽培のサイクルは、11月頃から3月までの雨季の間に施肥、日当たりと風通しをよくするために枝を切りそろえる剪定などを行います。その後、4月から10月末頃は雨がほとんど降らない乾季になり、10月から11月の初めにかけて、乾季の終わりを告げる雨が2回降るとオリーブの実を収穫します。

2021年の雨季に初めて生ごみ有機堆肥を施肥したオリーブは、翌2022年、乾季の11月に収穫を迎え、多くのオリーブ農家から収穫量や品質の改善が見られたとの声を聞きました。

昨年11月、収穫したオリーブの実

オリーブ農家の声

アラ―さんは、これまで有機堆肥を使ったことはなく、今回が初めての有機堆肥での栽培でした。前年は豊作だったため、この年は裏作になると思っていましたが、有機堆肥のおかげか前年と同様に700kgほどのオリーブの実を収穫できそうだと言っていました。この量から採れるオリーブオイルはおよそ170kgです。オイルはすべて家族や親せきの家で使うそうです。アラ―さんは、「パレスチナではオリーブオイルを料理にたくさん使うので、170kgだけでは他の農家から買わないと足りないよ」と笑っていました。

アラ―さん(右)は、代々引き継いできた3.5ドノム(約0.35ヘクタール)の畑で15年ほどオリーブ栽培をしている中堅農家です

オリーブの収穫は家族総出で行います。子どもたちにとっては、お茶やコーヒー、ランチなどをみんなで楽しむピクニックのようなイベントでもあります。アラ―さんの息子が、現地スタッフにお茶をふるまってくれました

アフマドさんは施肥をする際に、自分のオリーブ畑の一部を、有機堆肥を使用した区画、家畜のフンを入れた区画、何も入れない区画に分けて、栽培比較をすることにしました。そして11月の収穫期、この3つの中で有機堆肥を使って栽培した区画が、実の大きさ、重さ、色のすべてにおいて、最も良く育ったことを確認しました。ただし、オリーブオイルの味については、オリーブの完熟度によって決まる(完熟が進むほど美味しくなります)ので、有機堆肥の効果はわからないそうです。「次のシーズンはもっと堆肥を買って、畑全体に使いたい」と言っていました。

アフマドさんは、全部で15ドノム(約1.5ヘクタール)のオリーブ畑を持っています。有機堆肥を使わなかった前年の収穫では1.7トンのオリーブオイルを作りましたが、2022年の収穫時のインタビューでは、2トンのオイルが作れるだろうと言っていました。自家消費だけではなく、販売もしています

オリーブ栽培への効果を実感した農家や噂を聞いた農家からの注文が増え、今期の施肥シーズンの生ごみ有機堆肥の売上は、昨年度の約1,900袋(約20kg/袋)から約3,000袋に増加しました。今期の収穫が今から楽しみです。

2023年7月初旬にアフマドさんのオリーブ畑を訪問しました。有機堆肥で栽培2期目のアフマドさんのオリーブの木の枝です。オリーブの実が枝の中心部分にたくさんなっていて、枝先も青々と伸びています。この伸びた枝先は、次の時期にもよい収穫が期待できる証です

出荷待ちの有機堆肥

イスラエル軍・違法入植者による暴力の事業への影響

昨年から西岸地区ではイスラエル軍やイスラエル違法入植者たち[1]による暴力が急増しています。先日(2023年7月)のジェニン県にある難民キャンプへのイスラエル軍による攻撃や、それに先立つ2月に起きたナブルス県での違法入植者による大規模な暴力は日本でもニュースになっていると思います。しかし報道されないところでも、収穫期に違法入植者がオリーブ畑に放火をしたり、オリーブの木を根こそぎ引き抜いたり、オリーブの実を勝手に収穫し盗むといった、暴力が続いています。事業地である北アシーラのオリーブ農家は幸い被害にあっていませんが、昨年2022年9月から11月の収穫期には、分かっているだけでも違法入植者によるオリーブ畑への破壊行為が21件、オリーブの実の盗難が18件あったと報告されています。

参考:Olive harvest 2022: Another display of state-sanctioned violence by Israeli settlers and soldiers against Palestinian farmers

イスラエル政府は今年に入って、西岸地区における入植地のさらなる拡大を発表しています。西岸地区に住むパレスチナ人にとって、いつまでこの厳しい状況が続くのでしょうか。終わりの見えない暴力を止め、人びとが安らかで尊厳ある暮らしをするためには、あきらめず、国際社会の政治的解決へのたゆまぬ働きかけと、そして何より私たちが関心を持ち続けることが大切だと思います。パルシックはこれからもパレスチナの人びとに寄り添い、活動を続けていきます。

[1]国際人道法のジュネーブ条約第4条において、占領国が占領する地域へ自国民を移住させること、もともとその地域に住んでいる人たちを追放することは、禁じられています。

(西岸事務所 高橋)

*この事業は地球環境基金の助成および皆さまからのご寄付により実施しています。

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パレスチナ:北アシーラ住民と豆の収穫会 https://www.parcic.org/report/palestine/palestine_west_bank/20546/ Wed, 11 May 2022 08:08:44 +0000 https://www.parcic.org/?p=20546 2019年からヨルダン川西岸地区のナブルス県北アシーラ町で、循環型社会のモデル形成事業を行っています。家庭でゴミを分別して集めた生ゴミを用いた堆肥を作っています。2020年には、生ゴミ堆肥が植物の発芽と成長に与える影響を、他の堆肥と比較して調べるため、地域内に温室を設置しました。

温室の設置についてのレポートはこちら。

これまで、キュウリやレタス、ブロッコリー、イチゴ、トマト、豆類など、10種類以上の作物を植えて堆肥の効果を調べてきました。栽培した野菜は北アシーラの八百屋で販売しています。中でも豆類は、比較的育てやすい野菜のひとつですが、成長時期は天候が涼しい期間に限られています。たくさんある品種のうち、現地でよく消費されるのが「スナップエンドウ」と「サヤエンドウ」です。パレスチナでは、エンドウ豆を使った料理がたくさんあります。エンドウ豆、にんじん、羊肉や牛肉を入れた「ウージー」という炊き込みご飯は、アラブの定番料理です。スープやサラダに、生のままスナックとしても食べられます。またエンドウ豆の藁は動物の飼料としても使用されます。

3月の春日和の1日、家庭でゴミの分別を行っている住民を温室に招待して、豆の収穫会を行いました。参加者はゴミ収集から堆肥の製造、そして堆肥の土と植物への利用という循環のプロセスを学び、生ゴミから作った堆肥を使って栽培した豆の収穫を行いました。参加者のなかには、北アシーラの八百屋で野菜や果物を購入して試したという人もいましたが、温室に来たのはみんな初めてでした。

農業専門家サーデクが、4種の堆肥を使ったハウス実験の取り組みを参加者に説明します

サーデクが、豆の摘み方のコツを共有。片方の手で豆のつるを持ち、もう一方の手で豆の鞘を引き抜きます

参加者たちは新鮮な豆をその場で食しながら、袋がいっぱいになるまで収穫しました。 自分たちが分別した生ゴミから作った堆肥で育てた豆の味は、甘くて、深みのある味わいで、一番おいしいと参加者全員が一致しました。また、北アシーラの八百屋で以前イチゴを購入したという参加者は「初めて生ゴミ堆肥を使って栽培したイチゴを食べたとき、化学肥料が存在しなかった子供の頃を思い出した、近所の人や子供たちと一緒に豆を食べることがとても楽しみ」と話してくれました。参加者の笑顔のおかげで、パルシックにとっても楽しい収穫会となりました!

豆の平均収穫量は20~25kg。今日は家族のためにきたという参加者が見せてくれました

大人だけでなく、子どもたちも収穫を楽しみました。

ほら、こんなに大きな豆がとれた

(ラマッラー事務所 ヤラ)

※この活動は「北アシーラにおける循環型社会のモデル形成」事業の一環です。地球環境基金の助成と皆さまからのご寄付により実施しています。

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パレスチナ:北アシーラ村での堆肥と植物の成長実験 https://www.parcic.org/report/palestine/palestine_west_bank/18655/ Wed, 03 Feb 2021 09:31:16 +0000 https://www.parcic.org/?p=18655 2019年から、ヨルダン川西岸地区の北アシーラ村で、ゴミ分別によって集めた生ごみを用いた有機堆肥作りを行っています。

2020年夏には、北アシーラ村に温室を設置しました。この新しい温室で、パレスチナの他の農業協同組合が作った堆肥と、北アシーラ産の堆肥を比較できるようになりました。堆肥は、土壌を改良するために使用されます。堆肥は、土が空気や栄養素、水分を保持するのを助けてくれるので、土壌の質が改善され、生産性が上がります。さらに、堆肥は硬い土壌を柔らかくしてくれるので、植物は簡単に根を広げることができます。

苗を植えるときは、土に堆肥を混ぜます。

「堆肥の種類によって植物の成長はどのように異なるのか?」、「植物を育てるのに理想的な堆肥と土壌の組み合わせは何だろうか?」、複数の堆肥を用いて植物を育てる実験は、こうした疑問への答えを導きます。

初日の苗。堆肥の力が効いてくるのを待ちましょう。

毎日のフォローアップ。植物がぐんぐん伸びて、もう収穫できそうです。

最初の実験は8月に、キュウリを使って行いました。2回目の実験となる今回は、レタス、ブロッコリー、イチゴを植えました。 

苗の植え方は、植物によって異なります。この写真は、イチゴを植えているところ。

私たちの作った北アシーラの堆肥は2回連続で、素晴らしい結果となりました。苗をよく観察してみると、根っこが他のものよりも大きいことがわかりました。根は、植物のいわば生命線で、根が大きければ大きいほど、成長に必要な栄養素を得ることができます。

それぞれの堆肥の効果を確かめるため、各列から5つのレタスをとって、重さを比べます。

植物の根には、主に4つの機能があります。①土からの水と栄養素の吸収、②植物を地面に固定して支える、③栄養素の貯蔵、そして④栄養生殖(イチゴのランナー繁殖や、桜の接ぎ木等、種子からではなく根・茎・葉から植物を繁殖させる方法)。

堆肥を混ぜていない列では、植物があまり伸びません。専門家が、死んだ根っこの原因を調べています。

温室では、植物の風味、質感、外観を確認します。植物を育てたり食べたりすることは、素晴らしい学びになります。レタスの葉1枚に、どれだけの美しさと風味があるかを知って、驚くかもしれません! パルシックチーム全員が、北アシーラ堆肥で育てたレタスの質が最高であるという意見で一致しました。オーガニックであり、豊かな風味があることが食べた瞬間にわかります。 

感謝のしるしに、堆肥づくりに協力してくれた方たちに、この可愛いレタスたちを配りました。

これらの経験から、今後の堆肥作りの方向性が分かってきました。そして今、私たちはパレスチナで最高の堆肥を提供するために一生懸命努力しています。これからも、私たちの温室からの便りをお楽しみに!

(ラマッラー事務所 ヤラ)

※この活動は「北アシーラにおける循環型社会のモデル形成」事業の一環です。地球環境基金の助成と皆さまからのご寄付により実施しています。

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西岸事業:北アシーラからはじまるゴミ分別 https://www.parcic.org/report/palestine/palestine_west_bank/15406/ Tue, 08 Oct 2019 06:43:32 +0000 https://www.parcic.org/?p=15406 ゴミは、ヨルダン川西岸地区でもっとも深刻な環境問題の1つです。適切な処理を怠ると、天然資源と人間の健康の両方に悪影響を与えます。今年4月から、北アシーラ町で実施する循環型社会のモデル形成事業では、循環型社会の形成と住民の環境意識の向上、ゴミの分別と資源のリサイクル、生ゴミの堆肥化、地域の有機農業推進を目指しています。

子どもたちはゴミの分け方もすぐに吸収!

子どもたちはゴミの分け方もすぐに吸収!

4月、北アシーラでの事業はスーパーや八百屋の店主、農家組合、女性組合に向けた事業説明会の活動から始まりました。その後、学校における「ゴミ分別」文化を育むため、夏休み期間中に各地で開催されるサマーキャンプでワークショップを開催し、子どもたちとゴミによって生じる環境や社会の問題について考えました。

パイロット地域にある対象店舗を訪問。店主の多くは、「違いを生み出そう!」と参加に意欲的

パイロット地域にある対象店舗を訪問。店主の多くは「違いを生み出そう!」と参加に意欲的

事業はこれから5年間かけて実施します。1年目となる今年は、村の大通りに面した20のスーパーや八百屋、活動に意欲的な家庭、学生を対象に絞り、現地の人びとが事業の全容を理解し、ゴミ分別活動に参加する準備をするため、集中的にトレーニングやワークショップを行います。

住民に分別のアイディアに慣れてもらえるよう、分別ステッカーを貼った見本を町役場に設置

住民に分別のアイディアに慣れてもらえるよう、分別ステッカーを貼った見本を町役場に設置

パレスチナには、ゴミの分別文化がほとんどありません。すべて一緒くたに捨てて埋め立てることが慣習になっているコミュニティにおいて、分別に参加し続けるモチベーション維持が困難なことはもちろん、未発達のゴミ分別産業とリサイクル業者の少なさは、ゴミ問題の持続可能な解決策を探すうえで、チームへの大きな障害となっています。

各参加者は、4色1セットのカラーボックスを受け取ります

各参加者は、4色1セットのカラーボックスを受け取ります

事業では、生ゴミ、ペットボトル・缶・びん、ビニールゴミ、紙ゴミを分別する予定ですが、パレスチナのような「リサイクル後進国」ではカラフルなゴミ分別ボックスも売っていません。自分たちで箱の色や開口部の形を工場に特注するため、予定よりも調達までに時間を要することになりました。8月末、イード(犠牲祭の祝日)の長いお休みが明け、工場からようやくゴミ分別ボックスが到着。これからパイロット地域の参加者に配布していきます。

堆肥舎の床にコンクリートを施工。完成までもうすぐ

堆肥舎の床にコンクリートを施工。完成までもうすぐ

分別後の生ゴミを堆肥化する堆肥舎は完成間近、堆肥を細分しふるいにかける特注の機械も9月末に堆肥舎内に設置される予定です。少しずつですが着実に前に進んでいます。

(ラマッラー事務所 ヤラ)

※この活動は「北アシーラにおける循環型社会のモデル形成」事業の一環です。地球環境基金の助成と皆さまからのご寄付により実施しています。

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ジャマイン環境クラブメンバーへの家庭訪問 https://www.parcic.org/report/palestine/palestine_west_bank/13773/ Tue, 09 Oct 2018 05:31:29 +0000 https://www.parcic.org/?p=13773 環境クラブの課外活動に手作りのハムチーズサンドを差し入れしてくれたお母さんたち

環境クラブの課外活動に手作りのハムチーズサンドを差し入れしてくれたお母さんたち

2016年に結成されたジャマイン環境クラブ。堆肥化やリサイクルを通じて、学生や地域住民の環境意識を高め、一人ひとりが責任をもった地域社会の形成を目指して活動しています。いつも学生たちと同じ目線にたって活動することを心がけている私たちパルシックチームですが「環境クラブの活動を、親御さんたちはどう思っているのだろう?」という疑問から、環境クラブメンバーのお家を訪問し、聞いてみることに。4人のお母さんが快くインタビューに答えてくれました。

環境クラブメンバー  ワファーさん一家

ワファーさんはクウェート生まれ、4歳の時に家族と一緒にジャマインにやってきました。16歳で結婚したため、学業を続けることはありませんでした。タウジーヒ(パレスチナの全国統一センター試験)の勉強も大学進学もしなかった彼女ですが、息子と娘の教育には強いこだわりを持っています。3カ月と長いパレスチナの学校の夏休みには、息子を太陽が照りつく昼間の作業現場の手伝いに行かせています。

「しっかり勉強しないと、ずっと労働者のままよ。」

と気づかせるための、彼女なりの教育方針だと言います。

ワファーさんと子どもたちとの絆は強く、子どもたちは学校から帰ると、1日の出来事をワファーさんにまくしたてます。家に着いて母親を探し、今日クラブで学んだことを興奮して伝える子どもたちの目はキラキラしているといいます。ワファーさんが台所で食事や料理をしていると

「あー!お母さん!堆肥作りに使うから残った野菜とっておくの忘れないでね」

と飛んできます。

「正直言って、家庭菜園の方法も堆肥作りのために生ゴミを捨てちゃいけないってことも子どもたちから学んだの」。

とワファーさん。

環境クラブメンバー  イマーンさん一家

専業主婦のイマーンさんには4人の子どもがいます。彼女は環境クラブの活動で、息子がどう変わったかについて話してくれました。シャイで少し引っ込み思案の息子は、クラブでしょっちゅう新しい人に会って交流するなかで、以前よりも強い心の持ち主になったといいます。イマーンさんは息子について語ってくれました。

「息子は高校に拘束されているとも感じているようだけど、自然と前向きになれる何かを探しているみたい。パルシックの活動にもいち早く参加を名乗り出たし、学校の授業以上に環境クラブの活動を気にかけてるの」。

オリーブの木の前で歯に噛みスマイルの男子学生たち

オリーブの木の前で、はにかみスマイルの男子学生たち

環境クラブメンバー  アリアさん一家

女性組合のメンバーで、以前コンポストづくりにも参加したことがあるアリアさんは、ベネズエラで生まれ育ちました。当時、海外に住むパレスチナ人女性の多くが、16歳になると、パレスチナID取得の規定や、結婚に対する家族の方針などを背景に、移住国を離れてパレスチナに戻らなければなりませんでした。アリアさんもベネズエラを離れ、パレスチナで結婚しました。アリアさんにはベネズエラの国籍もありますが、子どもたちにその国籍を付与するためには、1年以上の現地滞在や登録のための莫大なお金が必要でした。移動の自由が大きく制限されたパレスチナのパスポート以外に、異なるパスポートを持つことにはもちろんたくさん利点がありますが、経済的な理由から彼女がその選択をとることはできませんでした。

娘たちは声を揃えて、アリアさんに繰り返し訴えます。

「ママ、なんでそうしなかったの~!パレスチナのパスポートだけじゃなくて、別の強力なパスポートがあったら最高なのに!」

アリアさんは答えます。

「そうね、それは助けにはなるけど。でもママを信じなさい。あなたの人生に差をつけ、世界への扉を開く唯一の方法は、しっかり勉強していい成績をとることよ」。

アリアさんは、石切り場の粉塵によって、なぜジャマインが特別注目される存在になったかについて話してくれます。

「通りを歩くと、全部真っ白でしょ。窓を開けることさえできないのよ。これは癌や喘息みたいな病気の原因にもなる。人間だけじゃなくて、木も被害を受けている。前はたくさんの人がジャマインにオリーブオイルを買いに来てたけど、今はオリーブオイルの質も量も粉塵の影響を受けている。ジャマインのすべての木が、今は真っ白で弱々しくなってしまった」。

ジャマインの環境問題を深刻に受け止めるアリアさんに、「一番の悩みは?」と聞くと、8人の子どもの育児と、学校、大学の授業料、それに親戚名義の今の住居からいつ追い出されるか分からないからびくびくしていること、とポロっと本音もこぼれました。

環境クラブメンバー  エルハムさん一家

エルハムさんは30歳、2人の子どものお母さん。12歳のときに結婚しましたが、夫は第二次インティファーダの際に逮捕され、18年間イスラエルの刑務所に服役しています。エルハムさんは夫の代わりに家族の重要な役割を果たすことになりました。

最近の息子の行動に環境意識の高まりを見たエルハムさんは、自分も親として環境活動に取り組む必要性を認識したといいます。

エルハムさんは、他の親たちにも子どもを環境クラブに入れるようぜひ勧めたい、と話してくれました。すべての学校が主導して学校内に環境クラブをつくれば、パレスチナの学生たちが環境に関する新しい情報や経験を享受できるからだといいます。

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インタビューから、お母さんたちが環境教育の重要性を認識していることは一目瞭然でした。全員に共通していたのは、環境クラブが子どもの性格や特性に変化を生んでいると感じていること、そして早婚[1]のために果たせなかった自分たちの夢や目標を子どもたちには叶えてほしいと願っていることでした。

ごみゼロランチの様子:万国共通、女子たちはおしゃべりが止まらない

ごみゼロランチの様子:万国共通、女子たちはおしゃべりが止まらない!

[1] パレスチナの法律上、合法的な婚姻許される最低年齢は、それぞれ以前の統治国であったヨルダン、エジプトの法律に倣い、ヨルダン川西岸地区で女性15歳、男性16歳、ガザ地区で女性17歳、男性18歳と定められています。2015年現在のパレスチナの平均婚姻年齢は女性が約20歳、男性が約24歳と上昇傾向にありますが、現在でも高校卒業後の早婚、それに伴う早期妊娠は社会問題の一つとなっています。一夫多妻制は合法ではありますが、フリーダムハウスの報告書「中東における女性の権利」によると、現在はほとんど実践されていません。

※この活動は、ジャマインにおける廃棄物の再利用を通した地域循環型農業モデル形成事業の一環です。地球環境基金の助成と皆さまからのご寄付で実施しています。
(ラマッラ事務所 ヤラ)

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ジャマイン、より良い環境に向けた新たな一歩 ―環境クラブの活動成果発表会― https://www.parcic.org/report/palestine/palestine_west_bank/13230/ Sat, 12 May 2018 02:32:56 +0000 https://www.parcic.org/?p=13230 いよいよこの日がやってきました。

4月22日、事業地ジャマイン町にて、環境クラブ学生による2017年度の活動成果発表会が盛大にとりおこなわれました。会場は、300年以上前に建てられたオスマン帝国時代の石造りのホール。発表会用に飾り付けられたステージを前に、環境クラブの学生、保護者、学校の校長や教員、教育省職員、パルシックスタッフが集まり、みんなの期待を寄せて、会は進行しました。

オープニングセレモニー、懐かしの鍵盤ハーモニカでパレスチナ国歌を演奏

オープニングセレモニー、懐かしの鍵盤ハーモニカでパレスチナ国歌を演奏

この日のもう一人の主役、司会進行役のヤラ

この日のもう一人の主役、司会進行役のヤラ

ところで、ジャマイン環境クラブが創設されてからもうすぐ2年が経ちます。

分別なしのゴミの埋め立てや、無計画な石材採掘で環境汚染の進むジャマイン町。雨季が終わると粉塵の季節がやってきて、窓を数時間開けているだけで、家具も床も埃にまみれてしまいます。

そんなジャマイン町だからこそ、若い世代に向けた環境教育は大切な活動のひとつです。

ジャマイン環境クラブの目指すゴールは、環境に対する意識や態度をあらため、自分たちの安全な未来のため、個人や学校そして社会全体に働きかけて、環境汚染によるマイナスの影響を減らすことです。

今年の発表会では、2017年度の活動をふり返り、学生たちが環境をテーマにしたさまざまな発表を行いました。

たい肥づくりから始まった2017年の環境クラブ活動、ペットボトルのリサイクルや、有機農業施設への訪問など、プロジェクト期間中の学びや体験についてプレゼンテーションを行った女子学生たち。会場に集まったたくさんの観客のプレッシャーにも物怖じすることなく、自信いっぱいの女子学生たちは、プロジェクターがいきなり停止するというハプニングにも、慌てることなく発表を続ける大人な対応。それもこれも学生たち自身が、自分たちの活動をしっかりと理解している証だと思います。

”プレゼンテーションだと気が乗らないが、劇ならば” と、今年度は、環境啓発劇に挑戦した男子学生たち。ジャマインの汚染問題をテーマにした劇は、ジャマイン住民たちの心に刺さったのでしょうか。環境クラブ学生の一人、ビラールくんがジャマイン町の石材採掘の問題や、日々人びとがどれだけの被害を受けているかを話し出すと、待っていましたと言わんばかりに、観客たちが拍手喝采をする場面もありました。

誇らしげに、2017年度終了証授与式

誇らしげに、2017年度終了証授与式

パルシックのスタッフたちも、自信をもって発表をおこなう学生たちの姿に、昨年度からの成長を感じる日となりました。

学生の発表にあわせて、出席者からもたくさんの言葉をいただきました。教育省のアビール・フーリエさんは

「学生たちほど私たちの社会を変えてくれる存在はいないです。私たちも一緒に行動を起こしましょう!いつか、ジャマインの学生たちが、より良い環境のために未来をけん引するリーダーになってくれることを信じています。日々の幸せや健康的な毎日は、気持ちの良い環境があってこそ。私たちはそのことを忘れてはいけません」

と観客たちに強いメッセージを送ってくれました。

子どもたちの雄姿を見に来た母親たち、最後は一緒に記念撮影

子どもたちの雄姿を見に来た母親たち、最後は一緒に記念撮影

環境保護はだれも取り組むことのできない途方もない難題でしょうか?

もし地球上に住むすべての人びとが小さな一歩を踏み出すことができれば、それは決してむずかしい問題ではなくなるかもしれません。たとえば、ゴミの量を減らしたり、革新的なアイデアで古いものを生まれ変わらせたり、捨てる代わりに壊れたものを修理して使ったり、小さな一歩は日常にあふれています。

今はまだまだ小さな活動ですが、この日小さな一歩を踏み出したジャマイン町のように、一人ひとりが自分たちの生活や未来を守るため、行動を起こしていけることを信じています。

※この活動は「ジャマインにおける廃棄物の再利用を通した地域循環型農業モデル形成」事業の一環です。
  地球環境基金の助成と皆さまからのご寄付で実施しています。

(パレスチナスタッフ ヤラ)

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環境クラブ:ジェニン県のオーガニック・ファーム訪問 https://www.parcic.org/report/palestine/palestine_west_bank/12857/ Thu, 28 Dec 2017 07:13:20 +0000 https://www.parcic.org/?p=12857 ヨルダン川西岸地区ジェニン県ベイト・カッド町に、広大な敷地を有した有機農業施設、マーン・パーマカルチャー・センターはあります。まるで植物のアミューズメントパーク。何種類もの野菜や植物が、すべて有機農法によってつくられています。

自分たちが取り組もうとしている有機農業とは実際どのようなものなのか、またその魅力を存分に知ってもらうために、11月25日、環境クラブ代表メンバーと同センターを訪ねました。

パーマカルチャー・センターのエントランス

パーマカルチャー・センターのエントランス

センター内を見学する学生たち

センター内を見学する学生たち

パーマカルチャー・センターは当初ジェニン県マルダという町に建設されましたが、イスラエルのアリエル入植地建設のため完全に破壊され、2013年に現在の場所に再建されました。年間降水量が300ミリ以下のベイト・カッドでは慢性的な水不足や干ばつに悩まされており、センターには貯水槽やため池が完備されているほか、水の蒸発を防ぐさまざまなアイデアが実践されています。

ドラム缶から作られた植木鉢には何種類もの植物が植えられている。中央の筒に水を張ると、一度に水やりが完了してしまうという仕組み。

ドラム缶から作られた植木鉢には何種類もの植物が植えられている。中央の筒に水を張ると、一度に水やりが完了してしまうという仕組み。

センター長のハッサンさんは“誰もが参加でき、体験できる農業実験場”をセンターのモットーとして、これまでにもたくさんの学生や農家を受け入れてきました。センターの機能をひとつひとつ丁寧に説明するハッサンさんに、メンバーたちも熱心に耳を傾け、質問していました。

センター長ハッサンさんによる講義

センター長ハッサンさんによる講義

代表して訪問したメンバーたちは、後日、訪問についてのプレゼンテーションを作成し、環境クラブのほかのメンバーたちに発表してアイデアを説明しました。センターで取り入れていた水耕栽培のメカニズム(野菜を、土を使わず水で栽培する方法)や、植物・魚・微生物の食物連鎖を利用したアクアフォニックといった高度な農法も含まれていて「もしかすると中学生には難しすぎる?」と思われた内容も、プレゼンテーションで分かりやすくまとめていました。「何でも質問して!」と黒板に絵を書きながら説明していたメンバー、アミールくんの姿がとても印象的でした。

水耕栽培で作られるセロリ

水耕栽培で作られるセロリ

環境クラブメンバーのプレゼンテーション

環境クラブメンバーのプレゼンテーション

環境クラブメンバーのプレゼンに聞き入る

環境クラブメンバーのプレゼンに聞き入る

スライドを作成してプレゼンテーション

スライドを作成してプレゼンテーション

堆肥づくりやゴミ拾いなど、環境クラブの活動成果が目に見えるまでには時間がかかります。しかし、学生たちの地道な活動が、近隣住民の意識変化につながり、また有機堆肥をつかった野菜が実際に食卓に並ぶとき、地域に重くのしかかるごみ問題が新たな価値や人材、人と人とのネットワークの創出につながっていくことを期待しています。

※この事業は地球環境基金の助成と皆さまからのご寄付で実施しています。

(パレスチナ事務所 関口)

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生ゴミから生まれる新たな価値:環境クラブにおける堆肥づくり https://www.parcic.org/report/palestine/palestine_west_bank/12850/ Mon, 25 Dec 2017 05:39:04 +0000 https://www.parcic.org/?p=12850 パルシックは2016年度より循環型農業推進の一環として、パレスチナ北部ナブルス県ジャマイン町で生ごみを再利用した有機堆肥づくりに取り組んでいます。

環境クラブの活動

2016年よりジャマイン町の2校の中学校(女子中学校、男子中学校)で有志の生徒たちと環境クラブを立ち上げ、メンバーとともに学校近隣の清掃活動やペットボトルのリサイクル、3Rのワークショップなど、地域の環境問題を様々な角度から考え、取り組んできました。活動2年目に入った今年は、女子校の庭に設置した簡易堆肥舎で生ゴミを利用した堆肥づくりに挑戦しています。

環境クラブの活動:ペットボトルのリサイクル

環境クラブの活動:ペットボトルのリサイクル

生ゴミを利用した堆肥づくりで重要なポイントは、毎日出る生ゴミを堆肥に使用するまで腐らせずに保管することです。家庭で生ゴミを保管するとき、腐敗を防ぐために私たちが加えているのが「床材」と呼ばれるもの。一見すると、ただの土のようにも見えるこの床材は、地域で産出されるオリーブから油を絞ったあとに残る搾りかすや鶏などの家畜のフン、落ち葉など現地で調達可能な有機ゴミを混ぜ合わせて作っています。この床材に生ゴミをまぜて保管しておくことで生ゴミは腐敗せず、むしろ発酵が進みます。

そういうわけで、堆肥作りの手始めに、まずは床材の準備から。

メンバーたちは、校庭や自分たちの家、近隣農家さん、オリーブの搾油所などから必要な材料をかき集め、農業専門家サーデクに指導を受けながら床材づくりに取り組みました。比重の軽いものから重ねていくので、まずは十分に乾かしたオリーブの搾りかすを地面に広げます。次に工程から集めた落ち葉をまんべんなく広げ、その上にサーデクが持ってきてくれた木くず、土、鶏糞を重ねていき、最後に鍬やシャベルで混ぜ合わせていきます。なかなかの力仕事ながら「まるでピザを作ってるみたい!白い木くずがチーズで、鶏糞がザアタル(パレスチナ・タイム)で…」とメンバーははしゃぎながらかわるがわる作業を進めていました。その後、水分量をチェックし(適切な水分量は40%くらい)、冬の冷たい雨に濡れないよう簡易堆肥舎の屋根の下へ積み上げました。

学校の庭に設置した簡易堆肥舎での床材づくり

学校の庭に設置した簡易堆肥舎での床材づくり

床材づくり:材料を混ぜ合わせるメンバー

床材づくり:材料を混ぜ合わせるメンバー

いい床材づくりには、好気性微生物[1]による発酵の行程が不可欠です。そのため、2日に一度床材を混ぜ合わせる“切り返し”の作業を行い、空気を内部に送りこみます。順調に発酵が進めば、そのサインとして床材の温度は2日後くらいには60~70℃まで上昇するといいます。メンバーはさっそく役割分担を決め、週2日、床材の温度を計測、切り返し作業を行いました。仕込みから2日後、発酵活動が始まった床材の温度は、開始日に測った20℃から60℃近くにまで上昇し、メンバーたちも実際の変化にはびっくり。最初はハエが飛び、鶏糞などからくる悪臭がしていた床材に「本当に上手くいっているのかな」と心配するメンバーもいましたが、仕込みから約2週間もたつと、ハエはすっかり姿を消し、かすかにレモンのような爽やかなにおいのする床材が完成しました。

完成した床材

完成した床材

温度をチェック

温度をチェック

今後、床材は学校の生ごみ回収ボックス用以外にも、学校近隣の家庭に配布され、生ゴミの保管につかわれます。その後、回収した生ゴミと床材をつかって、堆肥づくりを開始します。できた堆肥は校庭の菜園に利用し、花やハーブを育てるのに役立てていく予定です。

[1] 空気中の酸素を取り入れることによって、自らの酵素を用いて有機物を分解する微生物のこと。

※この事業は地球環境基金の助成と皆さまからのご寄付で実施しています。

(パレスチナ事務所 関口)

 

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西岸地区 生ごみ堆肥化、地域の循環づくり[2] https://www.parcic.org/report/palestine/palestine_west_bank/12809/ Fri, 10 Nov 2017 08:10:32 +0000 https://www.parcic.org/?p=12809 西岸地区 生ごみ堆肥化、地域の循環づくり[1]より

家庭での生ごみ一次処理

次に家庭での生ごみ一次処理。現在、生ごみ回収・一次処理に40軒ほどの家庭が参加していますが、その一部を橋本さんと一緒に訪問し、様子を確認しました。

生ごみ一次処理ボックス。換気と水分蒸発のため、蓋には直径3センチの穴を5個空けている。 日向に置き太陽熱で発酵促進。

生ごみ一次処理ボックス。換気と水分蒸発のため、蓋には直径3センチの穴を5個空けている。 日向に置き太陽熱で発酵促進。

ナフェズさんのお家はジャマイン町役場から歩いて2分ほど。8月に生ごみ一次処理ボックスの様子を確認した際には、煙草の吸殻が一緒に入れられているのが気になっていました。今回ボックスの蓋を開けると、煙草の吸殻は見当たりませんでした。代わりに庭の乾いた草花が入れられていて、そのおかげもあり、悪臭や虫の発生が抑えられていました。

ナフェズさんの家の生ごみ一次処理ボックスの中身。生ごみの上に乾燥した花びらが入れられていた。

ナフェズさんの家の生ごみ一次処理ボックスの中身。生ごみの上に乾燥した花びらが入れられていた。

次にアニスさんのお宅に行きました。アニスさんは農家組合のメンバーでもあります。生ごみ一次処理ボックスを置いている庭の一角に案内し、工夫している点を話してくれました。

「生ごみと他のごみを分けるように、他のごみ用のバケツをこうして横に置いています。飲食業もやっていて、芋などの野菜の皮がいっぱい出るのですが、野菜の皮は水分を減らすため、こうして天日干しにしてから入れています。」

アニスさんの家の庭先に置かれた生ごみ一次処理ボックス。横にはその他のごみを入れるバケツが。

アニスさんの家の庭先に置かれた生ごみ一次処理ボックス。横にはその他のごみを入れるバケツが。

水分を減らすためにこうしてジャガイモの皮を天日干し。

水分を減らすためにこうしてジャガイモの皮を天日干し。

一次処理ボックスの中を見ると、水分の多い果物によって水分過多の状態になっていました。そこで、追加で持ってきた床材を加え、生ごみが見えなくなるまで被せました。

橋本さんの指導を受けて床材を追加投入。

橋本さんの指導を受けて床材を追加投入。

床材投入後。生ごみが見えなくなるくらいしっかり被せ腐敗防止。

床材投入後。生ごみが見えなくなるくらいしっかり被せ腐敗防止。

八百屋やレストランなど、より多くの生ごみが発生するところでは、さらに水分過多の状態で、臭いもきつくなっていました。

「ボックスに生ごみを入れる度に十分な量の床材で蓋をすること。これが何よりも大切。そしてしっかり太陽の陽が当たるところにおいて熱で発酵と余分な水分の蒸発を促進させること。逆に言えば、十分な量の床材を入れ、日に当たるところに置きさえすれば、失敗することはない」と橋本さん。床材の重要性を再認識した一行でした。

アニスさんのお宅からの帰り際。町役場が数世帯ごとに設置したゴミ回収コンテナ。 回収が滞り、ゴミがあふれていることも。

アニスさんのお宅からの帰り際。町役場が数世帯ごとに設置したゴミ回収コンテナ。 回収が滞り、ゴミがあふれていることも。 

今後の床材づくりに向けて、オリーブの搾りかすを集める

10月に入り、今年もオリーブの収穫時期を迎えました。オリーブの搾油場では大量のオリーブの搾りかすが廃棄物として出ています。生ごみ堆肥作りの肝となる床材を十分に作り続けられるよう、農家組合のメンバーがオリーブの搾りかすの取り置きを搾油場に掛け合いました。オリーブ収穫がひと段落する11月、新しいオリーブの搾りかすで床材づくり再スタートです。

オリーブ畑にて。堆肥づくりに生かすため、土壌や生育状況を確認する現地スタッフのサーデクと橋本さん。

オリーブ畑にて。堆肥づくりに生かすため、土壌や生育状況を確認する現地スタッフのサーデクと橋本さん。

(パレスチナ事務所 廣本)

※この事業は地球環境基金の助成および皆さまからのご支援によって実施しています。

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