食べる – 特定非営利活動法人パルシック(PARCIC) https://www.parcic.org 東ティモール、スリランカ、マレーシア、パレスチナ、トルコ・レバノン(シリア難民支援)でフェアトレードを含めた「民際協力」活動を展開するNGO。プロジェクト紹介、フェアトレード商品販売など。 Wed, 22 Mar 2023 05:42:00 +0000 ja hourly 1 https://wordpress.org/?v=6.4.1 マルハバ!ラマッラー駐在員のパレスチナ日記#5 https://www.parcic.org/report/palestine/palestine_eat/22195/ Wed, 22 Mar 2023 05:39:07 +0000 https://www.parcic.org/?p=22195 マルハバ!(こんにちは)

3月からパレスチナ・ヨルダン川西岸地区の中心地ラマッラーに駐在している吉田です。これからパレスチナでの生活や現地の状況について様々な観点から発信できればと思っています。どうぞよろしくお願いいたします!

初回となる今回は、事務所周辺にあるレストランについて紹介します。

パルシックの事務所は、ラマッラーの中心部から徒歩10分の場所に位置しており、ランチタイムには外食に出かけています。ピザやファラフェルサンドといった軽めのランチから、しっかりとお腹にたまるマクルーベまで、その日の気分でランチタイムを楽しんでいます。

「ひっくり返したもの」という意味の伝統料理マクルーベ。夕飯用に持ち帰り用の入れ物をもらい、食べきれなかったご飯を持ち帰っています

ハンバーガーやベーコンサンドがありました。ラマッラーでは豚肉が食べられる場所がわずかながらあります

本格的なパッタイが食べられるアジア料理屋さんが近くにあります

仕事終わりに、特大ピザとワインで花金ならぬ花木をしました。(パレスチナでは金曜日と土曜日が休日です)

(”Palestine breakfast”を注文して出てきた朝食メニュー。お店によって多少中身は異なるようです)

こちらの”Palestine breakfast”は、写真の①~⑪の具材やスパイスを⑦ピタパンにディップしたり挟んで食べます。

①ソラマメのディップ
②⑦のホムス(パン)に⑩ザータルを一緒につけて食べるためのオリーブオイル
③バター
④ラバネと呼ばれる水切りヨーグルト
⑤ホンモス(ひよこ豆をすり潰し、ニンニク、練り胡麻、オリーブオイル、レモン汁などを加えてすり潰し、塩で調味してペースト状にしたもの)
⑥ナブルスチーズ(厚揚げのような見た目ですが、硬くて塩辛いチーズです)
⑦ピタパン(主に中東で主食であるパン)
⑧トマト煮込み
⑨いちごジャム
⑩ザータル(中東料理には欠かせないハーブスパイス)
⑪スクランブルエッグ

辛いナブルスチーズを食べた後にラバネやイチゴジャムを食べると、ちょうどよい塩梅で、色々と試しながら食べ合わせを楽しみました。

赴任してもう少しで一ヶ月が経ちますが、美味しい料理とおしゃれなレストランやカフェのおかげで食には困っていません。予想していたよりも様々な料理を楽しむことができ、今後も開拓は続きそうです。しかし、外食の価格は決して安くはありません。一食1500円程もよくあります。少しずつ生活環境を整えて時にはお弁当を持参してやりくりしていきたいと思います。

またラマッラーにはカフェがたくさん立ち並び、シーシャ(水たばこ)を楽しむお客さんで賑わっています。こちらに来てまだ一度しかシーシャをしていないので、これから様々なフレーバーのシーシャを試してみたいと思ってます。

(西岸事務所 吉田)

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マルハバ!ラマッラー駐在員のパレスチナ日記#4 https://www.parcic.org/report/palestine/palestine_eat/21921/ Wed, 01 Feb 2023 09:25:18 +0000 https://www.parcic.org/?p=21921 マルハバ(こんにちは)!

パレスチナ・ヨルダン川西岸地区ラマッラーから高橋です。

日本でも同じだと思いますが、誰かの家やオフィスにお邪魔すると飲み物を出してくれます。お茶だったり、コーヒーだったり。もしくは、コーヒーを飲み終わったころに、お茶もどうぞ、と出してくれることもあります。

パレスチナでお茶というと紅茶で、パレスチナ(アラビア語)ではお茶はシャーイと言います。慣れないうちはチャイと言っているのかな?と聞こえましたが、南アジアで飲まれるスパイスとミルクで甘く煮だしたチャイとは違います。ここではお茶にはセージやミントを入れて飲むことが多いようです。

事業地の一つ、ラマッラー県カラーワ村では生のセージの葉っぱを浮かべて出してくれます

お湯が沸騰しているヤカンに生のミントを入れています。このヤカンにさらに茶葉を入れてミントティーにします

事業地の一つ、ナブルス県北アシーラ市を見下ろす絶景の前でセージ入りのお茶を沸かしています。現地スタッフのラミさんは、お茶セット(ヤカン、水、ハーブ、茶葉)を車に常備していて、どこでもサッとお茶を淹れてくれます

北アシーラ市のオリーブ農家がオリーブを収穫していたところにお邪魔をしたら、お茶をごちそうしてもらいました

食料雑貨店の店先で、様々な乾物と一緒にセージ(アラビア語でマラミーヤ)が並んでいます。真ん中の白い袋に入っているのがセージです

今のところラマッラーでは紅茶専門店は見かけていません。食料品店でティーバックに入ったお茶や、茶葉を購入するのが一般的なようです。ちなみにGreen Teaを好んで飲む人もよくいます。

パルシックのラマッラー事務所のヤラが事務所でよく飲んでいるのはGreen Teaです。こちらでよく見かけるGreen Teaは、中国産の茶をイギリスでパッケージングしたものです。日本の緑茶に比べて甘みがなく、さっぱりとした味です

好みでお砂糖は入れて飲んでいる人はよく見ますが、ミルクを入れている人ははあまり見かけません。もちろんおしゃれなカフェに行くとティー・ラテなどはあるようです。自分が飲むものを選ぶとどうしてもお茶よりもコーヒーを選んでしまうので、ラマッラーっ子が飲んでいるお茶については今後も観察を続けて、また報告します。

(西岸事務所 高橋)

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マルハバ!ラマッラー駐在員のパレスチナ日記#2 https://www.parcic.org/report/palestine/palestine_eat/21595/ Fri, 02 Dec 2022 06:37:30 +0000 https://www.parcic.org/?p=21595 パレスチナ・ヨルダン川西岸地区の中心地ラマッラーに駐在している高橋です。
ラマッラーの中心部には青果市場があります。大きなスーパーマーケットに行けば野菜売り場がありますが、鮮度、値段ともに市場のほうがよいので、私は野菜と果物はこの市場で買うことにしています。

オクラ

最初に市場に行ったときに、色や大きさが若干日本のものとは違うけれど、見たことのある野菜や果物が多いなという印象を持ちました。見たことのあるものが多いとはいえ、オクラの小ささには驚きました。小指の先ほどの大きさしかありません。オクラの隣にあるのは、スコッシュと呼ばれるズッキーニに似た野菜です。

モロヘイヤ

パレスチナでとてもよく食べられている野菜です。日本ではおひたしにすることが多いと思うのですが、こちらでは煮込んでスープにすることが多いようです。

果物屋さん

リンゴや桃、キウイフルーツ、柑橘類、バナナあたりは日本の果物屋さんに並んでいるものと似ています。柿もたくさん売っています。柿は東アジアの果物だと思っていたので、初めて来たときには、柿がこんなにたくさん並んでいてびっくりしました(※1)。パレスチナやイスラエルでも生産しているそうです。市場で柿を見る度に、大昔シルクロードを通って来たのかなあ、とぼんやり考えていましたが、私が住んでいる部屋の大家さんに聞いたこところ、ここ数十年くらいでよく見るようになったそうです。

柿とロケットとホワイトチーズのサラダ。右上のペットボトルに入っているのがオリーブオイル

日本の柿と同じようにとても甘いので、しょっぱいホワイトチーズとあわせてサラダにしました。先日、北アシーラの農業組合のオリーブ搾油所でもらった搾りたてのオリーブオイル(ペットボトルに入っている緑の液体)と、庭のレモン、ペッパーで味付けしました。

ザクロも山盛りで売っています

個人的に一番気分が盛り上がるのはザクロです。道産子の私にとって(北海道では栽培していませんので)、子どもの時には絵本でしか見たことがなかったので、ザクロは憧れの果物です。1個5シェケル(2022年11月時点、200円くらい)くらいで買えるので、市場に行くと必ず買ってしまいます。アミル(※2)のように、がぶがぶとかぶりつくのは難しいですが、粒をバラバラに外してから、一回で1個ペロッと食べてしまいます。ザクロを絞ってフレッシュジュースにして売っているのも町でよく見かけます。

ちなみに野菜や果物の価格ですが、リンゴや桃が1キログラムで10シェケル(2022年11月時点、400円くらい)くらいで買えます。オクラも1キログラムで10シェケルくらいです。私は一人暮らしで、そんなにせっせと料理をしないのでキロ単位で買うことはありません。きゅうり2本、トマト3個、玉ねぎ1個、ザクロ1個を袋に入れて重さを量ってもらい「全部まとめて10シェケル」という買い方をします。アラビア語の勉強を始めたばかりの私には何がいくらだったのかよくわかりません。

※1 ヨーロッパや南米でもよく食べられている地域があるようです。
※2 私の愛読書、19世紀後半の西アジアを舞台にした「乙嫁語り」(森薫)という漫画のザクロが大好きな主人公です。

(西岸事務所 高橋)

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マルハバ!ラマッラー駐在員のパレスチナ日記#1 https://www.parcic.org/report/palestine/21477/ Fri, 11 Nov 2022 05:55:44 +0000 https://www.parcic.org/?p=21477 マルハバ(アラビア語でこんにちは)!

10月からパレスチナ・ヨルダン川西岸地区の中心地ラマッラーに駐在している高橋です。西岸地区にパルシックのパレスチナ事務所があり、この日記では私が住んでいるラマッラー(※1)での日々の様子をご紹介していこうと思っています。

日々の様子というと、まず気になるのは食べ物だと思います。ラマッラーの中心部にはたくさんのレストラン、カフェ、パン屋さん、ピザ屋さんが並んでいます。お米の料理もありますが、ランチに手軽にとなるとサンドウィッチやお総菜パン、ピザが多くなります。どれも10シェケル前後(2022年11月時点で約400円)で、事務所からランチタイムに出かけています。

マナイーシュ

薄いパン生地の上にザータル(タイムをベースにゴマや塩、スマックなどを混ぜたミックスハーブ)やチーズなどをのせて焼いたピザのような食べ物です。大きめの手のひらサイズです。

お兄さんがピザ窯から焼き立てアツアツを出してくれます

とりあえず“1つください”と頼んだら出てきたピザ

ラマッラー事務所のすぐ近くにある、とても人気のピザ屋さんです。手のひらサイズの一人前で焼いてくれます。たくさんの種類があるのですが、私がまだアラビア語で注文できないため、なかなか希望の注文ができずにいます。

ナブルス・オムレツ

パンに疲れた時に、パン以外を食べたくてオムレツを注文したら出てきたもの。注文した時にお店の人が「パンもつくよ」とは言ってくれたのですが、パンの上にオムレツがのってくるとは思いませんでした。「ナブルス」は西岸地区の地名で、クナーファというホワイトチーズ(※2)をたっぷり使ったアラブスイーツの発祥の地とされています。ホワイトチーズを使った他の料理にも、「ナブルス」とついていることがあります。

ピクルスセット

店内で食べると、このピクルスセットがお通しのように出てきます。オリーブ、ガーキン(小さいキュウリ)、カブ(赤く色づけされている)、唐辛子などのピクルスに、生のトマトやキュウリのスライスがついてくることもあります。

実は赴任してから自炊する環境が整うまで、何日も3食パン生活が続いたためか、1週間ほど胃の調子が悪くなってしまいました。小麦アレルギーになってしまったのかと心配もしましたが、今ではすっかりパンと仲直りしています。

※1:ラマッラーの基本情報については、以前の駐在員のレポートを参照ください 。

ラマッラー現地レポート#1

※2:ホワイトチーズとは、牛乳や羊乳で作ったフレッシュチーズを塩漬けにしたチーズです。西岸では、スーパーマーケットに行けば様々な種類のチーズを見かけますが、パレスチナでチーズと言えばまずはホワイトチーズのことを指します。

パレスチナのチーズ料理とチーズの作り方(READYFORクラウドファンディングサイトへ)

(西岸事務所 高橋)

マルハバ!ラマッラー駐在員のパレスチナ日記#2へ

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アラブの定番スイーツ「マアムール」のレシピ大公開! https://www.parcic.org/report/palestine/palestine_eat/16922/ Fri, 29 May 2020 02:37:30 +0000 https://www.parcic.org/?p=16922 マアムールはラマダン(断食月)やその後のイード(ラマダン明け祝祭)で食べるアラブの定番スイーツの一つ。中にデーツのペーストが入ったクッキーのようなお菓子で、甘いお菓子が多いアラブの中で、甘さ控えめのとてもおいしいお菓子です。

作り始める前に材料として以下のものをご用意くださいね。

<材料>
セモリナ粉 1㎏
澄ましバター 2カップ
粉ミルク 大匙3
粉砂糖 大匙3
イースト 大匙1/4
デーツ 1㎏
シナモンパウダー 適量

それでは、マアムールお料理教室を始めましょう! 

1.まずはセモリナ粉を澄ましバターに浸してよく混ぜます。

2.生地を容器に入れて蓋をし、3日間時々混ぜながら寝かします。その後、粉ミルクと粉砂糖、イーストを加え、3/4カップ以下のぬるま湯と混ぜ合わせます。

3.デーツペーストとシナモンパウダー、バターを混ぜたものを小さなボール状にします(デーツボール)。ナッツとピスタチオを入れるのもオススメ。

4.型の真ん中に生地を押し入れ、その中央にデーツボールを入れます。その上から少量の生地で蓋をしてください。いろんな種類とデザインの型があるのでお好みのものを選んで!

5.マアムール型と型抜きした生地。型をトントンと叩いて生地を取り出します。

6.クッキー生地をシートに並べ、10-15分、生地が綺麗な狐色になるまで焼きます。

7.粉砂糖を振りかけます。甘さ控えめが良い方はこの工程を飛ばしてくださいね。

8.出来上がったマアムール。あとは食べるだけ!同じくイードのお菓子であるカェクとデーツ、ロクム(グミやゼリーのようなアラブ菓子)を添えて。

(レシピを知りたい!という方はぜひお問合せまでご連絡くださいね。)

さあ、召し上がれ、そして楽しいイード休みを! 

(パレスチナ事務所 ヤラ)

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ラマダンの雰囲気 https://www.parcic.org/report/palestine/palestine_eat/14727/ Fri, 31 May 2019 10:11:08 +0000 https://www.parcic.org/?p=14727 イスラムの聖なる月、ラマダンの始まりです!ラマダンはイスラム暦の特別な月で、日の出から日没まで、ムスリムは毎日断食します。もちろん、1ヶ月間飲まず食わずの生活は不可能なので、夜明け前にはその日1日を乗り切るために「スフール」と呼ばれる食事を食べ、長い断食の1日が終わると「イフタール」と呼ばれる日没後の食事をみなで分け合います。

断食中いちばん苦しい時間はイフタール直前、夕飯までの最後の辛抱の時間だと子どもたちは口をそろえます。断食をしていない人たちが目の前で食べているのを見るのもまたしんどい。ラマダンの間、ムスリムはお祈りや、コーランの読み方、困っている人びとの助けといった行いに集中するよう奨励されています。ラマダンは食べ物や水の価値を再認識する期間でもあります。断食している間、ムスリムは他人に対する寛容の気持ちを抱き、社会の恵まれない人びとを助けます。また家族やコミュニティの集まりを通して絆を深め、食べるものも飲むものも何もない時に、貧しい家族がどのように感じるのかを身をもって体験します。そして、1か月のラマダン月が終わると「イード」という大きなお祝いがやってくるのです。

断食後に出される代表的なメイン料理は、さまざまな風味とトッピングで味付けされます。その1つがカターイェフ(’カターイフ’のパレスチナ方言)。中東版のパンケーキ、カターイェフは、中身を詰め込み仕込んだあと、必要になるまで冷凍保存することができます。詰め物はチーズやナッツ、クリームなどを混ぜ合わせた物。完成後、シンプルな甘いシロップをふんだんにかけます。みんな大好きカターイェフ、ラマダン中にこれを食べない選択肢はないほど。ラマッラーのパン屋は1日に何千枚もの生地を大量に作ります。すでにカターイェフを愛してやまない方、もしくはお家の台所でカターイェフを作ってみたいという方は、写真で作り方をチェックしてみてください。

(ラマッラー事務所 ヤラ)

これがカターイェフの生地。ナブルス、ジャマイン村の露店でカターイェフの生地を焼くおじさん。

これがカターイェフの生地。ナブルス、ジャマイン村の露店でカターイェフの生地を焼くおじさん。

生地を手作りしたい方、材料と作り方は以下の通りです:

<生地材料>
・中力粉 2.5カップ
・水 2.5〜3カップ
・セモリナ粉 1/2カップ
・砂糖 1/4カップ
・ベーキングパウダー 小さじ1.5杯
・塩ひとつまみ
・カターイェフの中身
 ナッツ:ナッツに砂糖とシナモンを混ぜておく。
 チーズ:冷水にホワイトチーズを入れ塩分を取り除いておく。

カターイェフの生地を焼き、スプーン1杯(お好みで十分量)の中身を生地の上に乗せ、半月形を作るように半分に折り畳んで口を閉じます。

カターイェフは、揚げるか焼くかして、最後にシロップに浸してからピスタチオやココナッツフレークなどお好みのフレーバーをかけていただきます。

カターイェフは、揚げるか焼くかして、最後にシロップに浸してからピスタチオやココナッツフレークなどお好みのフレーバーをかけていただきます。

バターをぬってカターイェフの両面を15分間またはほんのり茶色になるまで焼く。 焼くと油控えめでヘルシーにいただけます。

カターイェフの完成!どうぞ召し上がれ。

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食べ物から見える中東(葡萄) https://www.parcic.org/report/palestine/palestine_eat/13161/ Thu, 29 Mar 2018 10:54:20 +0000 https://www.parcic.org/?p=13161 「スキーの後は、海水浴」が謳い文句のレバノン。「レバノン」とはアラビア語で「白」の意味です。地中海岸に並列する1,000~3,000m級のレバノン山脈とアンチレバノン山脈は、冬は美しく冠雪します。雪は春に溶け出し、2つの山脈に挟まれた標高1,000mのベカー高原に豊富な地下水をもたらし、ミネラル豊富な石灰質の土壌で栽培される葡萄からは、良質なワインが生まれます。

レバノンの葡萄栽培は5,000年前に遡ります。ベカー高原には、ワインの神バッカス(ギリシャ神話のディオニソス)を祀るローマ時代の神殿が残っており、1984年には世界遺産に登録されました。現在もカベルネ・ソーヴィニヨン、サンソー種の葡萄が栽培され、レバノン随一のワイン産地であるベカーですが、200年前に遡れば、農業の中心となる作物はマルベリーでした。

ベカー高原に残るローマ時代の遺構、バッカス神殿。

ベカー高原に残るローマ時代の遺構、バッカス神殿

マルベリーの実。

マルベリーの実

マルベリーは「トゥト」と呼ばれ、シロップやアイスクリームで親しまれています。当時の栽培の目的は、実よりむしろその葉で、養蚕業のためでした。生産されたシルクはレバノンの主要な輸出品として、フランス・リヨンに輸出されていました。しかしながら、1890年に「シルク危機」が訪れます。

1890年といえば、日本は明治時代。富国強兵・殖産興業の名のもと、外貨獲得のために生糸輸出が国策の1つとなり、1872年に日本初の官営模範製糸場、富岡製糸場が開業し、生糸輸出が著しく伸び始めた時期です。1930年までに日本は世界最大の生糸輸出国になった一方で、レバノンの養蚕業は衰退します。その後半世紀、日本は生糸から工業製品の輸出国となり、1980年には米国を抜いて世界最大の自動車生産国となった一方で、レバノンは海外移住者の増加やレバノン内戦(1975~1990年)に見舞われ、1990年には 世界最大規模(80%)の大麻、アヘンの輸出国になっていました。

レバノンの貧農家にとって、大麻栽培は違法でも、生活のために頼らざるを得ない作物で、社会問題になっていました。そこで、大麻撲滅キャンペーンが始まります。USAIDは酪農を、レバノン政府はジャガイモ栽培を勧めましたが、1,000平方m当たり$5,000 の利益があるとも言われる作物を栽培していた農家にとって、魅力的な代替品はありませんでした[1]。そこで2000年に、ベカーの11の村の農家たちが、フランスから技術支援を受けて立ち上げたのが、ヘリオポリス協同組合[2]でした。大麻やアヘンの畑を、シラー、カベルネ・ソーヴィニヨン、カラドック種の葡萄畑にする試みが始まり、今では250以上の農家がこれらの葡萄畑で働き、若者のドラッグ使用の撲滅、キリスト教徒とムスリムの協働も進められています。

2014年、富岡製糸場と絹産業遺産群が世界遺産に登録されたことは記憶に新しいところです。 若い日本人女性の労働で高品質の絹を生み、輸出産業が発展したことは嬉しい事ですが、外貨を得た日本がイギリスから軍艦を購入して、当時世界最強といわれたロシアのバルチック艦隊を破りさらに軍国化し、数多の犠牲者を出した歴史を忘れてはならないでしょう。

とても甘くて美味しいレバノンの葡萄。1kg 200~300円。

とても甘くて美味しいレバノンの葡萄。1kg 200~300円。

冠雪したレバノン山脈。ベカーの年間平均気温は15・4度で、昼夜の温度差が大きく、ローマとほぼ同じ気候です。レバノンの国土は約10,400平方キロメートルですが、地中海岸の温暖な気候、山岳部や高原地帯の涼しい気候と変化に富んでいます。

冠雪したレバノン山脈。ベカーの年間平均気温は15・4度で、昼夜の温度差が大きく、ローマとほぼ同じ気候です。レバノンの国土は約10,400平方キロメートルですが、地中海岸の温暖な気候、山岳部や高原地帯の涼しい気候と変化に富んでいます。

現在、レバノンでは60以上のワイナリーが年間900万本のワインを生産しており、シャトー・ミュザール(Chateau Musar)などの銘柄は国際的に高い評価を得ています。そして「ローマの穀倉地帯」といわれたベカー高原では、葡萄畑やジャガイモ畑、放置された畑の合間に、シリア難民が暮らすテントが立ち並び、レバノンで最大規模のシリア難民が暮らしています。この豊かな土地に住む9割のシリア難民が食糧不足状態にあり、パルシックも越冬支援として食糧を脆弱なシリア難民に配布しています。人びとが豊かさを取り戻すためには、何ができるのか。この地のワインは、白い山脈がもたらす豊かさと、21世紀最大の人道危機が隣り合う、多様な背景と歴史の中で醸造されているのです。

レバノンのレストランやカフェでは、バラエティー豊かな国産ワインと輸入ワインを選べます。お手頃な値段で、クオリティーの高いワインを楽しめるのが魅力です。

レバノンのレストランやカフェでは、バラエティー豊かな国産ワインと輸入ワインを選べます。お手頃な値段で、クオリティーの高いワインを楽しめるのが魅力です。

[1] Financial Times, 2014 MAY 16, Lebanese cannabis growers thank Syrian war for flourishing trade 

[2] ヘオポリス協同組合(Heliopolis Cooperative)の詳細はhttps://fairtradelebanon.org/en/stores/north-bekaa/coteaux-heliopolis-cooperative

(レバノン事務所 白井)

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トマトと卵の煮込み シャクシューカ https://www.parcic.org/report/palestine/palestine_eat/12532/ Fri, 10 Nov 2017 01:41:28 +0000 https://www.parcic.org/?p=12532 パレスチナの伝統料理「シャクシューカ」。唐辛子と一緒に煮込んだトマトに卵を落としただけの、シンプルでおいしい家庭料理です。トマトの上にポンと割られた卵は、日本語と同じく「目玉(Ain al Ayun)」と呼ばれています。パレスチナではよくシャクシューカをパンにつけていただきます。
日本でも簡単に手に入る食材でさっと作れる一品です。ぜひお試しください!

 

材料

  • オリーブオイル
  • 玉ねぎ
  • 青唐辛子(なければ赤唐辛子)
  • トマト
  • 塩(少々)
  • にんにく(お好みで)
  • パセリ(お好みで)

作り方

みじん切り玉ねぎと唐辛子、大量のトマトをひたすら煮詰め、塩をちょっとふり、その上から卵を落とします。
お好みでにんにくを入れると味に深みが出ます。パセリは盛り付けで上から散らします。

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パレスチナ:オリーブの季節がやってきた![2] https://www.parcic.org/report/palestine/palestine_eat/12472/ Mon, 06 Nov 2017 10:19:20 +0000 https://www.parcic.org/?p=12472 オリーブの季節がやってきた![1]より

そろそろ日も傾いてきて、おいとましようかとしていると、サーデクが村に2つある搾油所の1つにつれていってくれるとのこと。それはぜひ行ってみたい!できれば搾りたてオリーブオイルも買いたい!と厚意に甘えてマスハ村の搾油所へ。この日は週末の土曜日で開いているかどうか不安でしたが、搾油所はフル稼働中、何人もの農家さんが収穫したばかりのオリーブがぎっちり詰まった袋を持ち込んでいました。早速、いそいそと中を見学させてもらいます。珍客の乱入を不思議そうに見ていた搾油中の農家さんも「マルハバ!」と挨拶すると「いらっしゃい」と笑顔を返してくれました。

私たちが事業を実施するジャマイン町には、昔の伝統的な搾油所跡がカフェに改装されて残っていますが、こちらの搾油所はさすがに近代的です。この搾油所は地域の名士の一家の所有。村の農家さんは自由に搾油させてもらう代わりに、10ガロン(約38リットル)搾ったら1ガロンを使用代替わりに渡しているそうです。

マスハの搾油所、持ち込まれたオリーブの詰まった袋、搾油中の農家さん

マスハの搾油所

持ち込まれたオリーブの詰まった袋

持ち込まれたオリーブの詰まった袋

 
搾油中の農家さん

搾油中の農家さん

搾油所の裏手に回るとオリーブの搾りかすが大きな山となっていました。ちょうど1台のトラックがのりつけていて、数人の青年が搾りかすの積み込み作業中。ジャマイン町でコンポスト作りの材料にも使用しているこの搾りかすですが、一部は家畜の飼料や冬季の暖房燃料に使われます。大量に出るため、持ち帰りたい人は無料で好きなだけ持って帰ってよい仕組み(それでも余る)。私たちも後でもらいに来なくては!

山積みにされたオリーブの搾りかす

山積みにされたオリーブの搾りかす

裏手から戻ってくるとサーデクが何やら搾油中の農家さんと交渉中でした。なんだろう、としばらく待っていると、搾りたてのオリーブオイルの入ったペットボトルを2本持って戻ってきて「自分の家のオリーブを搾油したら、彼に2本返す約束をしたから持って行ってくれ」と、なんと今日のお土産に持たせてくれました。搾りたてのオリーブオイルに思わずにやけてしまいました。

オリーブ収穫の時期に入り、最近ではイスラエルの違法入植者たちによる農家さんへの嫌がらせのニュースが相次いでいます。ナブルス県南部では収穫を待つばかりのオリーブ畑が放火[1]され、ラマッラーやナブルスではパレスチナの農家さんのオリーブ畑から勝手にオリーブを収穫していく入植者が目撃[2]されています。昨年、東エルサレムのオリーブ農家さんの畑に収穫のお手伝いに伺った時には、何気なく拾いあげたオリーブの実の隣に銃の薬きょうが落ちていて衝撃を受けました。

[1] Israeli settlers torch olive trees after illegal outpost evacuated south of Nablus (MA’AN NEWS AGENCY )

[2] Israeli settlers steal olive harvest, attack Palestinian farmers in West Bank (MA’AN NEWS AGENCY )

オリーブの入ったバケツのわきに薬莢がある。オリーブ畑にイスラエル兵が入ってくることもあるという

オリーブの入ったバケツのわきに薬莢がある。オリーブ畑にイスラエル兵が入ってくることもあるという

サーデクの畑から5分も車で走れば、オリーブの畑を見下ろすかのように丘の上で拡大を続ける違法入植地の威容が現れます。オリーブはパレスチナの主要産業であり、人びとの豊かな生活の営みの一端。農家さんたちが無事に収穫を終え、この豊かな実りを祝えるよう願わずにいられません。

ラマッラーへ帰る道すがら、普段は閑散としている道路のわきに点々とたくさんの車が止めてありました。これはいわば、パレスチナの「秋の風物詩」。そのすぐそばには、広いオリーブ畑の中、家族でいまだ収穫作業にいそしむ人びとが見えました。

普段は閑散としている道路わきに点々と車が止まる

普段は閑散としている道路わきに点々と車が止まる

(パレスチナ事務所 盛田)

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パレスチナ:オリーブの季節がやってきた![1] https://www.parcic.org/report/palestine/palestine_eat/12465/ Mon, 06 Nov 2017 09:43:57 +0000 https://www.parcic.org/?p=12465 マルハバ(こんにちは)!

今年もパレスチナにオリーブ収穫の季節がやってきました。

色づいたオリーブの実

色づいたオリーブの実

地中海性気候と砂漠性気候の中間のような地域にあるパレスチナでは、5~9月までが乾季、10~4月までが雨季となっています。乾季の間は雲一つない晴れが連日続き、強い日差しにぐったりしてしまうほどですが、一度雨が降り雨季に入ると、あっという間に気温が下がり、冷たい風が吹き始めます。

昨年は気候変動の影響で雨季がずれ込み、11月まで雨が全く降らないという異常事態になっていましたが、今年は10月初めより、もくもくとした黒い雲が空に出現し始め、スコールのような雨がさっと降りました。

この雨を待ち望んでいたのがパレスチナの農家さんたち。空気が常日頃乾燥し、砂埃が舞うため、オリーブ農家さんたちは初雨で砂埃が洗い流され、実がきれいになるのを待ってオリーブを収穫するのです。

10月7日、パレスチナ政府がオリーブ収穫期の開始を公式に宣言。その前後からヨルダン川西岸、特に北部地域からオリーブの収穫が一斉に始まりました。

この日、ナブルス県で行う循環型社会づくり事業で共に働く農業専門家のサーデク(Sadeq、誠実な人の意)から誘われ、彼の一家が総出で行うオリーブ収穫に参加させてもらいました。

サーデクは、ラマラより少し北のセルフィート県マスハ村に先祖代々受け継いできているオリーブ畑を持っていて、オリーブの木が85本もあるといいます(ただし、85本はオリーブ農家としては少なめで、サーデクも収穫したオリーブは商業用というより家庭消費用とのこと)。

オリーブ畑に到着するとサーデクの娘さんや息子さん、親戚の皆さんがすでに働き始めていました。早速収穫に混ぜてもらいます。まず取り掛かったのは樹齢が何百年もあるオリーブの老木、“ルマーナ(=Romana)”。その名の通り「ローマ時代」からこの土地に根付いているオリーブで、サーデクの畑には2本あるといいます。年齢を感じさせず(?)、丸々とした実をたくさんぶら下げていました。

丁寧にオリーブを収穫していくサーデク

丁寧にオリーブを収穫していくサーデク

パレスチナのオリーブ収穫は手摘みが基本。ビニールシートを木の下に敷き、まだ色が変わる前の青々とした実、すでに色が変わってきれいな紫色になっている実、すべてまとめて摘んでは落としていきます。この日は併せて剪定も行っていました。じつをいうと、剪定は本来3月、雨季の終盤に行うべきなのですが、土地へのアクセスが極めて限られているパレスチナでは、作業を効率化するために往々にして収穫の際に一緒に剪定を済ませてしまうのが慣習化しています。果樹・有機栽培を専門とするサーデクも「本当は正しくないんだけど」とぼやいていました。

ほとんどが緑色の青い実ばかりの木も。戸惑っているとすべて摘んでしまってよいとのこと。早摘みの実からはやや青臭くスパイシーなオイルが、黒くまるまるして油をため込んだものはまろやかなオイルが取れると言います。しかしながら、パレスチナの人びとが収穫を急ぐ理由は他にもあるようです。「いつまでも収穫しないで残しておくと、近隣の困った若者たちが、たばこを買う小銭欲しさに勝手にオリーブの実を摘んでいってしまう」と苦笑いのサーデク。

昼を過ぎたころから日差しが強くなり、汗だくになりながらの作業。途中、木陰でコーヒーやクッキー、畑に植わったザボン[1]を食べる小休止を取りながら、何とか3本の木の収穫を終えました。

木陰の休憩用お茶セット

木陰の休憩用お茶セット

そうこうしている間に、オリーブ畑にはサーデクの家族や親せきがどんどん集まってきます。作業の合間に横目で見ていると、いそいそと女性たちによる青空クッキングが始まりました。メニューは、わざわざ車で運んできた簡易な窯で焼く出来立てホカホカ、座布団のような大きさのパン「タブーン」と、パレスチナの伝統料理「シャクシューカ」(レシピはこちら)。唐辛子と一緒に煮込んだトマトに卵を落としたシンプルながらおいしい家庭料理です。トマトの上にポンと割られた卵は、日本語と同じく「目玉(Ain al Ayun)」と呼ばれているそうです[2]。みんなでオリーブの木陰に座り、シャクシューカをタブーンにつけていただきました。仕事終わりにみんなで囲む少し遅めの昼食はとっても美味! デザートに再びザボンまで食べ、おなか一杯になりました。

焼きたてのタブーン

焼きたてのタブーン

シャクシューカ

シャクシューカ

オリーブの季節がやってきた![2]へ続く

[1]皮が厚いので長期輸送も腐らずに持つことからイギリス統治時代に持ち込まれたものだとか。アラビア語で「ポーメリー」と言います。
[2]正しく訳すと「片目(Eye of Two Eyes)」となります。

(パレスチナ事務所 盛田)

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