ガザ地区女性世帯への生計支援 – 特定非営利活動法人パルシック(PARCIC) https://www.parcic.org 東ティモール、スリランカ、マレーシア、パレスチナ、トルコ・レバノン(シリア難民支援)でフェアトレードを含めた「民際協力」活動を展開するNGO。プロジェクト紹介、フェアトレード商品販売など。 Mon, 01 Aug 2022 06:14:50 +0000 ja hourly 1 https://wordpress.org/?v=6.4.1 ガザのチーズ工場。オープニング式典と販売促進イベントを行いました! https://www.parcic.org/report/palestine/palestine_gaza_dairyfarming/21011/ Mon, 01 Aug 2022 06:14:50 +0000 https://www.parcic.org/?p=21011 「酪農を通した女性グループの生計支援事業」(2018年1月~2022年2月)で、パルシックが支援してきた女性たちは今、女性協同組合を中心に、自立した活動を続けています。以前、チーズ工場のオープニングの様子を写真でご紹介しましたが、式典の後に女性共同組合のメンバーが感想を語ってくれましたので、彼女たちにとってどのような日だったのか、またその後の活動についてご紹介します。

チーズ工場のオープニング式典

チーズ工場のオープニング式典を前に、組合の女性たちは、式典で販売するためのホワイトチーズや菓子用チーズ、ラバネ(小さなボール型のチーズ。プレーンの他、ハーブやブラックシード、パプリカ等で味付けしたものがある)の準備で大忙しでした。

式典では、クナーフェ(チーズを使ったアラブ菓子)を参加者にふるまいました

2月22日(火)、ラファ県のアルショカ村 で、日本大使館関係者やアルショカ村長、アルショカ議会議員や役所の方たち、そして地元の人たちを招いて、チーズ工場のオープニング式典を開催しました。

この日は、女性協同組合にとって、自分たちの製品を販売・宣伝するための良い機会になっただけでなく、地元の人や様々な団体と良い関係を築く場にもなりました。

オープニング式典で挨拶する組合代表のエクラムさん

組合員で、チーズ工場勤務のサファさん

「これまでに自分たちが達成したことを、誇りに思います。長い道のりでしたが、その価値はありました!自分でも信じられませんが、式典では、自分が生産的な人間であることを実感できました。また、たくさんの人からインタビューも受けました。式典の参加者に、工場の機械を見せながらチーズの作り方を説明できて、とても幸せでした。」

チーズ作りをするサファさん(左から2番目)

組合員のアマルさん

「式典の日は、とても素晴らしい日になりました。私はテーブルの後ろに立って、試食する人たちにチーズの味を伝えたのですが、これは私にとって新しい経験でした。組合の仲間と並んで自分たちの商品を紹介するのは、とても楽しかったです。」

オープニング式典の試食会に参加するアマルさん

組合員のヤスミンさん

「式典の日は、組合員全員にとって大きな一日でした。私たちはチーズ工場について、多くのメディアからインタビューを受けました。彼らの記事のおかげで、私たちは有名になりました!式典では、33kgのチーズを販売して、幸先の良いスタートを切ることができました。」

ショッピングモールでの販促イベント

式典の後も、女性協同組合はマーケティングの専門家と協力して、販売先を拡大しています。これまでに、ガザ地区の3つの地域、ハン・ユニス県、ラファ県、ガザ県のショッピングモールで、3回の販促イベントを実施しました。

試食イベントに協力してくれたシェフ(左)とヤスミンさん(右)

販促イベントを担当したヤスミンさんは、「ショッピングモールは、私たちのチーズの販売イベントを歓迎してくれて、65kgのチーズを販売しました。最初は、お客さんにチーズを紹介するのが少し恥ずかしかったのですが、やっているうちに、私の決意とモチベーションは大きくなっていきました。そして、商品をどうアピールすればよいのかを学んでいきました。チーズを試食してもらうためのスタンド(案内板)を立てて、お客さんにサンプルを手渡しました。私たちのチーズは添加物を使っておらず、お客さんからの反応も上々でした!」と話していました。

緊張もほぐれ、お客さんの相手も上手くなったヤスミンさん

お客さんの声

ハン・ユニス県のスーパーマーケットの常連客であるズヒアー・バラクさん

「本当に美味しい。冷蔵庫にあるチーズを使い切ったら、必ずまたこのチーズを買いに来るよ!」

カーレッド・アル・ナジャールさん

「私はチーズに目がないんだ。これは久しぶりに食べる最高のチーズだ!」

お客さんの買い物かごに、チーズを加えてもらえました!

他にも、両親のためにチーズを買うために通りかかったというマルワン・クデイフさんは、「羊乳100%で作っているなんて、特別なチーズだね 」と答えてくれました。私たちのチーズと、普段買っているチーズを両方買って、ご両親と食べ比べをしてくれるそうです。

スーパーの冷蔵庫に陳列される女性協同組合のチーズ

(ガザ事務所 タグリード)

 

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ガザ、女性組合のチーズ工場完成! https://www.parcic.org/report/palestine/palestine_gaza_dairyfarming/20371/ Fri, 11 Mar 2022 04:40:41 +0000 https://www.parcic.org/?p=20371 2018年にガザ南部で開始した「酪農を通した女性グループの生計支援事業」が、2022年2月に完了しました。これまで事業で支援してきた女性たちは、共同で羊小屋を運営し、子羊や生乳、乳製品を販売することで、収入を得られるようになりました。

乳製品作りに意欲をもつ女性たちを中心に設立した女性協同組合の活動も少しずつ成果が出てきています。2022年1月に、組合のチーズ工場が完成。地元のスーパーやレストランなどに、ホワイトチーズや菓子用チーズの販売を始めました。

食品衛生専門家からOJTでチーズ加工について学びました

チーズ作りをする女性たち

チーズ作りをする女性たち

式典の準備をする組合の女性たち

チーズは真空パックにして販売します

商品ステッカー

また、2月22日には、工場の落成式典(兼チーズの試食会)を開催しました。式典には在イスラエル大使館から松井一等書記官(対パレスチナ日本政府代表事務所)や友澤書記官、ガザ農業省ラファ地区長官や、チーズ工場のあるアルショカ村の市長などにもご参加いただきました。式典は現地メディアにも取り上げられるなど、大成功のうちに終わりました。

チーズの試食会。シェフが腕を振るいます

パン&チーズは相性抜群です

チーズで作ったアラブ菓子、クナーフェ

組合の乳製品、チーズや飲むヨーグルトなど

パレスチナの伝統ダンスも披露されました

ゲストの松井書記官、友澤書記官とパルシックのガザチーム

(ガザ事務所)

※この事業は外務省NGO連携無償資金の助成と皆さまからのご寄付により実施しました。

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ガザ 女性組合がスタート! https://www.parcic.org/report/palestine/palestine_gaza_dairyfarming/19593/ Mon, 16 Aug 2021 07:28:49 +0000 https://www.parcic.org/?p=19593 7月の第1土曜日は、国際協同組合の日でした。

パレスチナは、2019年11月から国際協同組合同盟に参加しています。パレスチナの協同組合は、大衆文化、習慣、伝統、地域社会とのつながりを背景としています。たとえば、結婚式やその他のお祝い、災害、農地での作業では「互いに助け合う」「連帯」するという伝統があり、活動は家族や親族内で組織されています。パレスチナには、現在866の協同組合があり(677団体が ヨルダン川西岸地区、189団体がガザ地区)、そのうち女性が運営する組合は47団体、協同組合に参加する女性の数は約12,000人といわれています。農業協同組合、住宅協同組合、工芸協同組合など、さまざまな形態の協同組合がありますが、女性たちの多くは農業などの生産部門の組合に参加しています。

さて、パルシックが支援してきた女性たちが結成した組合も、ついに正式に発足しました。羊を飼育する女性たちの畜産組合で、羊乳の回収や乳製品作りを協働で行います。ここまで長い困難な道のりでしたが、ようやく公式の法人として日の目を見ました!

パレスチナでは、労働省が協同組合の登録および監督を担当しています。労働省に組合登録するために、女性たちは働きバチのように働きました。

代表のエクラムさんはこう話します。「協同組合を登録するためには、たくさんの関連書類を準備しなければなりませんでした。事業に関する採算性レポートを作成し、省庁が求める多くの書類をそろえて、数ヶ月間待ちました。登録に時間がかかったのは、新型コロナウィルスの感染拡大のためです。省庁のほとんどの部署が閉鎖され、業務が行われていませんでした。それでも私たちは皆、自分たちの生活をより良いものにするため、協同組合を始めたいと強く思っていました。多くの困難がありましたが、一生懸命働き、お互いに助け合いながら乗り越えてきました。他の協同組合を訪問し、彼らの経験から学ぶことで、自分たちのモチベーションを高めました。また、困ったときや情報が必要なときは、労働省にある協同組合を管轄する事務所にも足を運びました。」

他の協同組合に話を聞きに行く女性たち

他の協同組合に話を聞きに行く女性たち

承認を待つ間も、女性たちは少しずつ活動を進めてきました。2021年3月には、3日間行われた農業省主催の展示会に参加しました。羊のエサとして育てている大麦を展示し、来場者が試食するためのヨーグルト、ディル(ハーブの一種)とコショウで味付けしたラバネ(中東地域で食べられているチーズのようなヨーグルト)、ホワイトチーズ、バターを用意しました。

彼女たちの作った乳製品は好評で、展示会は成功のうちに終わりました。組合は、これからチーズ製造工場を設立して、スーパーマーケットや小売店、そして大きなモールなどで、ホワイトチーズを販売する予定です。

農業省主催の展示会に出展

展示会で乳製品を販売

労働省からの承認を得た後の2021年6月23日、21名の組合メンバーが出席して理事会選挙が行われました。理事の中から会長、副会長、書記、会計、そして3人の監査が選出されました。7月7日、理事会メンバーは最初の理事会を開きました。

理事会選挙の様子

協同組合のロゴのデザインや組合事務所の家具の購入、組合員以外の羊飼育者からのミルク購入の可能性などを話し合いました。理事会では事前に議題を準備し、書記が会議内容を記録し、会計担当者が収支をすべて説明しなければなりません。理事会メンバーにとって初めての正式なミーティング、特に書記にとっては慣れない議事録作成でしたが、なかなかいい仕事をしてくれました!

理事会のメンバーたち

初めてのミーティングの様子

(ガザ事務所 タグリード)

※この事業は外務省NGO連携無償資金の助成と皆さまからのご寄付により実施しています。

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ガザ 停戦から1か月 https://www.parcic.org/report/palestine/palestine_gaza_dairyfarming/19460/ Wed, 14 Jul 2021 09:48:22 +0000 https://www.parcic.org/?p=19460 5月の戦争停戦から約1か月、ガザは少しずつ元の生活に戻りつつあります。家族や友人を亡くした人や、家が被害にあった人たちは、今も辛い日々を過ごしていますが、通りから聞こえてくる「アル・ハムドゥリラ(神さまに感謝します;「おかげさまで」のように挨拶で使われている言葉)」と言う人びとの明るい声が、私の頭の中に響いてきます。 家族や友人たちが元気でいるというのは幸せなことです。もうあの過酷な日々には戻りたくありません。

最近、パルシックが支援している女性たちに会い、空襲中どんな風に過ごしていたか、どんな被害を受け、どれだけ怖かったかなどを語り合いました。女性たちとおしゃべりをしていると、戦争前、というより新型コロナウィルス発生前の日々を思い出しました。

彼女たちの話をご紹介します。

ラファ県アルショカ村  アイシャさん

人生でこれほど怖い思いをしたことはありません。2014年、イスラエル軍に家を取り壊されたときでさえ、これほど怖がっていなかったと思います。戦争が始まってから3日後、私は子供たちの何人かをラファ市の叔父の家に送り出しました。爆撃が開始されたため、私もその家に行き、2日間泊まらせてもらったのですが、1つの家に40人もいたのです…カオス状態でした!その後、私は子どもを連れてUNRWA(国連パレスチナ難民救済事業機関)の学校に行き、最後の5日間はそこで過ごしました。

※パレスチナにはUNRWA(国連パレスチナ難民救済事業機関)が運営する学校があり、イスラエルとの戦闘中は避難所として開放された。今回の攻撃で、48,000人以上がガザ内部で避難民となった。

避難先の学校で寝泊まりするのは簡単ではありませんでした。文化的に男女が同じ場所に集まることは許されないので、男性は廊下で、女性は子供たちと教室で寝ました。トイレには列ができていました。学校にプライバシーはありませんでした。

2014年の戦争の時にひどい経験をした17歳の息子は、軍事衝突が始まった日、自分の顔を平手打ちし始め、「また戦争だ…また戦争だ…」と繰り返しながら、祖父母の家に急いで向かいました。息子は停戦まで、祖父母の家にいました。受験生の娘は、軍事衝突の日から数日後、勉強に専念できるように私の姉の家に行きました。自宅では怖がって、勉強どころではありませんでした。

空襲中は、飼っている羊の世話も十分にできませんでした。学校に避難してからは、夫が毎日1時間かけて自宅の羊小屋に通い、餌やりをしてくれました。

5月20日、木曜日の夕方に停戦が発表され、翌金曜日の夜明けから合意が発効しました。すぐにタクシーを呼んで、午前2時に学校から家に帰りました。家に帰る途中も、本当に安全なのかが分からず、ずっと祈っていました。前回の戦争の時のように、停戦合意が破られてしまうのではないかと恐れていました。

ラファ県アルショカ村 エクラムさん

2014年の戦争の時、休戦が発表された後、私は家に帰っていました。羊小屋の被害などを確認していたら、突然、叔父やいとこから電話があったのです。彼らは私に、(停戦が破られたため)すぐに家を出るようにと言いました。それで、娘と妹と一緒に自宅からユーセフ・アル・ナジャール病院まで歩いて行ったのですが、通りには砲弾や弾丸が落ちていました。そして、多くの遺体も見ました。人が亡くなっていくのを見るのは恐ろしくて、私たちは彼らのために何もできず、ただ必死で逃げました。 その日以来、娘はふさぎこむようになりました。

最近の軍事衝突で、こういった過去のことが彼女の心に戻ってきてしまいました。再び不眠症になり、食欲もなくなりました。数日間ほとんど食事をせず、顔色も悪くなり、爪を噛み始め、数晩眠ることができませんでした。私は娘を自宅より安全な祖父母の家に行かせました。

23歳の息子は、「家を出たくない、家を出るくらいならここで死ぬ」と言ったので、私は夫や息子、もう1人の娘と一緒に家にいましたが、イスラエル軍が地上侵攻する可能性があるとニュースで聞き、義理の父の住むハン・ユニス市に行きました。たった2つの部屋に18人もいました。場所は狭いですが、受験生の子供がいなかったのはラッキーでした!子供たちの間のいざこざを解決するのは大変でしたが…。親戚の子どもたちは皆、退屈していて、何もすることもなく、居候している私たちに対して「早く自分の家に帰ってほしい」 といつも不平を言っていました。

一番辛かったのは、皆が小さなスペースに押し込まれたことです。私たちの文化では、男の子と女の子を同じ部屋に寝かせるということは普通ないことですから…。

羊の世話についても、干し草がなくなってしまい困りました。外に買いに行くのは危険でしたが、兄がお金を借りて、トゥクトゥクで干し草を買ってきてくれたので、世話を続けることができました。

現在は羊の世話や女性組合の活動に邁進しています(左から3番目がエクラムさん)

エクラムさん

(ガザ事務所 タグリード)

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支援物資を受け取りました!~クラウドファンディング「私の名前はタグリード 羊を守り、ガザの女性の暮らしを守りたい」レポート~ https://www.parcic.org/report/palestine/palestine_gaza_dairyfarming/18988/ Tue, 13 Apr 2021 07:58:56 +0000 https://www.parcic.org/?p=18988

45日間のクラウドファンディングでは、たくさんの方から寛大なご寄付をいただき、200万円の目標を達成することができました。皆さまのおかげで、パルシックが支援する5つの村において、新型コロナウィルス感染拡大に苦しむ女性たちを支援することができました。 2月には獣医と契約を結び、すべての羊小屋への訪問診察を開始しました。支援物資についても、同じく2月中に、羊のワクチンやビタミン剤、羊小屋で作業をする女性のためのマスク、アルコールジェル、手袋、洗浄剤を届けました。そして4月には、エサを保管する大きな樽、シャベル、鍬(くわ)、ウール用のハサミや櫛、敷砂、濃縮飼料を配布しました。 タグリードが女性たちからのメッセージを預かりました。

ヤスミンさん(ラファ県)

「支援物資を受け取り、とても幸せな気持ちです。タイミングは完璧で、まさに私たちが必要としているものばかりでした。獣医に羊を診察してもらい、ほとんどの薬を使用しました。高価なホルモン剤も寄付していただいて助かりました。マスクと洗浄剤は、毎日使っています。 エサを安全・清潔に保管するための樽がもらえたのも嬉しかったです。以前は、ネズミがエサの袋に穴を開けて、中身を食べてしまい、中で排尿することもありました。羊の健康に悪影響を与えることもありましたが、これからはそんな心配もなくなります。それに、樽があれば、雨でエサがだめになってしまうこともありません。
もともと羊小屋に道具はありましたが、新しい道具によって、農場で過ごす時間を短縮することができました。羊小屋は4つのセクションに分かれているのですが、用具は1セットしかありませんでした。一度に働くことができるのは1人だけ。シフトのもう1人は、最初の人が仕事を終えるまで待っていました。今では2人が並行して作業できるので、時間を節約して、家族のもとに早く帰ることができます!
支援は、私に希望とやる気を与えてくれました。少しでも、誰かが私を気にかけてくれるというのは、嬉しいことです。実は先月、母羊5匹と赤ちゃん羊2匹を失いました…。本当に大きな損失で、とても辛いです。
ご寄付をいただき、ありがとうございました。新型コロナウィルス感染の中での、皆さまのご厚意とご配慮に感謝します。そして私たちが経験していることを理解していただきありがとうございます。」

ヘンドさん(ラファ県)

「支援はとても大きなものでした。誰かが私たちを気遣い、助けたいと思ってくれているのを感じました。私たちの羊小屋の周りにはネズミがいて、エサを食べてしまうのです。これまでは、羊が病気にかからないよう、エサの一部を捨てなければなりませんでした。でも今は、ネズミからも太陽の熱からも、エサは守られています。濃厚ミルクも高価で、以前は購入できませんでした。日本の皆さまのご支援に感謝申し上げます。今後も変わらぬご支援をいただければ嬉しいです。」

ヘンドさん

ナエマさん(ハン・ユニス県)

「誰かが私たちの側に立って、サポートしてくれるというのは幸せなことです。すべてがとても役に立ちました。濃厚ミルクは特に助かりました。これは赤ちゃん羊が成長するために不可欠なものですが、非常に高価なのです。2ヶ月間、買わなくてすむおかげで、お金を節約することができました。樽も、エサをネズミから守ってくれますし、砂も必要なものだし、シャベルや櫛は、これから長い間使えます。ご支援ありがとうございました。新型コロナウィルスにより事態は悪化しています。引き続きご支援いただければ幸いです。」

ナエマさん

エクラムさん(ラファ県)

「グループを代表して、クラウドファンディングに参加してくれたすべての人に感謝したいと思います。 日本の皆さまの寛大なご支援に感謝申し上げます。私たちは支援を必要としていました。そして、皆さまのご寄付は、私たちの生活に変化をもたらしてくれました。今後とも、変わらぬご支援を賜りますようお願い申し上げます。支援物資は、非常に重要な時期に私たちに届きました。いただいたものは、私たちが日常的に使っているものばかりです。長く、大切に使わせていただきます。」

日本からの贈り物を受け取った女性たちは、それぞれ荷馬車やトゥクトゥク、歩いて帰路につきましたが、マスクやベールの後ろにのぞいていた笑顔は、今も続いています。

(ガザ事務所 タグリード)

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新型コロナウィルスの畜産への影響:FAOおよび畜産専門家からの報告 https://www.parcic.org/report/palestine/palestine_gaza_dairyfarming/18473/ Thu, 14 Jan 2021 10:08:04 +0000 https://www.parcic.org/?p=18473 現在パルシックは、新型コロナウィルスの感染拡大の影響を受け、畜産による収入が激減してしまった女性たちへのクラウドファンディングに挑戦しています。

「私の名前はタグリード 羊を守り、ガザの女性たちの暮らしを守りたい」
クラウドファンディングプロジェクトページはこちら

期間:2020年12月14日(月)~2021年1月28日(木)

女性グループが受けている影響については、「ガザ、新型コロナウィルス規制下での女性グループの活動」でも報告しておりますが、今回は、昨年11月に出されたFAOのレポートと畜産専門家からの報告をご紹介します。

FAO(国際連合食糧農業機関)のレポートより

2020年11月8日~14日の期間における新型コロナウィルス感染拡大のパレスチナの食糧システムへのインパクト、その問題と傾向について報告します。これらの情報は、農民、遊牧民、漁師、貿易業者、協同組合などの72の主要な情報提供者へのインタビューによって集められました。 また、FSS、ESDC、PARC、PUI、 SIFの協力によって二週間ごとにデータ収集が行われました。

<生産>

ガザ地区では農業に必要な資材の入手が困難となっています。 生産者、特に畜産農家は、コロナウィルスの猛威に加えて、家畜に病気が蔓延しており、生産性が低下していると報告しています。物資の輸入手続きの遅れは、ガザ地区での在庫不足につながっています。物資の価格は比較的安定していますが、在庫不足と輸送コストの増加により、飼料の価格は急騰しています。生産者からは、コロナウィルスに関連して、動物の病気、特に天然痘や口蹄疫が拡大しているとの報告がされています。家畜生産者と畜産農家からは、ワクチンが不足しているとの報告があります。また、ガザ地区の羊やヤギ農家は、餌不足のために生産性が落ちたり、栄養不足に陥ったりした家畜を屠殺するなどしています。

<市場>

特にガザ地区では、生産量の落ち込み、市場へのアクセスの制限、消費者の需要の低下の影響を受けて、農産物の取引量は、コロナの感染拡大前に比べて減少しています。移動制限により農場や市場へのアクセスがしにくくなったことで、生産は減少、また取引業者が大量購入を避け、近隣での少量取引をするようになったため、農産物の価格は下落しています。西岸地区の女性協同組合は、低価格で取引業者に直接販売することで、消費者へのアクセスが制限された状況を補っています。同様に、ガザ地区では、消費者の購買力が低下する中、協同組合は消費を引き付けるために低価格を維持し続けました。回答者のすべてが、収入は前年の同時期と比べると減ったと答えています。

<食糧消費>

半数以上の世帯が依然として食糧不安の状態にあります。
回答者の40%は、不十分または最低限の食糧消費レベルにあります。そして回答者の半数以上が、友人から食べ物をもらったり、あまり好まない食べ物を購入したりしなければなりませんでした。 回答者の30%は、子供を養うために、食事を減らすか、少量を摂取するか、自分で食事を控えるか制限をしなければなりませんでした。回答者の半数以上が野菜や果物の価格が上昇したと報告しましたが、鶏肉の価格はわずかに低下しました。 ガザ地区の特定の作物には、食料価格の上限が課されています。

ガザ地区畜産専門家からの報告

ガザ地区における飼料価格の上昇は、2020年11月1日、国際穀物理事会(IGC)の穀物価格の上昇に伴い、イスラエルにおける飼料価格が高騰したことにより始まりました。ガザ地区ではイスラエルから大半の飼料を輸入しているため、この価格高騰で大きな打撃をこうむっています。これにより、私たちが事業対象としている女性畜産グループだけでなく、ガザ地区全体の家畜生産者に悪影響が及び、彼らの利益が減少することは言うまでもありません。
また、ブブルセラ病や口蹄疫、天然痘、疫病、狂犬病などのワクチンが不足も深刻化しています。

WFPのレポートで報告されている口蹄疫の流行について、農業省獣医局長のハッサン・アッザム博士に問い合わせたところ、ガザ地区では、1年前を最後に予防接種を受けられていない羊や牛数頭に、口蹄疫の症例が現れたとのことでした。しかし、この症例のでている家畜はまだ少なく、爆発的感染には至っていないことに加え、ペストに感染した懸念のある症例のほうがより多く見られており、そちらの懸念のほうが大きいと指摘されました。また、農業省のワクチンの備蓄がすでに底をついてしまったことも明らかにしました。ワクチン備蓄の枯渇はガザ地区の家畜セクター全体を脅かし、損害をもたらす恐れがあります。状況を適切にコントロールし、疫病の蔓延を防ぐことができなかった場合、今後数ヶ月のうちに、すべての家畜、特に羊や牛に深刻な影響をもたらす本当の危機的状況に直面することになるでしょう。

これが私たちの対象としている女性畜産グループに影響を与えるかどうかはわかりませんが、基本的には対象女性グループもガザ地区の他の家畜農家と同じです。 私たちの事業対象地域ではこれまでのところ感染は確認されていませんが、ワクチンの有効期限が切れている羊については、他の農家の羊同様、こうした病気に非常に感染しやすくなっています。一刻も早くワクチンの予防接種を行わなければなりません。

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ガザ、新型コロナウィルス規制下での女性グループの活動 https://www.parcic.org/report/palestine/palestine_gaza_dairyfarming/18130/ Fri, 13 Nov 2020 07:15:27 +0000 https://www.parcic.org/?p=18130 365km2のガザ地区には、約200万人が暮らしており、その住民の多くは過密状態の難民キャンプに住んでいます。 人口密度は約5,203人/km2と、世界で3番目に高く、ソーシャルディスタンスを確保することは困難です。住民の約70%が難民としてUNRWA(国連パレスチナ難民救済事業機関)に登録されており、 UNRWAと国内外の支援機関からの、食糧、水、シェルター、医療、教育、雇用の支援が不可欠です。ガザ地区は14年にわたり、イスラエルの行う壊滅的な軍事封鎖で疲弊し、日々の停電に加え、深刻な医薬品・医療用品不足に苦しめられています。

2020年8月24日、ガザ地区内で新型コロナウィルスの市中感染により感染者数が増加していると発表されました。ガザ市で、同じ家族の中から4人に陽性結果が出たためです。人びとは食料や衛生用品を買いだめするためにスーパーマーケットに殺到しました。 この事態を受け、人口密集地域であるガザ地区での感染拡大を抑制するために、午後8時から午前8時までの夜間外出禁止令が課されました。 11月12日の時点で、ガザ地区だけで44名の死亡者を含む9,542名が新型コロナウィルスに感染し、医療関係者は感染者数の増加を懸念しています。 保健省によると、ガザ地区では47%の医薬品、33%の医療器具、研究機関と輸血バンクの供給の65%が不足しており、実際、新型コロナウィルス検査に使用されていた2つの医療機器のうち1つは、薬品不足により使用停止となりました。

 

コロナの直接的な脅威だけでなく、経済への影響が、もともと物資の供給やサービスへのアクセスが制限されていた人々に大きな打撃を与えています。 8月の感染拡大前でさえ、特に中小企業を中心とする多くの企業が数ヶ月のロックダウンに耐えることができず、多くが廃業を迫られました。4,000人近くが職を失い、少なくとも50の工場が閉鎖されました。また、10,000人以上のタクシー運転手が大幅な収入減に直面しました。 学校や大学は数か月間休校となりました。長時間の停電により、オンライン学習は非常に困難です。さらに、ガザ地区に蔓延する絶望感は悪化し、性暴力やその他の暴力、うつ病、薬物使用、および自傷行為などが著しく増加しています。特に宗教を重んじるガザ社会ではタブーである自殺の増加が顕著です[1]

畜産業も大きな打撃を受けました。夜間外出禁止令と移動制限に加え、各地域で毎週開催されていた家畜市場が閉鎖されました。普段は各県ごとで異なる曜日に家畜市場が開催され、そこでは畜産農家が家畜や乳製品などを販売し、家畜用の飼料や医薬品を購入していましたが、現在はそれができません。パルシックが支援している女性畜産グループも、獣医サービスや、飼料購入に非常に苦労しています。しばらくして、制限の一部が緩和され、獣医に移動許可が下り、羊小屋を訪問診療することはできるようになりましたが、訪問診療は通常よりも料金が割高で、畜産農家にとって厳しい出費となっています。

ヤスミーンとサブヒーヤ、アルショカ村No.13グループのリーダーと出納係

私たちの状況は新型コロナウィルスの感染拡大以前から厳しいものでしたが、いまや、さらに難しい状況となっています。移動規制の中では飼料や家畜用の薬を購入しに行くのも簡単ではありません。夜には完全外出禁止令が出ているので、夜間に羊に何かあっても、獣医のところに行くことも獣医が来てくれることもできないのです。ほかにも、私たちが生産している緑肥(羊のエサの一つ)を他の女性グループに届けることも大変です。以前は毎日届けていたところ、今は移動規制のせいで週に2回に限定しなければならなくなりました。

エクラム、アルショカ村No.23グループリーダー、設立申請中の女性組合代表

私たちのコミュニティで女性として羊の畜産を経営していくことは極めて大変なことです。羊の世話をし、飼料を購入し、獣医とコミュニケーションをとって、マーケットに出向き家畜販売業者と交渉することが、事業を続けていく上でこなさなければならない日々の仕事なのです。移動規制は私たちの仕事を阻害しています。そんな中だからこそ、私たちは何とか代替策を見つけ、女性畜産農家として、互いに支えあっていかなければいけません。

ヒンドゥ、ナセル村郊外グループNo.39リーダー

羊を売ろうにも地元の畜産市場が閉鎖されているのです。そのため、羊の販売業者を私たちの羊小屋まで招いて売却していますが、このやり方だと販売価格が下がってしまいます。さらに、生乳やチーズの販売から得ていた日々の収入もなくなってしまいました。というのも、私たちには、毎日注文してくれたり、週に一度チーズを買ってくれる顧客がいましたが、移動規制が導入されて乳製品を届けに行けなくなってしまったのです。それに顧客の中にも私たちの製品から新型コロナウィルスが移るのではないかと懸念する人もいます。私たちの製品は手作りですから、衛生基準に則った工場製品にこだわる顧客が増えているのです。彼らは輸入品や工場で低温殺菌処理された生乳やチーズを好んで買うので、私たちのような小規模の事業経営は苦戦しています。

[1] 出典:OCHA “Double quarantine in Gaza: COVID-19 and the blockade”

(ガザ事務所 サハル)

※この事業は外務省NGO連携無償資金の助成と皆さまからのご寄付により実施しています。

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ガザ事業:家庭用チーズ作り研修@ハン・ユニス https://www.parcic.org/report/palestine/palestine_gaza_dairyfarming/16548/ Thu, 02 Apr 2020 03:04:34 +0000 https://www.parcic.org/?p=16548 ガザ地区において2018年度から継続的に実施している「酪農を通した女性グループの生計支援」事業。2018年度は、ラファ地区の22の女性グループを対象にしていましたが、2019年度は、ハン・ユニス県ギザン・ラシュワン村及びナッジャール村の7つの女性グループが活動に加わりました。

羊の畜産や酪農を新たに開始した女性グループを対象に、家庭でも出来るチーズ作りを学ぶ1日研修を2月に開催しました。研修では羊のミルクの搾乳方法から始まり、ホームメイドのチーズ作りを実際に調理しながら学びました。パレスチナでは、羊のミルクから塩漬けにしたセミハードのホワイトチーズもしくはお菓子用の柔らかいスイートチーズを作るのが一般的ですが、今回はピリリとしょっぱいホワイトチーズ作りに挑戦しました。

研修では、原料に加えるべき材料や、チーズを作り包装した後の適切な保管方法など、いろんなトピックを学びます。講師の畜産専門家からは、正しい方法で搾乳を行うことの重要性や、良質で衛生的な搾乳方法について、強調して説明されました。昨年実施した羊飼育研修でも学んだ、製品を市場に出す前にまず消費者のニーズを研究し、市場と原材料のコストに基づいて価格を決めることの重要性も併せて復習しました。

参加者は新しい技術の習得にとても意欲的で、パルシックの畜産専門家と一緒になって、ミルクの低温殺菌処理や不純物の除去、チーズ作りを楽しみながら参加していました。

ここまで読んでくださった皆さん、もうすでにお腹が空いてしまったことでしょう!チーズ作り研修の現場から届いた写真を是非お楽しみください!

畜産専門家がミルクの搾乳機のパーツと使用方法について説明しています。

畜産専門家がミルクの搾乳機のパーツと使用方法について説明しています。

チーズ作りの最初の工程は、ミルクの低温殺菌処理です。家庭でもできる簡単な方法を紹介します。ミルクを68~72度まで熱し、その後容器をコンロから直接冷水に移して、温度が40度に下がるまで急速に冷やします。

チーズ作りの最初の工程は、ミルクの低温殺菌処理です。家庭でもできる簡単な方法を紹介します。ミルクを68~72度まで熱し、その後容器をコンロから直接冷水に移して、温度が40度に下がるまで急速に冷やします。

低温殺菌処理した後のミルクは暖かい場所に40分間置いておきます。布で覆うことで、固形化させます。

低温殺菌処理した後のミルクは暖かい場所に40分間置いておきます。布で覆うことで、固形化させます。

布でフィルタリングしたあと、チーズを筵(むしろ)のマットに移し、筒状にします。その後、マットを押さえてチーズの水分を絞り出します。これがカット前の出来上がったチーズです。

布でフィルタリングしたあと、チーズを筵(むしろ)のマットに移し、筒状にします。その後、マットを押さえてチーズの水分を絞り出します。これがカット前の出来上がったチーズです。

素晴らしいチーズを作るため、一生懸命にやったからこそ、カッティングはわくわくする作業ですね!

素晴らしいチーズを作るため、一生懸命にやったからこそ、カッティングはわくわくする作業ですね!

チーズ作りの最終ステージ。チーズを塩で覆い、十分に硬くなるまで15分程度置いておきます。

チーズ作りの最終ステージ。チーズを塩で覆い、十分に硬くなるまで15分程度置いておきます。

製造工程をすべて終えた後は、作ったホワイトチーズの試食タイム。美味しそう!

製造工程をすべて終えた後は、作ったホワイトチーズの試食タイム。美味しそう!

現在、対象女性グループのメンバーがチーズ作りを行う女性協働組合の立ち上げを準備していますが、今後この組合メンバーを対象に、機械を用いたより質の高いチーズ作りの研修を実施する予定です。

※この事業は、外務省のNGO連携無償資金協力の助成および皆さまからのご寄付により実施しています。

(パレスチナ事務所 ヤラ)

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ガザ:対象女性グループの拡大と組合づくりへ https://www.parcic.org/report/palestine/palestine_gaza_dairyfarming/15634/ Mon, 18 Nov 2019 08:20:38 +0000 https://www.parcic.org/?p=15634 2年目となる酪農を通した女性グループの生計支援事業では、今年、ラファ地区のアルナセル村及びその近郊、アルショカ村の22の女性グループに加えて、隣県ハン・ユニス地区ギザン・ラシュワン村及びギザン・アルナジャール村の7グループが活動に加わりました。ハン・ユニス県の両村は2014年のガザ侵攻以降、人びとが被害の大きかった東部国境地域から、より内陸部へと移り住んだために人口が急激に増加し、支援も手薄となっていたため、農業省から要請を受け2年度から対象となりました。

現在、これらの29の女性グループが羊の畜産(子羊の販売)、酪農(チーズ作り)、水耕栽培用コンテナを使った飼料の自家生産に段階的に取り組んでいます。

活動が2年目に入ったラファ県の22グループはすでに子羊を4回販売し、母羊が妊娠中で、搾乳が可能な期間にはチーズ作りを行い、地域での販売も行っています。今後、さらにチーズ作りの活動を拡大していくことを計画しているため、当面の女性グループの課題は搾乳量の増加です。搾乳量は母羊の妊娠期間に左右され、160リットル得られる月もあれば、妊娠期間が合わず全くない月もあります。また、1グループの搾乳量だけでは大きな市場や卸売業者を相手に販売するには少なく、女性グループが集まって女性協働組合を組織し、共同出荷できる体制を作っていくことが必要となります。

2019年6月下旬頃から、女性組合設立に向け、女性メンバーたちの話し合いが始まりました。

「妊娠期間を調整し、搾乳時期をグループごとで割り振って、常に一定の搾乳量を確保できるよう、畜産を計画的にも行うべきよね」
「組合登録に必要な手続きは・・・」

とやることが山積みの中、話し合いにも熱が入っています。

組合登録を担当する労働省による説明会

組合登録を担当する労働省による説明会

組合登録に向けて、まずは組合管理を担っているガザ地区の労働省から講師を招き、登録プロセスや条件を学ぶワークショップを開催しました。また、ガザ地区中部デイル・アルバラ地区にあるアル・サワフィリ乳製品工場を工場長の厚意で見学させてもらい、搾乳量の増加のため、今まで手絞りで行っていた搾乳を自動化する機械の導入とトレーニングも始まりました。10月3日には “起業” や “ビジネス” のイメージをつかむために、ハン・ユニス地区で大きなスクリーンのあるイベントホールを無料で貸してもらい、レバノンのパレスチナ難民キャンプにおいてキャンプの女性たちとフードケータリングの起業に挑むマリアムさんのドキュメンタリー映画 “Soufra” をメンバーたちと鑑賞しました。

鑑賞後のディスカッションでは

「私たちとマリアムさんたちは置かれた状況も抱える困難や問題もとても似ている!」
「マリアムさんのようなリーダーシップを身につけたい!」
「彼女たちがやろうとしていることと私たちがやろうとしていることは、活動内容は違えども、とても似ていて参考になる」

などなど反響がたくさんあり、組合立ち上げに向けてより具体的なイメージをつかんだ様子でした。まだまだ遠い道のりを、一歩ずつですが、組合形成に向けて準備を進めています。

チーズ作りのワークショップ

チーズ作りのワークショップ

搾乳量増加のため搾乳機を配布

搾乳量増加のため搾乳機を配布

生産したミルクからチーズを作る女性

生産したミルクからチーズを作る女性

(ガザ事務所 タグリード)

女性グループのリーダーを務めるナェマ・アブルーリーさん(息子2人、娘2人を育てる40歳のお母さん、アルショカ村)の話

ナェマ・アブルーリーさん

ナェマ・アブルーリーさん

私がプロジェクト参加者として選ばれるとは思っていませんでしたから、参加できて嬉しいです。今、私の自由な時間は何かポジティブなことをするための時間になりました。

義母は目と耳の両方が不自由で、人手を必要としています。子どもや夫の世話もあります。その中で、水耕栽培用コンテナを管理し、羊の世話のシフトをこなすので、本当にしっかり時間の管理をしなければいけません。当初はもちろん簡単ではなかったですが、今ではうまくやりくりしていますよ!時間を有意義なことに賢く使っています。

夏休みの間は、子どもたちが家事をすべて責任もってやってくれます。私がプロジェクトに時間を割けるできるようにね。

毎朝、水耕栽培用コンテナに行って大麦の生育状況をチェックしています。他のメンバーが大麦を栽培用トレイに広げるのを手伝い、生育スケジュールに従ってトレイの高さを入れ替えます。そしてそれぞれのメンバーに入れ替え後のお世話についてタスクの割り振りを行います。その後、羊飼育小屋に行ってグループメンバーの仕事をチェックします。サポートが必要な場合もありますから。午後は羊のチェックを行い、夕方には大麦の種を洗って翌日まで暗所に保管します。

水耕栽培用コンテナで大麦の生育状況をチェックするのが日課

水耕栽培用コンテナで大麦の生育状況をチェックするのが日課

プロジェクトを通してとても素敵な人びとに出会うこともできました。他の女性メンバーがお互いに訪問しあう機会があって、今でもよい関係を持ち続けるようにしています。

最初の収入を得たとき、とてもわくわくしました。乾燥機付きの全自動洗濯機を買いました(※ガザ地区では注水を手で行う半自動の洗濯機を使っている家庭も多い)。2回目の収入で服や靴、生活に必要なものを買いました。それに驚かないでね、お金が急に必要になった時のために貯金までしているのよ!自分が自立できていると感じています。

私は今では羊へのワクチンの注射の仕方を知っています。鳴き声で羊が何を必要としているのかがわかります。良い経験をたくさん積むことができて本当に幸運です。

昨年、羊の配布を受けたときのことを覚えています。夜、羊の出産があって、ずっと羊の赤ちゃんを温めて、様子を見守って授乳しなくてはいけなくて・・・すごく感動的だったわ!

もちろん課題もあります。私が気にかけていることは、プロジェクトを最後まで継続し、より大きなものへと発展させていくこと・・・私たちみんなが責任をもって全力で取り組んでいくことを願っています。将来、他の女性たちと協力してカェク(※アラブ地域の焼き菓子)やマフトゥール(※西アジア地域で食べられているクスクス。サラダやスープに使われる)を作ってさらに収入を得たい、というアイディアもあります。みんな料理は得意だし、やらない手はないでしょう?!

自分たちの手で生活を良くしていくチャンスをくれたことを、日本の人びととパルシック、そしていつも私たちのそばで支えてくれるパルシックガザチームに感謝しています。

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ガザ:6人7脚の奮闘~女性グループで畜産開始 https://www.parcic.org/report/palestine/palestine_gaza_dairyfarming/14324/ Fri, 18 Jan 2019 02:25:51 +0000 https://www.parcic.org/?p=14324 3月30日の「土地の日」からガザ地区で始まった、難民の帰還権を求める市民の抗議デモ「帰還の大行進」は、メディアでの報道が下火になってきた現在もなお、多数の死傷者を出しながら続いています。2018年12月17日現在、デモ隊の死者は250名、重傷者を含めた負傷者は26,039名に上ります[1] 。負傷者数だけ見れば、2014年のイスラエルによるガザ侵攻を上回る規模となっています。また、手足の切断手術が必要となった人111名、後遺症(麻痺、失明)が残った人27名など重篤な後遺症も多数報じられています。

一方、パレスチナの内部でも、6月頃よりヨルダン川西岸・ガザ地区統一政府への権限移譲をめぐり、西岸地区を支配するパレスチナ自治政府とガザ地区を実効支配するハマスの間の対立が顕在化してきました。自治政府は、ガザ地区への送金の停止、公務員の給与や生活保護・遺族給付支払いの停止、電話等テレコミニケーションサービスの停止、旅券給付サービスの停止など、ガザ地区に対する様々な経済制裁を行うとたびたび言及しており、状況は張りつめています。

 

パルシックが外務省のNGO連携無償資金協力の助成を受けてラファ県東部で実施する「酪農を通した女性グループの生計支援」事業では、2018年3月に事業説明会とともに支援対象者の選定を開始しましたが、支援要請の申し込みが約1,080世帯も殺到する事態となりました。

地域で活動する市民団体(Community Based Organizations: CBOs)や町・村役場のソーシャルワーカー、コミュニティ・リーダーなどの力を借りて、1世帯ずつ精査・訪問し、対象世帯を選定していたさなかの5月、「ナクバの日」前日に強行されたアメリカ大使館のエルサレム移転によって[2] 、治安が急激に悪化しました。一時、事業対象地でも、特にイスラエルとの停戦ラインに近いラファ県東部の村の訪問を中断しなければなりませんでした。

緊迫した状況が続く中、本当につらいことですが「帰還の大行進」デモで家族が重傷を負い、その対応で協働の畜産・酪農活動に継続的に参加できなくなった女性から、事業への参加を辞退したいという申し出もありました。

先の見えない不安な日が続きましたが、8月、ついに畜産・酪農活動に参加する21の女性協働グループを選定し、羊小屋の建設に着手することになりました。1戸の羊小屋の建設には約1.5~2週間程度かかります。小屋は60㎡の屋内と、囲いのあるオープン・スペースから成り、今後の子羊の増加を見据えて15~20頭程度が無理なく飼育できる設計となっています。

小屋の建設開始にあたっては、パルシックの畜産専門家が、女性グループが提供する小屋の建設予定地を一つひとつ訪問し、土地の高低(低い土地は雨季に洪水被災となる可能性が高い)、水源へのアクセス、女性グループメンバーたちの家からの距離、周辺の治安状況などを確認したうえで決定しました。その後、土地所有者(グループメンバーやその親族)との土地使用契約や、メンバーの協働活動についての誓約書など、細かい契約手続きを公証役場で行います。その上でようやく、入札で決定した業者が羊小屋の建設に着手します。その各段階の工事で畜産専門家が細かく施工をチェックし、デザイン・仕様の微修正や施工の甘い部分のやり直しなどを指示します。指示が細部にわたるため、業者側の工事監督者と何度もミーティングを重ねました。

羊小屋の屋根設置

羊小屋の屋根設置

[1] イスラエル側は死者1名、負傷者40名。
[2]  1948年、イスラエル建国によって発生したパレスチナ住民の強制非難・難民化を記憶する日。イスラエル、パレスチナ双方が首都と主張するエルサレムの地位については、オスロ合意において、今後の和平交渉の中で話し合い、最終決定することとなっているが、エルサレムを「イスラエルの首都」であるとして行われたアメリカ大使館のエルサレム移転はこれを無視するものであった。

羊小屋の建設と並行して、8月12日から順次、女性たちに畜産研修も実施しました。研修のトピックは、羊小屋の構造から搾乳、種付けの方法、子羊の週齢に従った餌のやり方や病気の種類と治療方法、畜産にかかる管理費と収益のバランスまで広範囲に及びました。女性協働グループは6人1組の女性たちからなり、メンバーが羊の世話や小屋の掃除、搾乳などをシフト制でこなします。つまり、メンバー全員が羊の日々のお世話やお産、搾乳に参加することになるのです。もちろん、研修後も実地指導は行いますが、基礎となる研修内容は参加者全員がしっかり集中して習得してもらわなければなりません。そのため、研修中は携帯電話の着信音を切り、電話に出ることがないよう、畜産専門家が女性たちに厳しく指導する場面もありました。基本的には搾乳機による搾乳が品質管理・衛生上望ましいのですが、電気や情勢が不安定なガザ地区のこと。手絞りの搾乳を行う訓練も実施し、参加者たちも「エア乳しぼり」で練習しました。研修終了後には、参加者たちの代表が学んだことを要約して発表するとともに、知識テストできちんと身についているかどうかを確認しました。

「エア乳しぼり」で練習

「エア乳しぼり」で練習

9月6日より、小屋の建設が完了したグループが順次羊の配布を受け、現在20のグループで畜産を開始しています。まず妊娠4か月の母羊7頭を配り、子羊が生まれた約1カ月後に、今度は妊娠2か月の母羊7頭と雄羊1頭、計15頭を配っています。段階的な配布にすることで、メンバーたちが日々の世話を学びながら、無理なく畜産規模を拡大できるようにと配慮しています。

配布する羊は全頭、配布前に、地域の獣医さんの協力を得て腹部エコーによる妊娠チェックと皮膚病や感染症のチェック、農業省獣医局の協力を得て血液検査(ブリセラ病、クラミジア感染症の罹患検査)を受けます。これらすべてをクリアした羊のみが女性グループの手元にやってくることになります。羊の配布当日、道路で降ろされた羊たちは、業者や畜産専門家、付き添いの獣医に護送されながら、家々の間を通って真新しい小屋まで列をなして歩いていきます(先頭の羊を捕まえて引っ張っていくと、残りの羊がそのあとをついてくるので簡単に誘導できるそうです)。羊小屋の中ではメンバーの夫や子どもたちが鈴なりになっていました。みんな、ふわふわの羊たちに興味津々。

羊の配布を行う業者とスタッフ

羊の配布を行う業者とスタッフ

羊を小屋まで護送

羊を小屋まで護送

子羊の検診と予防接種を行う獣医さん

子羊の検診と予防接種を行う獣医さん

畜産専門家と獣医が、その場で女性グループメンバーたちに、妊娠期の羊の餌のやり方、助産の方法と緊急時の連絡、日々の世話とシフトをもう一度確認しました。中には住環境が変わったことで「ホームシック」になる羊も。羊の畜産が本格化してからは「羊がご飯を食べないのだけど、どうしよう」「後産(分娩後の胎盤の排出)がうまくいっていないみたいだけど、何をしたらいいの」など畜産専門家や獣医さんの携帯電話にはひっきりなしに女性たちのSOSや相談が届き、そのたびに2人が事務所を飛び出していきます。

飼育記録をチェックする女性メンバーとスタッフ

飼育記録をチェックする女性メンバーとスタッフ

ヤスミーンさんがリーダーを務める女性グループは、羊小屋が真っ先に完成した第一号グループ。10月訪問した際、ヤスミーンさんのグループでは、すでに子羊が6頭生まれていました(羊は妊娠期間5ヵ月程度で1~2頭の子羊を出産します)。

「事業対象者に選ばれるとは思っていなかったの。とても申請者が多かったんだもの。」

とヤスミーンさん。2014年のガザ侵攻で家が全壊し、飼育していた羊10頭もすべて失い、生計手段を失ってしまった彼女は、この事業に参加するまで社会福祉省の生活保護を得ながら、近隣の農地でブドウの葉摘みの農業労働を行い、何とか家計を支えていました。収穫したブドウの葉1kgあたり、2ILS (2イスラエルシェケル:約62円)の賃金をもらっていたと言います。

「私も他のメンバーも、昔から働くことには慣れているの。働きたいってやる気でいっぱいなのよ」

事業に参加する女性たちは皆、世帯の稼ぎ手。ヤスミーンさんも、腎臓の病気で働くことのできない夫を支え、6人の子どもたちを養う一家の大黒柱です。

「グループのリーダーとして責任と自信を感じるの。幸い、メンバーとはとてもうまくいっているわ。お互いによく話をするし、メンバーもきちんと1日の作業内容を報告してくれるの」

メンバーの子どもたちも熱心に働くお母さんたちを見て、羊小屋の周りを掃除したり、床に敷く砂を運んできたり、育児放棄された子羊に母乳を飲ませたり、一生懸命手伝ってくれるそうです。

メンバーの子どもたちもお世話に参加

メンバーの子どもたちもお世話に参加

ヤスミーンさんのグループでは、毎日の搾乳で得た新鮮な羊ミルクを隔週で家庭消費用にメンバー内で分配しているほか、1週間おきに伝統的なチーズやヨーグルト(ラバネ)に手作りしています。「おいしくできたわ」と言いながらも、ヤスミーンさんの探求心と情熱はとどまることを知りません。

「もっとプロフェッショナルな乳製品作りを学ぶチャンスがほしい。ベターじゃなくてベストな品質のチーズを作って、しっかり市場に売り込めるようになりたいわ」

最近では、近所のスイーツ屋さんがヤスミーンさんのグループにチーズの卸売りを打診してきたといいます。12月の訪問の際には、ピザ用のとろけるチーズ作りにも挑戦中でした。

(パレスチナ事務所 盛田)

※この事業は外務省NGO連携無償資金の助成により実施しています。

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